『ブルーピリオド』橋田悠のアート観に学ぶ「万物芸術」の考え

『ブルーピリオド』ではそれぞれのキャラクターが芸術に対する感覚や定義を語っているが、その中でもやはり橋田悠(はしだはるか)が軽妙なメタファーに乗せて表現する芸術観が、抜群に面白い。2巻の六筆目「逆にピュアかッ」の美術館巡りにおける「芸術は食べれへん食べ物」発言についても、既に「『ブルーピリオド』アートの認識を更新していく成長物語」の記事で語った。

そして3巻の9筆目では、新たに「コンビニも美術館みたいなモンやん」という発言が飛び出した(図1)。

ここにあるモンみーんな誰かが考えて作ってんねんやろ?
図1:山口つばさ『ブルーピリオド』3巻, 講談社, 2018年

実はこれとほとんど同じことを大学1年生の時に外国人講師に言われて、強く印象に残っていた。それは留学生たちと、交流プログラムの一環として青山近辺を歩いて散策していたときのことで、表参道付近のある区画では1着何万、何十万円もするようなシャツとか上着(ぱっと見はデパートに並べてあるような物にしか見えない)ばかり売っていて、衣服に全く頓着しない質の私は退屈してしまっていた。「どう思う?」と外国人講師に聴かれた私は「いや、あんまり興味ないですね。まず買わないし」とそっけなく返したのだが、その人は「買わなくても見ているだけで発見はあるよ。美術館にある美術品と商店にある商品に、本質的な違いはないから」と答えて、私はそれにひどくハッとさせられたのである。

街中の商品をつぶさに観察してみると、実際、つくり手のこらした様々な意匠に気づく。そしてそういった「気づき」の蓄積が、モノづくりやアートを生業とする人間にとって、長い目で見てかけがえのない財産になるはずである。橋田の考えを敷衍すれば、人工物も自然物も、建造物からスナック菓子に至るまで、あらゆるものはアートであり、アイディアの見本なのだ。

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投稿日時: 2019/01/14 ― 最終更新: 2019/02/22
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