SFの中に中世を持ち込んだ世界観系映画 / 『マッドマックス 2』(’81)

2020/09/20 ・ 映画 ・ By 秋山俊
『マッドマックス 2』

『マッドマックス』シリーズとは何か?それは「世界観」である。

文明崩壊後の世界で、資源は枯渇し、人々はガソリンや物資を巡って争い、パン1枚を理由に人が死ぬ。車やバイクといった文明の遺物が残っていながら、見渡す限り荒野が広がっている設定は、科学の世紀に「未開拓時代の無法」を持ち込む。

本シリーズは、ポストアポカリプスというSFでありながら、同時に西部劇的であり、また鉄仮面や鎧、磔刑といった中世的なアイコンの数々が文明の遺物とコラボレーションすることで、ユニークかつグロテスクな独自のファッションに昇華されている(図1)。

図1:敵方のリーダー・ヒューマンガス(『マッドマックス 2』)

こうした独自の世界を、元警官で妻子を殺されてしまった主人公・マックスがさすらい(図2)、彼が嫌々ながら助けた人々の間で、その存在が伝説と化す……という、「架空の世界における神話語り」がシリーズのベースにある(だから毎回、他人の視点や伝聞によりマックスの伝説が伝えられるのである)。

図2:『マッドマックス 2』

『マッドマックス 2』という映画は、まさにこの独特の時代設定や習俗で形作られた世界観そのものを愉しむ映画であり、そういう意味では『スター・ウォーズ』や『ブレードランナー』、あるいは『ロード・オブ・ザ・リング』に通じるものがあると言えるだろう。このシリーズは会話シーンがかなり少ないが、それはまさに本作が世界観系映画であり、プロットやダイアローグは従属物に過ぎないからなのである。

バイクに騎乗した蛮族たち

『マッドマックス 2』においては、石油精製工場を守る“文明人”たちと、バイクに乗って集団で暴走し、強奪せんとする“野蛮人”たちの二大勢力が登場し、マックスは様々な偶然から“文明人”の側に肩入れすることとなる。

この文明と野蛮の対立は、文明側のファッションがいかにも騎士的なアイコンで覆われており(図2)、その騎士たちを騎乗した蛮族が襲うという構図から、中世における西洋 vs. モンゴルの構図に極めて似ている。つまりこれはガソリンの世界における農耕民族と騎馬民族の争いであり、このSFと時代劇が重なったバンカラな世界観こそ、『マッドマックス』のサーガそのものである。

図3:『マッドマックス 2』

登場するキャラクターはみなファッショナブルであり、特に敵方には、異様に個性的で忘れがたい豪傑ばかりが登場する。その行動は常に予測不能かつケダモノ的である。たとえば捕虜にした人間を車の前方に磔にして爆走してくる様子や、仲間の指がちょん切れて爆笑している様など、カルト的な異様さがある。

また『北斗の拳』に盛大に模倣されたことで知られるモヒカン族のウェズが、奇声をあげながら犬みたいに繋がれた金髪青年とニケツする様子など、情報量が多すぎて意味不明であり、凡百のキャラクターデザインなど足元にも及ばないインパクトを脳髄に残す(図4)。

図4:『北斗の拳』で強烈に模倣されたモヒカン族ことウェズ(『マッドマックス 2』)

『マッドマックス 2』は、話としては、ある地方の資源争奪戦を描く局地の小競り合いで終わっているため、物語のスケール自体は大きくない。しかしそこで垣間見れる世界観は、あたかもこの世のどこかに存在するかのようなディテールである。

また終盤の大規模なカーチェイスシーンも、疾走感と迫力が充満しており見事としか言いようがない。世界観描写とアクションのバランスは、シリーズ中で最良と言えるだろう。

満足度:8/10

関連作品

本作の、日本の漫画文化への影響は多大であり、『北斗の拳』は言うに及ばず、その西部劇的なモチーフをクローズアップしたものには『トライガン』が存在する。ビデオゲームにおいては、荒野におけるバータートレードを中心としたポストアポカリプスの世界観は『Fallout』シリーズに受け継がれていると言えるだろう。

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投稿: 2020/09/20 ― 更新: 2020/09/21
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