投稿日時:2019/03/30 ― 最終更新:2019/04/09

もう映画全編が美術。冒頭から終盤まで音楽がほぼ途切れなく続き、台詞も全て歌として発声されるのでミュージカルというよりはオペラみたいな構成。特に色彩感覚が抜群で、モノカラーを基調として主張の強いピンク、ブルー、グリーンなどが建物や部屋一面を覆っており、色により場面場面の雰囲気が演出されている点は後の『ロバと王女』にも似ている(図)。オープニングも俯瞰視点から通り過ぎる人々の傘が画面を横切るというアーティスティックな演出で、なおざりな部分がなく、全編にわたり意匠を凝らしている。

図:『シェルブールの雨傘』 ハピネット

話の筋書きそのものは、徴兵によって引き裂かれる男女、その恋の空白期間を埋めるように現れる心優しい資産家、そして恋人帰還後の憂愁という、決して奇抜さや意外性では勝負しない王道をゆくもの。これを平凡な演出によって描けばただの凡作に終わるに違いないが、映像の芸術性により、他の追随を許さないロマンスに仕上がっている。むしろカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・ドゥミという最高の組み合わせが、奇を衒わず王道を演出しきったことで、ちょっとヒネって意外性や複雑性で勝負しようとする安易な作品は近寄れないくらいの輝きを発している。

そして何より、全編で通奏されるメインテーマ。これが非常に美しい旋律で、繰り返し流れているのに全く飽きない。映画の内容に完璧にマッチしている。あまりにも素晴らしすぎる傑作。本作を初めて鑑賞した時、良かった、この作品を未鑑賞のうちに死んでしまわなくて本当に良かったと思った。ジャック・ドゥミの代表作。

作品の解釈はラストシーンが深く絡むので別ページで。

通説では「男は過去の女たちを個別に愛しているが、女は一番新しい男だけを愛している」という(このセオリーには色々な表現方法がある)。しかし『シェルブールの雨傘』の結末は、む
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