荒木飛呂彦『武装ポーカー』集英社, 1981年

手塚賞にも回された荒木飛呂彦のデビュー作『武装ポーカー』は、結構色々なところで作者が言及しているので有名な作品だろう。

このマンガを読んで思うのは「密度がすごい」ということである。1つ1つのページやコマに込められた工夫や作り込みが尋常ではない。例えば……まあこの辺は『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社文庫, 2015年)で作者自身が解題しているので、そちらを読んだ方が分かりやすいのだが、冒頭の老人を遠目からズームしていくフィルム的なカメラワークや「アクションと人物描写を同時に行う」スピルバーグ式の演出術などである(図1)。

図1: 『武装ポーカー』

あとがきによれば、荒木はまず100ページマンガとしてアイディアを出力し、その後に規定ページ数であった31ページまで作品を圧縮したのだという。そのため、荒削りではあるのだが、全体の「工夫されてる」という感じは、最近の連載作よりも強く感じる。台詞回しも「この町は法の真空地帯」「髪の毛1本でつるされたダモクレスの剣ってェわけさ!」など凝った表現が多い。

この密度感は作者の執念の産物であろう。荒木が語るには「とにかく編集者に最後まで読ませることに全力を尽くした」という。

とにかく作品持ち込みで編集者をラストページまで“読ませたい”と思ったし、途中でページをめくるのをやめて見捨てたりしないでください…と願って描いた。

荒木飛呂彦『ゴージャス・アイリン』文庫本あとがき, 集英社, 2012年

こういう傾向は、あらゆる創作に見ることができる。未熟なうちは慣れない分、有り余る情熱を費やして「何とか捻った面白いものを盛り込みたい」という思いから、全体が激しく作り込まれた作品が出来上がる。しかし慣れるとスピーディに、経験によって作れるようになるので、密度はむしろ薄まってしまう。「洗練」とは「省略」なのである。

図2: 『武装ポーカー』

この頃はまだ独特の荒木節やアート寄りの作画は姿を見せていないが、サスペンスを基調とした全体の雰囲気は既に「荒木的」である(図2)。絵自体も他のプロのコピーというわけではない。作家のデビュー作というと、大抵はどっかで見たような作風と、その時代風の典型的なタッチであることが多いが、デビュー作から色が出ているのは流石だと思う。

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投稿日時: 2019/08/16
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