『ターミネーター 2』劇場版ポスター

この作品に対して「傑作だ」と評しても、ほとんど何も言ってないようなものなので、別の言葉を探す。

主要人物らが誰しも主役級と呼べるほどキャラが立っており、その行動や台詞に全くなおざりなところがない。未来からやってきた殺人機械から、ひたすら逃げ回る3人。ジョンの勇気、サラの信念、そしてターミネーターの力強さに、何度観ても心が揺さぶられる。全身火薬庫と化したシュワルツェネッガーが繰り広げるアクションの豪快さ。あらゆる人間そっくりに擬態し、どんな傷でも瞬時に修復してしまう液体金属に追跡される恐怖(図1)。アクションとスリラーの完璧な融合。

図1:主人公の養母に擬態するT-1000(『ターミネーター 2』1991年)

しかしそれでも、やはりまだ何も述べていないような気がするので、もう少し焦点を絞る。

この映画の支配者は紛れもなく、敵として襲ってくるT-1000である(図2)。ストーリーをあらためて概観してみても、最後の瞬間まで、主人公たちはただひたすら逃げ続けることしかできていないことが分かる。最終的な反撃は、あくまで逃げ続けた結果の偶発的な産物であって、T-1000はほとんど「打倒不可能な敵」として立ちはだかる。前作で無敵を誇ったT-800型のターミネーターが味方についていてさえ、である。私は子供時代に『ターミネーター 2』を観た際、ひたすらT-1000が恐ろしかった。

図2:警官の姿をベースに追跡してくるT-1000 (『ターミネーター 2』1991年)

この物語のアーキタイプ(原型)は「悪夢」だと言える。悪夢の悪夢たる所以は、常に追いつかれてしまうことである。いくら逃げても逃げ切れず、自分の味方であるはずの存在が、どういうわけか、行く先々で自分を責め立てる悪夢。

例えば主人公らがバイクに乗って、かろうじて追撃から逃げ延びる。しかし家に帰ろうとすると、あの液体金属の悪魔は、自分の育ての親の顔を盗んで、我が家で待ち構えているのだ。たまらず引き返して、今度は実の母親を助けにいく。するとそこにもやっぱりヤツが待ち構えていて、しかも警官の格好をしているから、ヤツが悪魔であることに誰も気が付かない。絶叫して逃げながら、銃をいくら撃っても死なず、走って追いかけてくる。主人公はアクセルを踏んで逃げ続ける。

絶望的な逃走劇の中で、シュワルツェネッガー演じるターミネーター(T-800)が仁王立ちし続ける。その背中の大きかったこと。T-1000の圧倒的な恐怖感と、T-800がいることの心強さが、強烈なコントラストを描いている。ここで劇中のサラの台詞を思い出したい。

ターミネーターは止まらないわ。決してジョンの下を去らず、彼を傷つけることもないでしょうね。(中略)いつもそこにいて、彼を守るべく死ぬはずよ。ジョンの父親になったかもしれない数々の男たちの中で、彼が……このマシーンだけが、唯一父親に相応しかったんだわ。

『ターミネーター 2』1991年より(訳は筆者による)
図3:機械であるT-800こそが理想の父親像(『ターミネーター 2』1991年)

圧倒的な頑強さを持ち、どこまでもジョンを守り続けるT-800は「究極の父性」を体現する存在である(図3)。絶望の悪夢の中で、これほどの父性に抱きしめられたら、どんなに心強いだろう。『ターミネーター 2』は、悪夢から逃げ続ける少年が、自分の父親を見つける物語なのだ。

UHD BD 北米盤 レビュー

UHD BD版のパッケージ

映像:HEVC / 35mm撮影 (ネイティブ 4K) / 2.40:1
音声:DTS-HD Master Audio 5.1ch – 24bit
言語:日本語なし / 英語難度は低
備考:2層 66GB / 137分

わずかな瑕疵すら残さない完璧な仕上がり。映像は澄んだ湖水のような純度を終始一貫して保ち、全くブレがない。観ていてため息が出るほどの美しさで、これこそが『ターミネーター 2』本来の映像美なのだと確信できる。1991年の作品が、ここまで完璧にソフト化可能だったのか。それが正直な感想である。冒頭の未来社会からいきなり驚愕、そしてT-800が服を強奪し、バイクで走り去る頃には、過去のあらゆるソフトが完全に置き去りにされている。

ノイズレスな画面は、4Kと2K(通常版BD)の解像感の違いも浮かび上がらせる。両者の差が特に顕著なのが、暗闇の中、倉庫でサラの治療をターミネーターが行うシーンである。明と暗のコントラストがUHD BD版では実にくっきりと浮かび上がり、全体の画の細かさでも4Kの解像度が活きている。

ディスク表面の印刷。なお日本語版はサングラスをかけたT-800とT-1000がプリントされている

UHDには一歩劣るが、新たに4KスキャンされたBD版の方も、相当に素晴らしい出来だ。ハッキリ言ってその辺の下手なUHD BDより、この通常BDの方がよほど美しい。幸福。これほどの傑作を、これほどのクオリティで家庭で堪能できることは、圧倒的な幸福だとしか言いようがない。なお特別篇の映像に関しては4K化されておらず、通常BD内のみの収録となる。またこの新たに作られたBD版も、新パッケージとして日本でも個別に販売されている。

トップメニューでも凝った映像の作りで手抜きなし。メニューの作りは新BDも同じ

唯一「現時点で最高レベル」とは言えないかもしれないのがサウンド。DTS:Xではなく、DTS-HD Master Audio 5.1ch仕様である(なおドイツ語版のみ7.1ch)。とは言え、これも十分過ぎるほどのレベルで作り込まれており、特にサイバーダイン社での窓からのミニガン掃射 -> 爆発のシーンでのサラウンドは凄まじく、満足の行く仕上がり。

全体として、既に過去のBDを持っている人にも、全力で買い替えを薦めたくなる出来栄えである。これは買わないと損。

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投稿日時: 2019/07/15 ― 最終更新: 2019/10/10
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