投稿日時:2018/11/02 ― 最終更新:2019/03/16

漫☆画太郎作『罪と罰』

「画太郎が『罪と罰』を漫画化する」

既にこの行為自体が、最大レベルの作品への冒涜を予感させ爆笑である。タイトルだけで相当とんでもないことになっているのだが、1巻の表紙がこれまた酷い。別人のイラストレーターに描かせた堂々たる表紙詐欺であり、当然このようなカバーイラストから想起される文学的描写など、この作品内には1マイクロメートルほども描かれず、人物設定やセリフは神をも恐れぬ大胆さで翻案されている(図1)。

図1:漫☆画太郎作『罪と罰』1巻, 新潮社, 2011年

もうこの出オチ2連発の時点で普通のギャグ漫画3話分程のギャグの密度を誇っているが、ギャグ漫画の巨匠・画太郎にとって、読者を笑わせるのに、もはや自らの筆を動かすことすら不要なのだろう。2巻以降のカバーイラストもどんどんおかしくなっていくものの、残念ながら人智を超えたレベルなので言語化が難しく「さすが俺たちの画太郎」「前衛的」「画太郎的な、あまりにも画太郎的な」などといった適当な賛辞を並べて誤魔化すより他にない。なんか板垣恵介のイラストも混ざってる気がするが、全然違和感がないのはさすが「同業者」といったところか。

内容も当然のことながら惨憺たるもので、エル・グレコの壮大な宗教画『受胎告知』が公園の便所の壁に飾られているのを見てしまったような感じである。

原作のストーリー

頭脳明晰な貧乏学生ラスコーリニコフが、選ばれた人間は大義のためには殺人を犯しても許されるという思想の下に、悪徳高利貸の老婆を殺害するが、偶然その場に居合わせた妹も殺してしまい、罪の意識に苛まれる。

画太郎版のストーリー

天才(?)的頭脳を持つエビゾーが悪徳高利貸のババアを殺害しにいくが、その行動も含めて全てはババアのコントロール下にあった!待ち構えていたババアに両手両足を切断され、エビゾーは逆レイプされてしまう!

ここでは『罪と罰』に存在した高尚なテーマが、画太郎によって豪快に翻案、もとい陵辱されている。ストーリーはここから、心をボキボキにへし折られたエビゾーがトラウマを克服してババアへリベンジしにいく復讐劇へと展開する。そして奇妙な運命の悪戯、あるいは創造神画太郎の途方もない脚本術により、エビゾーは、自らの過去を乗り越えるにはババアとのセックスに臨むしかないという狂気的結論に到達するのだが、その模様は厳粛であると同時に滑稽であり、悲劇的であると同時に喜劇的でもある。

物語の途中には突拍子もないギャグがコラージュ的に配置される。登場人物が学校に駆け込むと、なぜかそこがロシアではなく日本の現代の学校だったり、『罪と罰』の有名なセリフを、コマを長々とコピペしながら引用した挙げ句「なげーよ!」とツッコミをいれたり(図2)、画太郎が勝手にキャラの性別変更をしたために巻末解説と本編の内容が噛み合わなかったりと、うっかりすると途中で自分が何を読んでいるのか忘れてしまうほどである。

図2:漫☆画太郎作『罪と罰』2巻, 新潮社, 2012年

総評としては、画太郎ファンならまず満足できる最低にして最高のギャグ漫画なので安心して読める。大ゴマとコピペばっかだからすぐ読み終わるし。君も巨匠の文化陵辱行為に加担せよ!

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