高瀬志帆『二月の勝者』3巻, 小学館, 2018年

『二月の勝者』3巻で黒木が取らせた戦略「模試の問題を半分捨てる」は、大胆なようでいて実は合理的な作戦である(上図)。というかこの作戦は、受験においてはある程度常識であると思う。「第x問は毎年難問なので捨てる」といった戦略だ。

特に算数(数学)で答えだけ書き込むタイプの形式(マーク式含む)の場合、最終的に答えがピタリと合っているかどうかだけのオール・オア・ナッシングで採点される。よって全問解くことを目標にして全体を雑に解くより、捨てる難問にある程度アタリをつけて、解けそうな問題だけ検算しながら確実に正答を重ねる方が現実的である。

これにより確実に得点率の安定性を上げ、かつ平均的な得点率も上昇させる。計算ミスというエラー自体はどんな計算の達人でも犯してしまうのだから、エラーが生まれることを前提に修正プログラムを組み込んでおく。

作中の「半分捨てろ」はかなり極端だが、元から半分以下の得点率の生徒が、焦って解こうとして全てが中途半端になるくらいなら、最初から半分しかないのだと考えた方が精神的にも余裕ができる。問題を選別するのも、そもそも選別眼がないと的確にできない。

「焦り」ですよ。「30問もある」「ここからできる問題を仕分ける」それだけで彼らには焦りのもとになる。焦るからケアレスミスが起きる。だから…最初から「半分しかやらなくていい」ということにして焦りを取り除いた…

『二月の勝者』3巻

論述式の国立大学の数学などでも、問題をある程度捨てることは重要である。

難関大の数学の問題は、大半の生徒にとって完璧に解ききれない量と質のセットを出してくるのだから、むしろ全ての問題を平均的に時間をかけて解くのは愚かと言える(それが許されるのは一部のトップクラスだけ)。問題文をサッと読んで「解けそう、解けなそう」を素早く判断する能力は、入試の合否を左右する。

1例を挙げると、100分で大問4つ解く形式なら、1問25分ではなく、難問1つ捨てる覚悟で1問30分で検算しながら解いていき、残りの10分をさらなる確認と難問の部分点獲得に当てるのが手堅い戦略である。

ある講師は「実は数学では“字を丁寧に書く”ことが大切」と言っていた。人によるかもしれないが、私はこの意見にも結構同意である。「ゆっくり」ではなく「丁寧に」書く。それによって意識が雑になったり、焦ることを避ける。つまり丁寧に書くという姿勢そのものに、精神統一的な効果がある。また丁寧に書くことにより、転記ミスや、自分の文字の読み間違えといったケアレスミスをなくす効果も生まれる。

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投稿日時: 2019/06/22 ― 最終更新: 2019/10/27
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