結末を両方描く、というトリック

2021/11/04 ・ 漫画 ・ By 秋山俊

『ルックバック』についての記事で、通常の結末と同時に、パラレルワールド的な結末が同時に描かれていることについて書いた。実はこの「あり得る結末を両方描く」というトリックは、私のお気に入りで、使い方を誤らなければ一つ放って二つ得る、お得な叙述トリックになる。

最近の他のマンガだと、たとえば『嘘喰い』の最後の勝負についてもそうだった。10年以上前から予告されていた最終決戦なのだから、主人公が勝つかライバルが勝つか、これはなんとしても両方のパターンを描かなければ損であった。

この叙述トリックの最大の難点は、結局のところ、それは「夢オチ」の変種にしかならないという点。Blu-rayの特典映像じゃないんだから、現実に両方が勝つパターンが併存するはずがない。したがって、夢オチを夢オチとして納得させるだけの展開の妙が必要である。あるいは、物語世界の現実として、たとえば過去を改ざんできるとか、そういう設定が必要になるだろう。

ただタイムマシンが出てくるような設定だと、別エンディングが飛び出してくること自体が予想の範囲内になってしまうので、やはり現実的な設定で進めておいて、ラスト直前で不意打ち的にエンディングが分岐する、というのが一番である。なんといっても、両方の果実を味わうには、一度目は完全に騙されて本物の果実だと思いこんでいる必要があるからだ。したがって一度しか使えないし、一度使うとそれ以降のすべてが「夢ではないか?」と疑われるので、最後の場面でないと使いにくい。

(ヘッダー画像:藤本タツキ『ルックバック』集英社, 2021年)

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初版:2021/11/04

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