図1:偶然テレビに映るフォレスト(『フォレスト・ガンプ』)

(この記事はネタバレを含みます)

『フォレスト・ガンプ/一期一会』の面白さの1つは「60年代から80年代までのアメリカ史」という巨大なスコープと「フォレスト・ガンプ個人史」という最小の歴史視点との呼応である。フォレストは、彼という「不動」の信念を持った存在として「激動」のアメリカ史を固定的な視座から見つめ続け、何食わぬ顔で歴史の節目にひょいひょいと姿を見せていく(図1)。

映画の始まりと終わりに、小さな羽が宙を舞っていく。フォレストは、神が現世に遣わせた天使のような存在であり、一種の「神の視点」から変わりゆく物事を見つめ続ける(本作には全体に、キリスト教をモチーフにした寓意的な場面が散見される)。そして不変な存在であるフォレストが他者を観察し、両者を照応させることで、人々がどのように変化していったかが克明に描かれる。

図2:会うたびに境遇が変わっているジェニー(『フォレスト・ガンプ』)

ジェニーは時代のムーブメントに敏感な若者として、その時代時代の在り方に染まりながらフォレストに接していく。ある時は奔放な学生として、またある時はヒッピーの若者として、あるいは政治運動に参加する者として(図2)。フォレストはどんな時でも彼女を受け入れ続ける。再会するたびにフォレストと人生を共にすることはできないと思い、別れを繰り返すジェニーだが、最後は逆に彼女の方から結婚を申し込む。

死に損なった状態から生きる意味を見出したダン中尉もそうなのだが、変わったのはいつでも相手の方である(図3)。フォレストはずっと変わらない。いつも笑顔で相手に愛を与えているだけである。

図3:ここは日本語字幕だと意図が伝わりにくい場面。英語だと「I never thanked you for saving my life(おまえには命を救われた礼を言ってなかったな)」という、小隊長らしい婉曲な言い回しにとどまり、そのまま照れて海に飛び込む描写の意図がハッキリしている。(『フォレスト・ガンプ』)

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投稿日時: 2019/05/01 ― 最終更新: 2019/06/23
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