『鬼滅の刃』の元ネタ?「籠の中の怪物」と禰豆子の機能

2020/12/03 ・ 漫画 ・ By 秋山俊
吾峠呼世晴『鬼滅の刃』集英社

動画へのコメントで『鬼滅の刃』のヒロイン禰󠄀豆子を『バスケットケース』(’82)の怪物ベリアルと結びつけるものがあり、その時初めてこの両者のアイディアが非常に似ていることを意識したのだが、実際に鬼滅の作者が影響を受けていたのかは分からない。

以前ラジオで紹介したが、『バスケット・ケース』は、謎の籠を持ち歩いたままニューヨークをうろつく世間知らずの若者、ドウェインが主人公のホラー映画である。いくらかネタバレしてしまうが、この籠の中身は彼の双子である(しかも元々胴体がくっついていた結合双生児)。非常に凶暴で並外れた「怪物」である片割れ、ベリアルを、周囲に気づかれないように持ち運んでいたのであった。

ベリアルは双子と言えど、ドウェインとはまるで外見の異なる、人間としては「不完全」な姿の異形の怪物姿であり、気性が荒く制御不能。ひとたび解き放たれると、必ず誰かを殺したり物を破壊することになる。

この「制御不能の、巨大な力を持った片割れを籠に隠して持ち運ぶ無垢な青年」という組み合わせは、『鬼滅の刃』に非常によく似ている。またそれ以前に「カゴの中の怪物」というアイディア自体が、神話などに元ネタがありそうな気もするが、調べてみたところトム・リーミィの小説『デトワイラー・ボーイ』が「10年前に書かれた『バスケット・ケース』」と呼ばれているので、どこに根源があるのかはよくわからない。

『バスケット・ケース』1982年

しかし『鬼滅の刃』の巧みなところは、現在ではクラシックとなったこのモチーフから、籠の中身を「制御不能な可憐なヒロイン」に変えてしまったところであり、この点で少年マンガ的に極めて正しいデザインである。

『鬼滅の刃』人気の理由の一つは、間違いなく禰󠄀豆子のデザインにある。禰󠄀豆子のキャラとしての機能は、バトルマンガに定番の「主人公の暴走する潜在能力」という不確定要素を、ヒロインの内側に移植したものと言っていい(*)。そしてさらに、そのヒロインを怪物であると同時にマスコットにしてしまった。仮に作者が『バスケット・ケース』を参考にしたのだとしたら、それは過去の傑作の、現代へ向けての見事な換骨奪胎といえる。

(*)たとえば同世代のジャンプの人気漫画『呪術廻戦』においては、この主人公の二重人格的な描写は、既存のマンガと同じく主人公の内部に”両面宿儺”として同居している。

(誤解のないように書いておくと、私は創作というのは、既存の作品の引用と組み換えによって行われるものだと考えているので、ここでは純粋に『鬼滅の刃』を称賛しているのである)

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初版:2020/12/03

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