ショーン・コネリーの007 全作品解説とオススメ4選

2020/11/10 ・ 映画 ・ By 秋山俊
ショーン・コネリー(1930-2020)

ショーン・コネリー特集第二弾。「ショーン・コネリー主演の007全作品解説」。今回の動画では、彼の演じた007全7作の概要や見どころを紹介しつつ、その中からさらに4作品を、「当チャンネルのオススメ作品」として推薦し、最後に全作品ランキングを発表していく。

それではまずは第一作目『ドクター・ノオ』から順番に紹介しよう。

第一作目『ドクター・ノオ』

1962年に公開された第一作目では、消息を経った諜報員を調査すべくジャマイカに出向いた007が、彼の残した痕跡を追跡する調査の中で、ドクター・ノオの陰謀を暴いていき、彼の秘密基地へと入り込むことになる。

本作は007シリーズでも最も少ない予算となる、およそ100万ドルほどで製作されたが、制作費を遥かに上回る配給収入を得て、以降映画版もシリーズ化されることとなる。映画版ジェームズ・ボンドの初登場シーンではカジノでカードゲームをしており、この時バカツキで相手の女性を圧倒する謎の紳士が女性に名前を聞かれ、定番のセリフである「ボンド。ジェームズ・ボンド」と名乗ってスクリーンに姿を現す。

『ドクター・ノオ』1962年

本作において、既に007シリーズの定番や物語の型はある程度出来上がっており、冒頭で印象的なアクションシーンがアバンのように挿入され、事件を受けて呼び出された007が帽子を投げて帽子掛けに引っ掛け、それからMから指令を言い渡された後に、マネーペニーに言い寄られたボンドがそれを華麗にかわしながら任務に出かけていく、という一連の流れはシリーズで繰り返される。

さらに「ボンドガール」と呼ばれる、007と恋に落ちる美女や、敵側の美女とセックスだけして華麗に逃げるプレイボーイぶりなど、様式美とも言える展開は『ドクター・ノオ』に詰まっている。

ただし予算の関係もあり、秘密機能満載のボンドカーや特殊道具といった装備類は出現せず、以降の作品に比べると全体的に地味であるが、作品の黒幕であるドクター・ノオの出現以後はSFっぽい展開にもなる。なお本作の初公開時の邦題は『007は殺しの番号』であった。

第二作目『ロシアより愛を込めて』

『ドクター・ノオ』のヒットを受けて撮影された作品であり、本作の成功により007シリーズの人気はさらに高まった。またこの2作目は当時ヒットしただけでなく、シリーズ全体の中でも特に人気が高く、ファン投票では毎回上位に食い込む作品でもある。

ストーリーでは、前作の事件の背後にいた犯罪組織スペクターが冒頭から登場し、007への復讐として彼を罠にかけることを計画。亡命させたソ連の美人諜報部員と暗号解読機の情報を餌に彼をおびき寄せて、暗号解読機を盗ませた上で007たちを殺し、イギリスとソ連の関係を悪化させつつ暗号解読機もいただくという作戦を立案。毎度異常に回りくどい悪事を立案して脚本を複雑化させ、観客に頭の体操を促すというスペクターの悪癖は、この頃から存分に発揮されている。

『ロシアより愛をこめて』1963年

今作では、MI6の装備主任である、通称Qから007に渡される「秘密兵器」が初登場。普通に開けるとガスが噴出してしまうが、特殊な手順を踏むと普通に開けられるというトラップ型アタッシュケースが登場し、以降任務開始時に007がQから秘密兵器の説明を聞かされて、それがピンチになると役に立つという定番が確立された。

そしてこの作品は「オススメ」である。

オススメの理由

『ロシアより愛を込めて』がシリーズ中でも特に優れている理由、それは全体のバランス感覚にある。スパイ・アクションや秘密兵器といった、007特有の面白さがしっかり盛り込まれていることはもちろん、派手なアクションやガジェットを駆使することで、いきおい荒唐無稽になりがちな007作品にも関わらず、全体を破綻なく洗練された雰囲気で、かつ洒落た感じにまとめあげている。

特にイスタンブールに出向いた後の、彼の地で様々な国の諜報部員が相互に監視し探り合っている様子などを、ウィットに富んだ会話と共に描写する様子は面白い。秘密兵器も極めて効果的に演出されており、宿敵との対決で切り札を発動すべく、会話術を巧みに使ってトラップに誘導するのは、屈指の名対決場面と言えるだろう。

またラストシーンにおける「私達はカメラで撮られている」という、メタフィクション的とも言える会話や、007が腕を伸ばしてフィルムを川に捨てて幕切れする様子など、大衆娯楽映画でありながら、当時のヌーヴェル・ヴァーグを意識したかのような芸術性を感じさせる箇所もあり、洗練された作風であると言える。

