『一対一対応の演習』の“入試本番で解けるようになる”使い方

2019/06/09 ・ 勉強 ・ By 秋山俊
大学への数学『一対一対応の演習』新訂版, 東京出版

難関大の数学攻略の決定版

難関大で数学が必要となる全ての人に、最もおすすめしたいのが『一対一対応の演習』シリーズである。

このシリーズは、いわゆる「標準問題」を網羅した問題集で、似たような問題集としては『青チャート』『フォーカスゴールド』『標準問題精講』などが存在するが、私は全ての問題集を比較検討した上で『一対一対応の演習』がベストと判断し、使用した。本番まで繰り返し読み、解いたものである。

この問題集を徹底的にこなし、本当の意味で理解することで、東大を始めとする難関大の数学にも通用することは、私が実際に体験し確信できたことである。

このページの目次

  1. 『一対一対応の演習』のレベルと使用目安
  2. 『一対一対応の演習』の長所と短所
  3. 『一対一対応の演習』の使い方――妙味は“解答の前”にある
  4. 「例題だけ」では旨味が半減――演習台への適用
  5. 『一対一対応の演習』の構成・問題数
  6. 『一対一対応の演習』を仕上げる時期と期間
  7. 『一対一対応の演習』は何周すべきか?
  8. 『一対一対応の演習』旧版と新訂版の違い
  9. 『一対一対応の演習』の次に、どの問題集に接続すべきか

『一対一対応の演習』のレベルと使用目安

この問題集を活用できるのは

基礎問題レベルを十分にやり込んだ学習者

である。

具体的に書くと『4STEP』のような基礎問題を網羅した教科書傍用問題集、あるいは『チェックアンドリピート』『入試数学の基礎徹底』のような、やや易しめの問題(大数シリーズの分類で言う“A問題”)について、問題集の9割以上を「見た瞬間にパッと解法が浮かぶ」というレベルまでやり込んだ人が、この問題集に接続できる。

『一対一対応の演習』では、上記のような問題については既にマスターしていることを前提に、それらの基本解法を“どう複合して使うか”が解説されている。従って、基礎問題レベルをマスターしていない人が手を出しても、単に使いこなせない解法が山積みされるだけとなる(なお基礎問題レベルの学習方法については「数学勉強法まとめ」を参照してもらいたい)。

これらの基礎レベルを終えた人が『一対一対応の演習』をしっかりこなすと、難関大学でも(よほど難問好きの医学部などを除き)半分以上の問題を解き、あるいはかなりの部分点をもぎ取れるようになる。つまり「難関大数学における合格点」というのが、本シリーズの到達レベルである。

『一対一対応の演習』の長所と短所

本書の長所をまとめると以下のようになるだろう。

  • 解法パターン1つにつき大判2/3ページ分を費やした、詳しく、それでいて見やすい構成
  • 「解き方のポイント」が最初に一般化・格言化されている
  • 「標準問題レベル」だけに完全に特化しており、問題数が必要最小限にして必要十分に絞られている
  • 例題と演習題が1題ずつ対応し、理解した解法をすぐ演習できる
  • 特に数I、数IIに関しては洗練されていて他書よりも解説が巧い
  • 一冊ずつが薄いので精神的に楽で、持ち運びもしやすい

以上挙げた点は、類書である『青チャート』などよりも本書が優れていると感じた点である。

取り分け受験生視点から見ると「問題数が必要十分な最小量」であること、これが非常に大きい。ほとんどの受験生、特に現役生にとって『青チャート』の問題量は、とても全てこなせるような量ではないし、また全てこなす必要もない。他の問題集が膨大な量の問題を掲載しているのは「問題数があるとオトク感も出るし、沢山こなせるので買いたくなる」という商売上の理由も大きいのだろう。

一方、『一対一対応の演習』はこなすべき問題が精選されているので「ここに載っているのだけやればいい」という安心感がある。問題数が少なく薄いので、取り回しも楽なのも、長い時間付き合う問題集としては重要な点だ。

図1:『一対一対応の演習 数学II』新訂版, 東京出版

またこれは好みの問題でもあるが、本シリーズは問題集としての見た目も美しい(図1)。大判だから余白が十分にあって広々としており、紙質も良く、他の問題集より1ランクほどリッチな印象がある。初めてページをめくった時に「この問題集を解きたい!」と思わせてくれる。こういう点もモチベーションを保つ上で、密かに重要である。

