
序盤で買い物に明け暮れるロッキーが描かれるが、これは『ロッキー』(’76)の成功によって一躍大金持ちになったスタローン自身の姿を描いているのだろう(図1)。
その後も他人の子供へのサインをねだられ、「親愛なる……へ。会ったことさえないのに」っと呆れ、CM撮影では滑稽な衣装を着せられ「バカみたいに見える」っと、突然スターになった苦労人の戸惑いが描かれる。そういう点で『ロッキー 2』もまた、脚本を書いたスタローンの人生が反映されている。

そうして舞い上がってしまったロッキーが、虚飾に満ちた商業の世界と折り合いがつかず、本来の天分であるボクシングの道に戻り、猛特訓の末にアポロとの再戦に挑む……と、全体としては『ロッキー』の再奏。
シリーズはその後、同一のドラマを何度も繰り返すのだが、『ロッキー 2』の時点ではまだ脚本に無理がない。上述したような、祭り上げられたスターの苦悩や、周囲の人間とのドラマも丁寧に描かれるので、手堅く楽しめる続編となっている。
予算がついたためか全体的にリッチな演出になり、特にスローモーションを多用した最後のボクシングシーンは迫力がある(図2)。

本作はスタローンが監督を務めた2つ目の作品となる。スタローンは実は監督にも向いている。彼のコメンタリーなどを聴けば分かるが、スタローンは作家的視点から演出を組み立てる思考力や、鋭い人間観察力を持っているので、決して役者バカな人間ではないのだ。彼が監督を務めた作品では、たとえば『ランボー 最後の戦場』(’08)も素晴らしい出来になっている。
満足度:8/10