第三作目『ゴールドフィンガー』

シリーズの人気を不動のものにした成功作。本作では犯罪組織スペクターが登場しないが、代わりに印象的な悪役としてゴールドフィンガーと、用心棒のオッドジョブが出現。

富の中でも金に異常に執着し、世界中の金をかき集める強欲の大富豪、ゴールドフィンガーの金密輸の調査を開始した007は、そこで彼の壮大な犯罪プラン「グランド・スラム計画」の存在を知り、それを阻止すべく奔走していく。

予算が一作目の3倍となったこの三作目では、ついにシリーズの大きな特徴である「ボンドカー」が初登場。助手席を空に吹っ飛ばす機能や放水銃など、どうしてそれを搭載しようと思い立ったのか不思議なほどのニッチ機能を満載した、税金のどん詰まりであるボンドカーの機能が、どういうわけか直後の任務でことごとく役に立ち、「絶対に壊すなよ」と念を押されたそれを、最後にスクラップにして平然と帰還するという、007の様式美がまたも確立された記念碑的作品である。

そしてこの作品は「オススメ」である。

オススメの理由

『ゴールドフィンガー』は007シリーズの漫画的な面白さ、すなわちネジの外れた悪党たちの、神をも恐れぬ壮大な犯罪計画や、魅力的な秘密兵器、ジェームズボンドの冒険活劇要素を重視したエンタメ重視の作品である。

この作品で特に優れているのが、悪役のキャラクター描写。自分を裏切った美女の全身に金粉を塗りたくって皮膚呼吸を止めて殺したり、大富豪にも関わらず、どんな賭け事でもイカサマを働く、天井知らずの強欲ぶりなど、ゴールドフィンガーという大悪党の異常性や執念深さが巧みに描写されており、印象深い悪役となっている。

『ゴールドフィンガー』1964年

また彼の用心棒として出てくる、嵐を呼ぶ山高帽ことオッドジョブも、劇中常に無言で佇みながらも、肉体的な強さで007を上回っており、007の活躍を何度も止める宿敵として描かれる。

一方、作品全体のリアリティは「『ルパン3世』よりはリアル」といった程度であり、すなわち荒唐無稽なコミックである。特に中盤以降は脚本の強引さが加速していき、特に何の意味もなく自分の犯罪計画を大演説した挙句に相手を殺し、しかしその話を007に盗み聴きされてしまうなど、ご都合主義的な展開も目立つ。

007シリーズではこのように、場面場面を切り取ると盛り上がっているように見えるものの、全体の筋から考えると強引・意味不明だったり、あるいは単に矛盾している脚本を作るという悪癖があり、整合性よりも衝撃のための衝撃、アクションのためのアクションを優先するという傾向がある。この点においては好みが分かれるだろう。

第四作目『サンダーボール作戦』

前作まででおよそ完成した、007における定番や様式美を全て取り込んだ作品であり、秘密兵器やボンドガール、スペクターといった要素が全て登場する作品。三作品立て続けの大ヒットに乗った絶頂期に作られたため、インフレ率を補正して計算すると、シリーズで最も大きな利益を生み出した作品であり、1965年の興行収入では『サウンド・オブ・ミュージック』に次ぐ2位を記録。

ストーリーは、核爆弾をNATOから奪ったスペクターが、それを使ってNATOを脅迫、1億ポンド相当のダイヤを要求。イギリスはスペクターの企てをくじくべく、全ての00ナンバーを招集して世界各地に送り込み、核弾頭の捜索にあたらせる、という大規模なものとなっている。

『サンダーボール作戦』の特徴は何か?それはズバリ水中戦である。終盤で両方の勢力が激突する大規模な水中戦闘シーンはもちろん、007がサメに襲われるシーンもたびたび挿入されており、実は密かにサメ映画としての側面も持っている。これだけ水中戦にフォーカスしたアクション映画は、なかなか存在しないのではないだろうか。

第五作目『007は二度死ぬ』

この第五作目ほど、日本でそのタイトル名をよく聞く007作品はないかもしれない。なぜなら本作で舞台となるのは、なんと日本。米ソの宇宙船を密かに破壊することで両国間の緊張を高めるという、これまた遠回しな犯罪で世界に混沌をもたらそうとするスペクターの秘密基地が日本付近にあると睨んだMI6は、007の死亡を偽装した上で、秘密裏に日本へと送り込む。

ケンブリッジ時代に日本語を習ったという007のsayonaraが聞ける本作は、全編日本でロケを行いイギリス本土は全然映らない作品になっており、まだ日本が高度経済成長期だった60年代に、大体的に日本をフィーチャーした珍しい洋画となっている。

さらにそれだけでなく、物語の中で007は東京や神戸を移動し、ホテルニューオータニが何度も大きく映し出され、さらに007がSUMOを観戦したりFUROに入るこの映画は、予想を超えて日本的要素をアグレッシブに取り入れており、後半に入るとNINJA軍団が出現して007も日本人と偽装結婚するなど、英国諜報員の身にいまだかつて無いハチャメチャが押し寄せてくる。

