『バイス』(’18) / 4つの面白さ

2020/08/05 ・ 映画 ・ By 秋山俊
『バイス』ポスター

一言で表せば「楽しめる映画」である。

この映画には色々な面白さが詰め込まれている。1つ目はアメリカ副大統領ディック・チェイニーを主人公に据えつつ、911前後のアメリカ政策の意図や、「地球温暖化」を「気候変動」と言い換える情報操作の手口などを世界に向けて告発する、マイケル・ムーア的な「社会派映画」としての面白さ。

2つ目は、欲望の権化みたいな副大統領を演じるためにブクブク太ったクリスチャン・ベールを指して「これバットマンを演じた人だよ」と言って子供や女性ファンを泣かせたり、サム・ロックウェルがマジでブッシュにしか見えない様子に爆笑する「役者魂映画」としての面白さ(下図)。

図:そっくりさんを演じることに命をかけている(『バイス』)

3つ目は、アメリカ副大統領を名指しで大批判しつつも、全体としてはあくまでブラック・ジョークに満ちた風刺作品として気軽に観れる「コメディ映画」としての面白さ(途中で挿入される嘘エンディングは傑作)。

そして4つ目が、大して強力なコネもなくパッとしない学生に過ぎなかったチェイニーが「影の大統領」と呼ばれる存在にまでのし上がるサクセス・ストーリーを描いた「伝記映画」としての面白さ。

過激な社会派映画でありながらマジメぶらず、むしろ誰でも楽しめるエンターテイメントとして作り込むことで、そのメッセージをあまねく世界中の人に伝えることに成功している、懐の深い映画と言える。2回観て、2回とも面白かった。近年の政治映画の中でも上位に入る出来だろう。

満足度:8/10

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投稿: 2020/08/05 ― 更新: 2020/08/06
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