『ランボー』(’82) / 灰色の空と泥だらけのランボー

『ランボー』DVDパッケージ

どのシリーズ作品も大抵そうだが、『ランボー』も最初の作品が圧倒的に良い。しかも続編とはテーマが大きく異なり、70年代のニューシネマ的な破滅の匂いをプンプンさせているので、唯一無二の映画ともなっている。

初代『ランボー』はベトナム帰還兵が戦後に抱えた、PTSDや社会不適応などの困難を描いた「帰還兵もの」というやつで、話の冒頭で街を放浪する彼を保安官が「不審者」として一方的に尋問し、それに咄嗟に手を出してしまったランボーが田舎の警察組織そのものと対決する、というのが大まかな筋となる(図1)。

図1:集団でリンチまがいの横暴を行う警察組織(『ランボー』)

ただ「ストーリー」という呼べるほどのものが存在するかというと、実はあまり大したことなくて、言ってしまえばランボーが逃げて、隠れながらゲリラ戦で警察組織を相手に戦うという、ただそれだけの内容である。

映像そのものがランボー

この映画の何が良いかというと、実は雰囲気が良い。……と書くといかにも薄っぺらいが、映画全体を包む灰色の空気、哀愁漂うメロディ、田舎の泥まみれの山道、そして破滅へ向かって突き進む展開、といった、言語による説明ではない「映像そのものによる語り」が抜群に優れている。そういう意味で、この映画は極めて「映画的な映画」と言える。

図2:『ランボー』

特に田舎道をランボーがバイクで駆けるシーンや(図2)、山を登っていくシーンは最高に良い。雄大な自然をそのまま使ってダイナミックに仕上げられたロケ中心の映像は、ヌーヴェル・ヴァーグやニューシネマの影響を感じさせる。洞窟を松明片手に進む場面など、アドベンチャー作品としての味わいもある。

それと友人に会えること期待して歩いていた冒頭以外、空がいつも曇っているか、あるいは画面全体が暗い。これが良い。ランボーの精神状態そのものを反映している。これも当然、意図した演出であろう。

続編にこういった趣はない。80年代の続編2作は「アクションと爆発」という、極めて分かりやすい視覚効果に頼ったトリガーハッピーな作品なので、全くの別物である。

初代『ランボー』の特徴として「街と山中を往復する」という構造がある(これも続編にはない)。街中というのは人工物に覆われた人間社会の縮図で、ランボーはそこを支配している保安官という名のボス猿から横暴を受ける。だから山中という自らのテリトリーで、集団で捜索しにきた警察組織を返り討ちにしてしまう。そして彼は反撃に出る。夜中に自ら街へと赴き、周辺の電気供給を経って暗闇を作り出すことで、街を一時的に密林と化してしまうのだ。つまり権力 vs. 反抗者の対立構造の象徴として、街と山(森)というフィールドが存在する。

戦争の亡霊と化したランボー

そうして最後の「何も終わっちゃいないさ!何も!」である(図3)。

図3:『ランボー』

「何も終わっちゃいないさ!何も!勝手に終わらせないでくれ。あれは俺の戦争じゃなかった。あんたが頼んだんだ、俺じゃない。勝つためのことをやったのに、誰かが俺たちに勝たせなかった。そして元の世界に帰ってきたら、空港で俺にツバを吐きかけながら抗議してくる奴らに出会ったんだ」

“Nothing is over! Nothing! You just don’t turn it off. It wasn’t my war. You asked me, I didn’t ask you. And I did what I had to do to win, but someone wouldn’t let us win. Then I come back to the world and I see all those maggots at the airport protesting me, spitting. “

『ランボー』

この場面で、それまで寡黙だったランボーが、まるでダムでも決壊したかのように突然絶叫し出すのが本当に印象的で、『ロッキー』(’76)ラストの「エイドリアン、アイ・ラヴ・ユー!」の叫びに匹敵する名シーンだと思う。

「俺にとっちゃ……平和な暮らしなんか空っぽさ。戦場には仁義ってもんがあった。誰かが俺の背を守り、俺がそいつの背を守る。でもここには……何もないんだ」

“For me, civilian life is nothing. In the field, we had a code of honor. You watch my back, I watch yours. Back here, there’s nothing.”

ここの独白で、ランボーの戦争が2つの意味で終わっていないことが明らかにされる。1つはPTSDに苦しむ彼が、今でも友人が殺される悪夢を見てしまうために終わっていない。いま1つには、そんな地獄を経験してもなお、それでも彼には結局戦場以外に居場所がない、という点で終わっていない。

「あの場所なら、俺はガンシップを飛ばすことができたし、戦車を操縦することもできて、100万ドルの装備を任せてもらえた。でもここでは、車の駐車さえ任せてもらえないんだ」

“Back there I could fly a gun ship, I could drive a tank, I was in charge of a million dollar equipment. Back here, I can’t even hold a job parking cars.”

こういう描写を観ると「やはり初代以外はランボーではないな」っと思ってしまう。満足度:9/10

見所

  • ランボーがバイクで疾走する全てのシーン
  • 断崖絶壁を移動するランボー
  • “Nothing is over! Nothing!”

関連作品

『ランボー』シリーズでは、スタローン自身が監督した4作目の『最後の戦場』(’08)がオススメ。題材はミャンマー内戦になっているものの、同じく社会派的な要素があり、映像的にも恐ろしく迫力がある。

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投稿日時: 2020/06/22 ― 最終更新: 2020/06/23
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