そしてこの作品はイチオシである。

オススメの理由

まずこの5作目は日本が舞台となっているという時点で、日本人にとっては極めて興味深い作品である。60年代の日本を舞台に、1000万ドル近い予算を使ってフルカラーで撮られたアクション映画というだけで貴重で、文化的・歴史的な価値すら持っている映画と言えるが、1つの作品として観た場合でも非常に優れていて、イチオシの007タイトルになっている。

作品の傾向としては『ゴールドフィンガー』に近く、漫画的な荒唐無稽さをウリにした娯楽大作と言えるが、ストーリー的にもスペクターの首領であるブロフェルドが初めて素顔を晒して007と対決するという、ショーン・コネリー時代の007のクライマックスと呼べる内容になっており見どころが多い。

『007は二度死ぬ』1967年

特に終盤の決戦では、「日本の忍者軍団がスペクターの秘密基地になだれ込んで決戦」という激アツ展開が待ち受けており、派手なアクションが好きな人なら盛り上がること間違いない。中盤の展開に若干脚本的な破綻が見られるが、退屈するようなシーンは特になく、場面が次々に展開するので全体のテンポは良好であり、起こる出来事はデタラメながらも、それがマイナスに働くような失敗がない。

第七作目『ダイヤモンドは永遠に』

第六作目『女王陛下の007』への出演を見送ったショーン・コネリーは、その次の作品で再び007を演じるものの、正式シリーズの中では最後の出演となった作品である。

ストーリーは、大量の盗難されたダイヤモンドの行方を追う007が、ダイヤの運び屋として身分を偽り、その背後に隠されたスペクターの巨大な陰謀に気がつくというものである。この作品の特徴は、全体にコメディめいたユーモアが漂っていることで、たとえばメインの敵キャラクターとして出てくる2人組の掛け合いなどは、ほとんどコントである。

スペクターの側も、首領であるブロフェルドの影武者が大量に出てきたり、ボンドが絶体絶命に陥ってから逆転するまでの展開が異常に強引だったりと、脚本の強引さが最も激しい作品となっている。この映画のウリは、ショーン・コネリー演じる007の中では最もコメディ的という点だろう。

番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』

007シリーズを手掛けているイオン・プロダクションズやMGMが関わらず、ワーナーによって配給された、1つの独立した番外編的な作品が『ネバーセイ・ネバーアゲイン』である。この作品が公開された1983年当時、既にショーン・コネリーが007を引退してから12年が経過しており、80年代に撮影された唯一のショーン・コネリー版007となっている。

話の筋は『サンダーボール作戦』に似ているが、これは両者の脚本が製作の都合から、双子の兄弟のように分裂したためであり、核兵器の奪還のためにボンドが行動する、という目標設定以外はほとんど別物と言っていい。

物語は実際のショーン・コネリーの状態を反映してか、やや腹が出てきたボンドがシェイプアップのために施設に入るところから始まるという異色のもので、また権利関係からお馴染みのテーマ曲などが使用されていない。まさに番外編といった趣だが、作品としては手堅く作られており、この作品はオススメとして推薦しておきたい。

オススメの理由

番外編である『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は一般的にそこまで人気が高い作品ではなく、ファン投票では除外されることすらあるタイトルだが、この作品にしかないオンリーワンの魅力を持った、無視しがたいタイトルである。

この作品のユニークな点は、まずショーンコネリーの007としては最も硬派に作られており、漫画っぽさが控えめであり、そういう点で『ゴールドフィンガー』とは対照的である。さらに80年代の、比較的現代的な画作りは、古い映画の質感が苦手という人にも観やすいだろう。またストーリーが、半ば引退状態となっていた007が鍛え直すシーンから始まるという、番外編ならではのユニークな始まり方をする点、ショーン・コネリー出演作品としては唯一バイクアクションが入るなど、魅力的な要素が多い。

逆に言えば007的な荒唐無稽さがないため、007っぽくないと感じる人もいるかもしれないが、映画として十分楽しめる作品である。

総括

さて、ショーン・コネリーの出演した007作品をざっと振り返ってみたが、本チャンネルでの作品ランキングは以下のようになっている。

  1. 007は二度死ぬ
  2. ロシアより愛を込めて
  3. ネバーセイ・ネバーアゲイン
  4. ゴールドフィンガー
  5. サンダーボール作戦
  6. ドクター・ノオ
  7. ダイヤモンドは永遠に

一番オススメしたいのは『007は二度死ぬ』なのだが、この作品は先程も解説したように、スペクターのボスとの初対決が描かれる、1つのクライマックスとなっている点や、全体として色物的な部分も大きいことから、007を観たことがない人の一本目としては、『ロシアより愛を込めて』の方が勧められる。そしてより渋い、真面目よりのスパイ映画を求める人には『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を、漫画的なエンタメに寄った娯楽作を求める人には『ゴールドフィンガー』を勧めておきたい。

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投稿: 2020/11/10 ― 更新: 2020/11/21
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