一方、本書の短所と言えば

  • 問題の絶対数が少ない
  • 解答解説が別冊になっていない
  • 数A、数Bの解説の切れ味が数I、数IIほどではない

という点だが、これは長所の裏返しでもある。

だがハッキリ言って『一対一対応の演習』の全問題をやり込むことすら容易ではないので、「問題の絶対数が少ない」ことは、ほとんど欠点にならないし、演習問題をもっと解きたければ、もう1,600円追加して『新数学スタンダード演習』を買えばいいだけである。

『一対一対応の演習』の使い方――妙味は“解答の前”にある

本シリーズの解説の美点は、問題の実際の解答解説の前に「その解法を使う理由」「類題を解くための思考法」などが、その例題だけの話ではなく、一般化された形で説明されていることである。

例えば以下の図2ような感じである。黄色の線の部分に注目して欲しい。

図2:『一対一対応の演習 数学II』旧版, 東京出版

ここで「例題そのもの」の解答解説の前に「無理数の代入は次数の低い式で」のように、類題を解く際の視点や思考が一般化・格言化されているのである。「数学勉強法まとめ」で解説したように、標準問題レベルを解くにはがむしゃらな解法の丸暗記はほとんど使い物にならず、このように解法を一般化してエッセンスを抽出することが非常に重要。

よって『一対一対応の演習』では、例題の解法を理解する際に「その問題そのもの」の解答よりも、このような「一般化された解法エッセンス」により注目し、それがどういうことかをしっかり理解する、という使い方が良い。このような解法の要点だけをノートにまとめ、その要点から「どういうことか」をセルフレクチャーするのも、良い訓練になるだろう。

この点を疎かにすると本書の旨味が半減してしまうので注意したい。

他にも「例題のタイトルを覚える」というのも有効な勉強法。例えば「極値を求める/次数下げ」「極値の条件から求める」といった部分。

これらは言わば、著者の人が数学の典型題の内容を分類してくれたものなので、タイトルと解法をセットで覚えると、実際の問題を解くときも「これは“極値の条件から求める”の解法だな」と、自分で問題を解析し分類しながら的確に解けるようになる。さらにタイトルを覚えると、解法理解の際にも、その解答が何を目指しているのかが分かりやすい。

このように問題集は漠然とこなすのではなく、どういう使い方を意図しているのかとか、どうやったら上手く使えるかを自分で工夫することで効果が増す。だから実は最初に問題集の前書きはちゃんと読んだ方がいい。どんな使い方を想定しているかが書いてあるからだ。

「例題だけ」では旨味が半減――演習題への適用

『一対一対応の演習』では、以上のように例題を味わうように解き、解法を理解した上で、例題だけではなく演習題に適用できるか試してみて、実際に自分がエッセンスを抽出できたのかを確認できる。これが本シリーズのミソである。

先述したように、標準問題レベルになると「解法の単純暗記」は応用力が不足して実戦力が足りなくなる。標準問題レベルでは、覚えた解法をどうやって他の問題に適用していくかで差がつくのである。

そこで本シリーズでは「あなたは本当に解法のエッセンスを吸収できましたか?」と問うような問題が演習題としてチョイスされているのである。これを解くことで、表面的な理解に留まっていないか、あるいは解法をさらに少し上のレベルで使うにはどうすればいいかが分かるようになっている。例題だけでは、ここが抜けてしまう恐れがある。

『一対一対応の演習』の演習題は単に「少し難易度を上げた問題」ではない。本書のタイトルが示すように、このようにセットで解くことで最大の効果が出るようにデザインされているのだ。「例題だけ」というのは本書の旨味が出ない使い方なので、必ず演習題も解くようにしよう。

『一対一対応の演習』の構成・問題数

  • 数I…例題53 / 演習題50
  • 数A…例題54 / 演習題54
  • 数II…例題83 / 演習題83
  • 数B…例題59 / 演習題59
  • 数III(微分積分)…例題75 / 演習題75
  • 数III(曲線・複素数)…例題36 / 演習題36

数Iのみ「データの分析」の演習題が存在しない。

合計すると、数学IAIIBだけで例題249 / 246の合計495題、全単元合計で例題360 / 演習題357の合計717題となる。合わせるとかなりのボリュームであり、標準問題レベルを制覇するのに十分な問題数であることが分かる。

『一対一対応の演習』を仕上げる時期と期間

以上のように「必要最小限」とは言え、決して問題数が「少ない」わけではない。数学IAIIBだけでも、一日5題のペースで3.5ヶ月、数学IIIも含めると5ヶ月はかかる計算である。一日10題というハイペースでこの半分。

