地味過ぎたGT710、実は名機説

2021/12/13 ・ PC ・ By 秋山俊

NvidiaのGT 710という時代の徒花みたいなローエンド・ビデオカードがあるが、実はこのカード、競合カードとの位置関係や時代の流れによって、「隠れた名機」になったと感じる。

GT 710の強み

GT7xx台のカードにも関わらず発売は遅めで、日本だと2016年正月あたり。価格は今も昔も3,000円ちょいくらいで、今や性能は内蔵GPU未満であり、2010年以降の3Dゲームは遊べたものではない。だが、GT 710の真価はそんなところにあるのではない。このカードの強みは以下にある。

  • 実売3,000円強で、古いマザーボードにもHDMIと4K出力を追加できる
  • TDP 19Wと非常に低くファンレスモデルもある
  • Windows 11にも対応
  • 現在(2021年12月)に至るまで、完全に置き換えるようなカードが存在しない

「3,000円のカードをサクッと刺して、化石PCをただちに4Kパソコン化」――それがこのカードの最大の魅力である。

時しも2017年夏、私はAthlon 64 X2 5600+とPhenom II X4 965を搭載したPCを4Kモニタに接続するために、GT710を2枚買った。実は古いGTX 460などが余っていたのだが、カードが古すぎてDVI端子しかなく、4K出力ができなかったのである。性能自体はGTX 460の方が上なのだが、別にゲームを動かすようなPCではなく、それより普段使いのための4K解像度の方が重要だった。以来、GT710は私の古いPCを何度もモダンに蘇らせてきたのである。

時流で生き残ったカード、GT 710

そのままなら数年でGT 710のポジションは他のカードによって置換され、既に役目を終えていたかもしれない。しかしその後、Nvidiaは今に至るまで「真のローエンド」と呼ぶにふさわしい、中古ゲームソフト並の価格で買えるカードを出していない。新品で買える、最も安いNvidiaのGPUは未だにGT 710である。

さらに数年にわたる世界的な半導体不足やマイニング需要で、ビデオカード価格は異常なほど高騰し、5年前のPascal世代の鉄板カード、GTX 1050Tiが今でも15,000円くらいで売られている。1050Tiは私も持っているが、当時買ったときも同じくらいの値段で、2世代前にも関わらず価格が変わってない。つまり本来であれば、世代交代による低廉化で、GT 710の椅子は他のカードに取って代わられるはずだったのだが、イレギュラーな事態によってローエンドの穴を埋め続けているのだ。

PCパーツの「名機」とはなんだろうか。私の基準ではそれは、こなれた価格でユーザーの期待に応え、しかも長く使えるものである。GT 710は、一部のPCユーザーのニーズにピンポイントで応える優れたカードだ。TDP 19Wで低発熱・低消費電力なのも嬉しい。Amazonのレビューを見れば、「ウチのCore 2 Duoが蘇りました!」といった、アイボが修理されて歓喜するお婆ちゃんのような喜びの声がたくさん寄せられているのがわかるだろう。

同じく低価格帯のカードとしては、GT 730とGT 1030も存在する。性能面ではこれらのカードの方が倍以上あるが、そもそもこの辺りのカードはPCゲームやディープ・ラーニングには根本的に力不足なので、中途半端な感が否めない。その点、GT 710は普段使いの必要性能に特化しており無駄がない。ASUSから出たモデルはこの点を理解しており、ファンレスでHDMIポートが4つという特化型のカードになっている。

私の失敗としては、当時、あまり深く考えずに玄人志向のファン付きタイプを買ってしまったことだ。しかしこのカードでは3Dゲームをしないので、ハッキリ言ってファンは不要だし、下手に回すと小径なのでうるさい。現在は冬ということもあり、ケーブルを抜いてファンレス駆動させているが、それならば最初からファンレスモデルで大きなヒートシンクのものにすればよかったと思う。おそらくシステムファンの風が当たっていれば十分な運用ができるだろう。

ちなみに出力は4Kになるが、4K動画の再生は荷が勝ちすぎるので注意。

ファンレスでも安定して動くGT 710

うらぶれた15年前のシステムが、GT 710によって今、4Kモニターを光らせる

初版:2021/12/13 ―― 改訂: 2021/12/14

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