『二月の勝者』はいかにも現実にありそうな舞台や保護者・受験生の設定を基に、リアルな受験生の日常を丹念に描いていて、背景などをボーッと見ていると「これって都内のあの校舎じゃないか?」とまで思ってしまうことがある。その辺は、龍山高校に芥川を召喚するという、完全な虚構世界に閉じこもって些かファンタジーじみた受験生活を送っていた『ドラゴン桜』と異なる点である。

というわけで元ネタが気になるのだが、調べてみるとどうも虚々実々な有様で、それが却って「どっかで見たような」既視感を生み出している感じがした。

受験塾のモデルはどこか

舞台となる桜花ゼミナールは、特定の塾がモデルになっているわけではなく、有名受験塾のハイブリッドであることが作者・高瀬志帆のTwitterで明らかにされている。

2つの塾は「成績により席順が決まる」という実力序列型のシステムを採っているが、これは日能研のシステムがモデルらしい。また作中でのライバル有名塾「フェニックス」は「SAPIX(サピックス)」が基本的なモデルとなっていることは、名称からも容易に推測できる。『二月の勝者』の担当編集とその妹は東大出身で、有名中学はSAPIX出身者ばかりで、入学時からグループを作っていたとインタビューで語っている。

他の有名塾では、例えば四谷大塚の要素などが混じっているのかは、よく分からない(他校模試の睨み方が栄光ゼミナールっぽいという意見もある)。私は高校受験で早稲田アカデミーを利用したが、正月特訓やシュプレッヒコールのノリは早稲アカっぽいかもしれない。まあ時代が違うので、今の早稲アカは大きく変革しているかもしれないが。

学校名の実名採用基準はどこにあるか

灘や桜蔭は実名で登場しているが、これも著者のTwitterで「ケースバイケース」であると説明されている。

有名中学は大体実名で登場していると思うので、学校は実名で登場している雰囲気が強い。また受験校が作り物だと、にわかにフィクションっぽさが増強されてしまうので、個人的に学校名はできるだけ実名で出して欲しいと思っている。

冒頭格言は誰の発言が元ネタか

「君たちが合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」――というインパクトある戒めから始まる本作だが、この台詞は開成高校の校長が入学時に行ったスピーチをほぼそのまま引用しているようだ。ちゃんとした出典を見つけられなかったが、2012年という連載開始より遥か前に投稿されたブログに、全く同じ引用が見つかる。

天下の開成中学だって、何年か前、入学式で、校長が言っていた。

「おまえらが合格できたのは、一に母親の狂気、二に父親の経済力、三におまえらの力。だから調子にのるな。」

ちょっと変な塾長のブログ

「三におまえらの力」は、本作で省かれている部分である。そのおかげで黒木の台詞が締まった。私が大学入学したときは、総長スピーチがあまりにも平凡で寝てしまったが、後の世で引かれるほどのスピーチを行えば、学校も箔がつくというものだ。

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投稿日時: 2019/01/22 ― 最終更新: 2019/01/23
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