例えば一日10題のペースなら、夏休みの期間に『一対一対応の演習』のIAIIBまでを本格的に一周することが可能、ということになる。とは言えこのレベルが初めての人にとって、一日10題はかなりキツイし時間を食う。一見薄い問題集だが、丁寧に仕上げるには数ヶ月必要なのだ。

使用期間に関してだが、東大・京大・早慶上智のような難関大で数学が必要ならば、夏前には取り掛かって秋には仕上げたい問題集である。何故なら過去問もきっちりやる必要があるからだ。

数学に関して不安を残したくない場合、理想を言えば夏休みの期間には「仕上げ」まで持っていくべきであり、それでようやく接続用問題集と過去問のセットを入試前に全て解いて、万全の状態に持っていける。この計画の場合、逆算すると春には始める必要がある。

『一対一対応の演習』は何周すべきか?

繰り返し述べてきたように「標準問題レベル」においては、解法の本質的な理解がカギなので、表面的な暗記に留まっている限り何周しても十分に解けるようにならないし、逆に理解が深ければそんなにしつこく繰り返さなくても大丈夫だ。

とは言え、理解とは物事の暗記でもあり、いくら理解が深くても時間が経てば解法を忘れるだろう。そこで本シリーズで標準問題レベルを仕上げるつもりなら最低でも3周はしたいが、自分の理解力や計画、入試までの日数を考慮して、勉強方法を柔軟に設定すると良いだろう。

例えばペンを動かしながら味わうように解くのは2周にとどめ、以降は解法を忘れないように例題の解法を時々“読んで”思い出したり理解を深めるようにしつつ、『新数学スタンダード演習』などで演習を積む。

あるいは最初の数周は自分で無理に解かず、読むことを中心としながら例題の解法を理解し、大体分かったと思ったときに実際に例題 -> 演習題と解いていく、という使い方も考えられる。

実際、基礎問題レベルをマスターした直後の状態では、例題すら解くのはかなり難しいので、いきなり自分で解こうとしても疲れるだけになることもある。最終的に問題集からエッセンスを丸ごと抽出できれば良く、そして「実際に入試問題を解くこと」が目標なのだから、その過程である「問題集をやり込む」という段階においては、勉強法は柔軟でいいのだ。

本シリーズは大半の受験生にとって「最後まで傍らに置く座右の書」となるはずなので、何周すれば十分、と決めつけずに「ちょっとやり過ぎかな」と思うくらいにはやり込み、その後も定期的にパラパラ確認すると良いだろう。

『一対一対応の演習』旧版と新訂版の違い

2013年から出た「新訂版」と、その1つ前のバージョンでは、内容やクオリティに大きな差はない。「新訂版」では「データの分析」のような新課程の内容が加わった他、全体として旧版にあった、解法とは直接関係ないやや煩雑な計算が必要な例題が、もう少し単純な問題に置き換えられるなどの改善が行われている。

現在では入手性の観点から言っても「新訂版」を買えば問題ない。

『一対一対応の演習』の次に、どの問題集に接続すべきか

まず『一対一対応の演習』さえ仕上げれば、どの大学であっても合格点は狙えるし、極度の難問以外は十分に理解できる力がついているはずなので、ここから最も手堅い次のステップは、実は志望校の過去問である。

「志望校の過去問は「問題集」として早めに解く」で解説したように、過去問は早めに解くほど勉強が効率化され、本番前に復習も含めてしっかりこなしておくことが理想なので、下手に他の問題集をステップとするよりも、さっさと対策を固めてしまった方が良い。特に現役生は『一対一対応の演習』と過去問演習で、ほとんど時間を使い切ってしまうだろう。

志望校の過去問は、その大学を受けたいと思った時点で、なるべく早めに解いた方がいい。何故なら、志望校の問題の特色や傾向がわかり、早くからそれに対応した勉強ができるようになるからである。それによって

入試本番までの全ての勉強の質が向上する

という現象が起きる。だから早く解くほど有利である。

「志望校の過去問は「問題集」として早めに解く」

それ以外では、『一対一対応の演習』よりやや高い問題レベルが中心の『新数学スタンダード演習』『文系数学の良問プラチカ』が次の問題集として良い。特に『新スタ演』に関しては同じ大数増刊シリーズなので、解説の癖も同じで接続として最良である。

ここからさらに先のレベルとしては『新数学演習』『解法の探求・確率』なども存在するが、標準問題こそは難関大制覇最大のカギなので、時間の許す限り丁寧に仕上げておきたい。

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投稿: 2019/06/09 ― 更新: 2019/12/10
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