『リボーンの棋士』のヒロインの座を巡る争いについては、1巻から既に土屋vs.森さんの一騎打ちの様相を呈していた。キラーメガネこと土屋貴志29歳は、オスである。しかし、その枯淡とも言えるツンデレの風格、豊かな内面描写により、作中でも随一の萌えキャラとして愛されており、この作品の精神的なヒロインと呼ぶこともできる。今回は、果たして二人のどちらが本作のヒロインに相応しいかネタバレ考察してみよう。

土屋と森は、キャラクターの特徴が好対照をなしている。

土屋貴志

  • 元奨励会員で将棋の腕前は安住並
  • 鉄壁の守りを持つ正統派の将棋指し
  • 自分の感情を素直に出さないが、将棋への愛情はストレート
  • チェックシャツ
  • 眼鏡をかけているときは殺し屋みたいな鋭い眼光と毒舌を放つが、眼鏡を外すと素直になる

森さん

  • 安住と同じカラオケで働くバイト仲間
  • 攻め込むのが好き
  • 将棋の腕前は恐らく残念
  • ただのシャツ
  • 役者志望

森さんの描写はあまり多くないのだが「天才の苦悩する姿がたまんない」(1巻)「ボコボコにする研究の方が面白い」(2巻)といった発言から、ドSキャラであることは確定的と言えよう。つまりこの争いは「攻めの森 vs.守りの土屋」という構図になる。

しかし2巻終盤の竜皇戦にも差し掛かると、土屋優勢は圧倒的と思えてきた。以下にその理由を示す。

森さんは出番がない

『リボーンの棋士』 は、本格将棋漫画である。当然お話は将棋中心に進むのであり、そこに単なるバイト仲間でしかない森さんの出番は全然ない。森さんは将棋好きを自称しているが、雁木を「『ハチワンダイバー』に出てきたやつ」と表現したり、明星に六枚落ちの指導対局で完敗しているところから、恐らくミーハーあるいは動画勢の類であり強くはないであろう。 第8回の研究会でも、いかにも男目当てという感じで勝負場にやってきて「何しに来たんだこいつ」という痛ましい視線を土屋から浴びせられている(図1)。

図1:鍋倉夫『リボーンの棋士』2巻, 小学館, 2018年

そんなミイちゃんハアちゃん森ちゃあんな彼女は、案の定その後も相槌を打つくらいしかすることがなく、話に絡まずフェードアウトした。

安住は森さんにあんま興味ない

これを示すシーンは2つある。1つは第8回で森さんが安住を飲みに誘った際に、あっさり断られて研究会を優先されてしまったこと、いま1つは第13回で安住が森さんを放置して映画を抜けたことである。誘うのは毎回“攻めの森”であり、それを安住は尽く凌いでいる。一方で土屋に対しては安住の方から積極的にアプローチをかけており、それを“守りの土屋”が既読スルーするなど、鉄壁のディフェンスで受けきっている、という状況である。

安住は土屋と仲がいい

同じく第8回で、安住が研究会を優先している時点で土屋優勢は間違いないのだが、回想シーンではさらに「将棋のことになると素直だから好きだよ」とまで発言している。

土屋貴志という憂愁の戦士

作者からも、土屋貴志はもう1人の主人公と言えるほど、別格の扱いを受けている。些か超然とした溌剌さを持つ安住に対し、土屋は奨励会の暗部の代弁者であり、将棋への愛憎入り交じった複雑な感情(図2)、安住に黙ってプロへの再挑戦の想いを内に秘めるなど、この作品である意味、主人公以上に複雑な内面が描かれている。光の安住、闇の土屋とでも呼ぶべき対の存在なのである。

図2:鍋倉夫『リボーンの棋士』1巻, 小学館, 2018年

まさに本作を代表する準主人公であり、そのような悲壮かつ壮絶なる将棋への愛を胸に、絶望的な戦いを繰り広げる土屋に対し、森さんの軽々としたレグスペな攻めが通じる道理はなかった。森さんはあっという間に出番を使い果たして攻めが切れ、土屋が余裕の完封勝利だ。今後のヒロイン争いは宇野三段との勝負になるだろう。

(以上の考察は第22回までの掲載内容に拠る)

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投稿日時: 2019/01/16 ― 最終更新: 2019/08/31
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