『懶惰の歌留多』のような一見、稿料泥棒スレスレの「惰文」で脱稿してしまうことこそ、太宰の真骨頂である。彼一流のエスプリとミスティフィカシオンが存分に発揮された怪作。 そもそもこの文章、出始めから「自分は怠惰である」「書け […]
芥川らしい簡潔で力強い筆致、リズムのある文体、味わい深い情景描写で時間経過も並行して表現する無駄のなさなど、文筆そのものの巧みさもさることながら、人間心理に潜む無意識的エゴイズムもまざまざと描いてみせた、言わずと知れた代 […]
ある日の午後のことである。私は大学で友人の谷崎と共にアールグレイティーを飲みながら、円形テーブルを間に挟み、向かい合って性についての議論を交わしていた。体位について話題が及んだとき、彼はまるで自分こそがその領域の大家であ […]
『ソウ』の全体的な感想としては、疑似餌をばら撒いて観客を騙すのが非常に上手い映画だということである。釣り名人の映画と表現してもいい。もちろん褒めている。 ドラマツルギー的に話すと、この映画は起承転結の流れを巧みに偽装して […]
タイトルと表紙で騙された。 「少年ジャンプ黄金期の舞台裏」という副題からオムニバス的な打ち切りエピソードを期待していたら、巻来功士のジャンプ時代の自伝だった。そしてその内容が、当初見込んでいた内容より遥かに読み応えがあっ […]
『ゼイリブ』は20世紀に訪れた大量消費社会への皮肉を、ジョン・カーペンター得意のB級テイストで彩った作品と理解されている。 映画の冒頭では、繰り返しテレビから「消費社会に同質化・埋没することの陶酔」を謳うメッセージが発せ […]
極めて完成度の高いサスペンス映画である。 映画が始まってわずか10秒、無数の謎が観客に降り注ぐ。ここはどこだ?佇むこの男は誰だ?何故立方体の中にいるんだ?他の部屋はどうなっているんだ?始まりから終わりまで、無駄なシーンな […]
ゴッホ映画の決定版 情熱と、激情と、友愛と、絶望とが大渦のように激しく交わり、命の蝋燭を魂の猛火であっという間に燃やし尽くしてしまった男、フィンセント・ファン・ゴッホ。様々な感情が入り交じるこの複雑な男を、主演のカーク・ […]
伝説の続きを物語る、という曲芸 どのような世界にも、あまりにも完成度が高くて、何か付け加えると蛇足になってしまい、なんびとも手を出し難い伝説的作品が存在する。映画ファンにとってそんな作品の1つがヒッチコックの『サイコ』で […]
画太郎の作品は常に犯罪的であった。彼はあらゆる道徳や倫理を冷笑し、ドラマツルギーを捻じ曲げ、霊長類の把握し得る論理を超えた次元において、マンガを犯罪的芸術へと昇華させてきた。しかしこの『星の王子さま』を以って、画太郎の作 […]