『衛府の七忍』8巻――桃太郎卿の鬼退治が圧巻過ぎたので完全解説します

山口貴由『衛府の七忍』8巻, 秋田書店, 2019年

はい、相変わらず世に数多いる漫画家が失神して覚醒後に夜逃げしそうなほどの超絶クオリティで作画もネームもこなす山口貴由先生による新巻『衛府の七忍』8巻でございます。

この巻のトピックはなんぞ?と言えば、桃太郎卿こと吉備津彦命の鬼退治ですよ。冒頭で徹底的に描かれる桃太郎卿の豪傑ぶり。これは完全に沖田総司食ってしまいましたね。宮本武蔵編に匹敵する迫力だと思ってます。

「桃太郎 vs. 虹鬼」完全解説

桃太郎卿の描写は、まず柳生宗矩と虹鬼の死闘を「相撲」と表現しているところから始まります。相撲です相撲。剣客と子鬼の戦いなど、卿から見れば相撲でノコッタしているようなものだということですね。

次にそんな彼の戦闘シーンを見ていきましょう。

まず立ち姿が完璧。桃太郎卿が描かれているシーンは、どれも完璧にキマっている。初登場時はやや女性っぽい顔立ちも見られた桃太郎卿も、この巻では完全な漢。例えば家来かと一瞬思った子犬をぶん投げて、爆風に対して直立不動の姿など、実にキマっている(図1)。

図1:火炎など児戯の如く跳ね返す桃太郎卿の後ろ姿。ハイこれ主人公(『衛府の七忍』8巻)

特に「桃太郎卿、抜いてくださいまし!」からの「化身鳥獣召喚笛(ちょうじゅうよびよせのふえ)」の流れ。これです。

笛は剣よりも強し、あるいは、貴様など笛で十分じゃ、とでも言わんばかりの不遜ぶり。そして炎に包まれた戦場で鬼を前にし、笛を「ぴょろるるる~」と雅に吹きすさぶという、絶妙のコントラスト。吹く際の桃太郎のカッ、と見開いた眼(図2)。

図2: 化身鳥獣召喚笛で「三柱の神獣(a.k.a. 変態紳士3人衆)」を呼び寄せる吉備津彦命(『衛府の七忍』8巻)

鬼の倒し方も圧倒的過ぎて「ザ・実力差」という感じでスカっとしましたね。人智を超えた筋肉量から繰り出される問答無用のジャスティス。

正直、武蔵編で「武蔵はなかなか強い」とか評していたときには「女を遠くから不意打ちしていただけのあんたに、武蔵の何がわかる?」とも思っていたんですが、これを見て完全に桃太郎卿の強さと魅力にヤラれてしまいました。どっちが強いとか比べられる次元ですらありません。

そりゃ、前巻まで沖田総司と互角以上に戦い、準主役を張っていた柳生さんも「うほおお」とニコ動のコメントみたいな歓声挙げて太鼓持ちに回らざるを得ないって話ですね。

で、なんと言っても「安泰じゃ」――これでしょうね(図3)。これ、ハイ、流行語大賞。

桃太郎卿「炎も水も、肺に入れなければ安泰じゃ」
図3:この場面での科白はリズムも完璧で、さらに「炎・水」という対になる要素を入れていること、そして「どっちも肺に入れるとアウト」という意外な共通点を持ってきている点など、桃太郎卿の教養が光った当意即妙過ぎる120点満点の内容(『衛府の七忍』8巻)

普通の人間ならどう考えても安泰ではない躱し方ですが、桃太郎卿なら安泰、即ち”No problem.”でございます。「お尊顔は生身!」に対する返事に微妙になってないのもポイントです。桃太郎卿は鉄のカツラでもかぶってるんでしょうか?顔を覆っているときの姿もサイボーグ戦士っぽくてグッド。案外、モノホンのサイボーグだったりして。ずっと昔から生きてるし。『サイバー桃太郎』描いてたし。

なんだか桃太郎卿のことだけを語って終わりましたが、沖田総司編のラストの締め方も、ちょっと意外性がある感じな上に、服部半蔵の悲しい性が出ているようで、これまた良かったですね。とりあえず山口貴由先生には『衛府の七忍』終了後にぜひ、武蔵編と桃太郎編のスピンオフを描いていただきたいところです。8巻の満足度:10/10

まとめ

こんな人はマストバイ

  • 桃太郎無双が見たい!
  • 沖田総司にキュンキュン丸
  • 波裸羅 vs. 金太郎の相撲勝負!
  • 真田十勇士の導入部が読みたい!

買わなくていい人

  • 伊織のおっぱいが見たい人

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投稿日時: 2019/12/28 ― 最終更新: 2019/12/30
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