冨樫義博『Hunter x Hunter』25巻, 集英社

『Hunter x Hunter』のネテロに共感した。

ネテロはハンター協会の頂点に立つ、豪傑肌の好々爺である。作中では人類最強レベルの使い手として描かれ、その経験から来る先見、唯一無二の念能力、溢れる人望など、作中でも屈指のパーフェクト人間として描かれているところがある。

ところがキメラアント編も佳境に入った頃、突然、その会長も壮年期までは凡人(?)であり、悩み抜いた末に狂人一歩手前の引き篭もり生活に入り、毎日ひたすら正拳突きしかしない期間を挟んでいたという驚愕のエピソードが公開され、我々読者は度肝を抜かれた。

図1:冨樫義博『Hunter x Hunter』25巻, 集英社

一日一万回の正拳突きという狂気の特訓を続けた結果、あまりにも拳が速くなり過ぎて究極の必殺技と化したという教訓話である。

超人の陰に努力あり!

しかもこれは単なる豪傑伝ではない。私が思うに、この「アホの一念で正拳突きして超スピードを獲得」には、作者の経験も踏まえた現実の真理が込められているのだ。

「感謝の『月刊大数』解き」をしていたら、本番で問題を瞬殺できた話

そう、あれは受験も終盤戦に入った頃。私は数学でメジャーな問題集と過去問をやり尽くし、しかしそれでも十分に伸び切らない自分の実力に焦っていた。

月間大数の合格報告に載っているような「数学は半分の時間で全完しました」「最後は寝ました」といった武勇伝を語る受験生と自分の違いはなにか。それが、問題を解いても解いても分からなかった。

そんな中、私が始めたのは月刊誌『大学への数学』のバックナンバーを解きまくる、という修行だった。『大学への数学』は毎号、テーマを決めて確率特集、平面座標特集などを組み、その年の大学入試問題から典型題や良問を大量に収録している。

それを利用し、頻出範囲に絞って微積分や整数特集号のバックナンバーをAmazon中古で大量に集め、解きまくっていたのである。すなわち、一日一冊、感謝の『月刊大数』解きを実行した(図2)。

図2:冨樫義博『Hunter x Hunter』25巻, 集英社

この効果は大きかった。例えば3日間で微積分特集をしている5月号を3冊分解くのである。バランス良く解くのではなく、特定分野だけ一気に解きまくる。しかも他教科を捨てて数学しかしない。

つまりネテロのエピソードで言うところの「それのみに、没頭したのだ」というやつである(図3)。

図3:冨樫義博『Hunter x Hunter』28巻, 集英社

ここで月刊大数の構成を紹介すると、毎号標準~発展問題だけを集めた「スタ演」「日日演」だけでも、問題はおよそ30題ほどある。「スタ演」では『一対一対応の演習』レベルの標準問題を12問程度解き、「日日演」では『新数学演習』(新版)並の問題を18問程度解く。

これだけ短期間にウマシカの如く同じジャンルを解いていると、数日のうちに何度も何度も似たような問題を解くから、それだけで典型問題は見た瞬間に「手が勝手に問題を解く」状態になった。発展問題も標準問題の知識を駆使して食らいつけるようになった。これが短期間に特定分野を集中訓練する効果である。

特にこの特訓で伸びたのが、整数。本番で出た問題は小問構成で3題あったが、頭で解くのに3分程度、書く時間を含めて(本番だったのでかなり丁寧に書いて)15分で解き切ることができた。ちなみにそれがその年の一番難しい問題。まさに「音を置き去りにした」ネテロのごとく「受験生を置き去りにした」のである(図3)。

図4:冨樫義博『Hunter x Hunter』25巻, 集英社

もうお分かりであろう。

受験において最後、圧倒的な解くスピードを手に入れる鍵。それはセオリーを置き去りにした狂奔のやり込みと、学問への深い感謝なのである。

執拗な努力よ。宿命の努力よ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ

コピペ風にまとめると

秋山俊 30歳、冬。己の肉体と数学力に限界を感じ、悩みに悩み抜いた結果、たどり着いた先はカフェ・ベローチェであった。

自分自身を育ててくれた数学への限りなく大きな恩。自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが、一日一冊、感謝の『月刊大数』解き!!

コーヒーを飲み、ページを開いて、問題を解く。解説理解までの一連の動作を一回こなすのに、当初は平均20分以上。全問解き終えるまでに、初日は丸一日費やした。解き終えればゾンビのように帰宅する。朝になってまたベローチェへ行くを繰り返す日々。

正月が過ぎた頃、異変に気づく。

スタ演と日日演を解き終えても日が暮れていない!!

センターも終えた頃、完全に羽化する。

感謝の『月刊大数』解き、7時間を切る!!

かわりに学コンを解く時間が増えた。

***

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投稿日時: 2019/08/29 ― 最終更新: 2019/12/03
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