1980年公開のベトナム帰還兵モノであり、アメリカン・ニュー・シネマの後続かと思いきや、何のことはない、社会派の皮をかぶったB級娯楽アクションである。

ベトナム戦争帰りの主人公が、チンピラによって全身不随にされた戦友のかたきを討つという内容なのだが(図1)、この作品には主人公がベトナム帰還兵である必然性がほとんどないのだ。

図1:『エクスタミネーター』1980年

例えば『ランボー』(’82)や『タクシードライバー』(’76)の主人公がなぜベトナム帰還兵かと言えば、それは戦場という異常環境から日常に帰還した彼らが社会に適合できず、軋轢や衝突を生んでしまうという「歪み」を描くためである。

『エクスタミネーター』の主人公も「暗い戦闘マニア」という感じなので雰囲気が似ているのだが、本作では主人公側が「悪」と断罪した人間を一方的に私刑で裁き殺すばかりであり「戦争で狂った精神」というよりは単に「私的な正義感の暴走」という印象が強い。親友が重症を負ったことも戦争となんら関わりない。

ベトナム帰還兵という設定は、せいぜい主人公が高い戦闘力を持っていることの裏付けくらいにしか活きない(図2)。ハッキリ言って、冒頭のベトナムのシーンをすっ飛ばしてもこの映画は十分に成り立つだろう。

図2:『エクスタミネーター』1980年

つまり本作は「ベトナム帰還兵が独自の価値観で人を殺す」という構図を上辺だけ模倣した、ただのバイオレンス映画なのだ。

ツッコミのサンドバッグ

本作の魅力はもっぱら、その行き過ぎた暴力表現と「ツッコミ待ち」としか思えない主人公の奇行にある。

トイレのゴミ箱に隠れた彼が、どっかの金持ちをソリッド・スネークのように気絶させて誘拐するあたりは、監督渾身のギャグだろう。他にも、大して罪もない人間が生きたままミンチにされたり、素っ裸の男が丸焼きにされたりするのだが、ロバート・ギンティがこれら残虐行為を妙に淡々とこなす様子がツボである(図3)。

図3:『エクスタミネーター』1980年

ストーリー設定のおかしさも、本作の「ツッコミどころ」の1つに過ぎない。

親友の仇であるチンピラは序盤で処刑完了しており、その後主人公が富豪やら強盗やらを積極的に殺しに行く暴走自警団と化した理由は、今ひとつ分からない。富豪が殺されるほどの理由は特に見当たらず、というか理由は単に親友のために金が必要だったからである。社会正義はどこへ行った?

ここで「ストーリーがおかしい!」と真面目に批判してしまうと負けで、おかしいのではなく可笑しいのである。その過剰なまでの残虐表現と合わせて「派手・下品・チープ」なB級テイストを堪能すべき作品であり、洋画劇場やニコニコ動画で盛り上がるタイプの作品である。

『エクスタミネーター』の面白さは『北斗の拳』によく似ていると思う。あの作品も、主人公ケンシロウが適当な理由で黙々と悪人を惨殺処刑していく、ツッコミどころ満載の真面目顔した笑いが特徴的だった。『エクスタミネーター』の主人公はハッキリ言ってただの過激なサイコ野郎であり、そんな彼が社会正義という妄執に取り憑かれてジャスティスを実行していく様を、ポップコーンを食べながら笑って見守る作品なのだ。

ブルーレイ UK盤(Arrow Video製) レビュー

映像:AVC / 35mm撮影 / 1.85:1
音声:DTS 2.0ch – 24bit
言語:英語字幕のみ / 英語の難度・量は低
備考:1層 25GB / リージョンフリー

Amazon.co.ukから送料込みで2,000円弱で購入。なお日本語のHDリマスター盤も存在するが、そちらは未見。ここではUK盤について評価する。

映像も音響もブルーレイとしてはかなり低品質なもので、ほとんどDVDレベルである。ロッシーサウンドの一点収録というあたりが、まさにDVDクオリティ!実際、サウンドは全体的にショボい。冒頭の大爆発からして音の厚みが足りないし、全体的に音量が低めである。

映像もボケた感じでフィルムの粗が目立つ。AVCなのだがMPEG-2並の低画質で、ビットレートもせいぜい20Mbps止まり。せめて2層ディスクにして欲しい。ただ問題はビットレートの低さにあるのではなく、根本的に映像が低品質という印象を受ける。

カルトムービーを意欲的にソフト化しているArrow Videoだが、これはガッカリな出来である。USのShout! Factory盤はロスレス音声などを収録しておりビットレートも高いようなので、そのうち購入して比較したい。

恒例のリバーシブルカバーと、リージョンフリーな点と、特典の多さは良い。今回褒められるのはそれくらいだ。

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投稿日時: 2019/10/06
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