太宰治
「怒る時に怒らなければ、人間の甲斐がありません」「信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ」

私は元々本を読むのが好きで、国語に関しても開示得点は良かった(センター9割、二次は75点。同年の文一主席が79点)。だからそんなに間違ったことは書かないと思うが、現代文はどうしても「曖昧」な科目なので、予備校や模試によって正解や採点基準が異なるし、特に記述式においては自分の成績を計測するのが困難である(→「現代文の解法は宗教的になる」)。

そのため、現代文は最終的には、あくまで自分の解答方法を信じて試験に挑むしかないし、現代文が得意と思っている人でも、どんな試験においても高得点を取れるとは限らないことを理解してほしい。

現代文で抑えるべき事は3つ

曖昧な科目と言っても「ここまでは絶対に抑えるべき」という事柄は存在するし、そこまで達するのに大して時間はかからないので、いくら時間がないと言ってもその「ここまでは抑えないといけないライン」には達するべきだと思う。

具体的に書くと

  • 文書の論理構造を理解できること
  • 問いの意味を理解できること
  • 頻出の評論用語やテーマ、漢字などの知識面

この3項目さえ押さえていれば、後は直前に集中的な演習を行うだけでいい。事実、これらを抑えて「現代文が分かった」と思った後の最後の1年間、私は現代文の勉強は一切しなかった。

以上3つのポイントを深めるには、以下のような学習をこなしていくのがおすすめである。

目次

  1. 現代文という科目を把握する
  2. 自分に合う現代文解説書を一冊こなす
  3. 質の高い入試問題だけをやり込む
  4. 問いの意味と解答の方向性を徹底的に研究する
  5. 評論用語や漢字などの知識面の穴をつぶす
  6. 現代文の学習は「やらなすぎず、やり過ぎない」

以下、1つずつ解説していく。

現代文という科目を把握する

これについて述べる前に、まず「現代文はどうやって解答を確定させるのか?」に書いたような「そもそも現代文の文章が“論理的に書かれている”ってどういうこと?」を抑えなければならない。この点がまだよく分からない人は「現代文はどうやって解答を確定させるのか?」を参照して欲しい。

重要な点を抜き出すと

だから入試問題というのは「論理的に正しく書かれ、誰が読んでも同じ意味に解釈できる文章」というのが使われる。もっと砕けた言い方をすると

入試現代文は数式のように書かれている

ということである。

つまり現代文の文章が論理的に厳密に書かれている以上、それを読んだ感想は各人それぞれであれ、「筆者がなにを主張しているのか」については、文章の論理に従って100人が同じことを「筆者の主張」として抜き出すことが可能なはずである。

そして現代文とは、「筆者の主張」を論理に基づいて文章から逆算していき「このように書かれているから、こういうことを言っている」と確定させ、解答としていく科目である。

このような現代文を解く上での大前提となる事柄の理解や、具体的にどのように文章を読み解くかについて勉強するとき、私のおすすめは『田村のやさしく語る現代文』である。

自分に合う現代文解説書を一冊こなす

私は現代文の方法論について、ほとんど『田村のやさしく語る現代文』しか読まなかった。現代文を解くためのエッセンスは、ほとんどこの一冊に収められていると言っていい。「現代文とはなにか」が分かっていなかったとき、この本を読んで実に感動したものだ。

この本の美点は「薄い」という点にもある。150ページ弱しかない。これは現代文に時間をかけられない生徒にとって必要十分である。現代文は「科目そのものの正確な性質把握」が重要なので、薄い本をじっくり読み込んでエッセンスを取り込むことが重要である(ただ最近、在庫が切れているようなので、見つからなければAmazonなどの中古で探すか『新・田村の現代文講義』など同著者の別の本を当たると良いかもしれない)。

『現代文と格闘する』なども良い参考書だと思うが、かなり分厚く、既に田村本で科目については把握していたので、私は途中で読むのを止めてしまった。現代文は科目の性質を理解したあとはいたずらに解説書や演習をこなすより、センターや志望校の過去問で演習する方が効果的である。

なにより、ほとんどの受験生は現代文という曖昧な科目に大した時間を費やせないであろうから、分厚い参考書はあまり勧められない。総合的には古文漢文や他科目を伸ばした方が点数が伸びるからである。

他に、昔から有名な現代文参考書としては出口汪による『出口のシステム現代文』シリーズも存在し、軽く読んだ限りでは最終的にたどり着くところは同じだと思う。欠点としては、著者の出口汪は如何せん商魂たくましいので(笑)参考書が大量に存在し、シリーズでまとめて買わせるように作っているので、買うのもこなすのも大変である。

ただ最終的には、自分がしっくり来ると思うもの、信頼できそうな方法論を解く参考書なり予備校講師などを一冊(一人)選んで、それについていく、というのが良い。というか色々浮気していると現代文の性質上、どうしてもブレるし(特に解答の書き方)、時間的にも現代文に大量に費やしている余裕はないだろう。

質の高い入試問題だけをやり込む

さて、方法論を学んだ後はいよいよ実戦訓練を積んで「入試の制限時間内に正確に論理を辿り、解答を書ける」という状態に持っていくわけだが、数学などと違って大量の問題をこなさなければならないわけではないので

解く問題を厳選する

ことが重要である。

もし解いても解いても現代文が伸びない場合、それはまだ現代文そのものについての勘違いや理解不足があるか、さもなくば問題自体が欠陥品ということである。特に予備校の質の低い問題は、いくらやっても無駄と思えるものばかりである(→「現代文の模試はなぜ役に立たないのか」)。

現代文というのは「曖昧」になりやすい科目である分、作成側にかなりの注意が必要とされるので、下手に濫造された問題に手を出すのは逆効果の恐れさえある。

最も優れた現代文の問題というのは

センター国語と志望校の過去問

これしかない。この2種類を味わうようにじっくりこなすことだけを考えればいい。

なぜセンター国語と志望校の過去問が優れているのか

まずセンター国語は、50万人もの受験生が受けるために1年かけて、厳選された教員によって作成され、解答も公表されるために非常に厳密に、スキなく作り込まれる。少しでも正解がブレそうな問題を作ると全国の学校・予備校から叩かれまくるので、この点は親の命がかかっているかと思うほど真剣に作り込む。

そのためおかしな問題が紛れているマーク模試などと違い、解答を読んでも理由が十分納得できるから、変な問題に変な解説を読まされて現代文の勉強がブレる危険性がない。センター国語は「問題の作り方が満点」なのである(ただし追試は年によっては難しすぎ、大人でも読解自体苦戦するような難文が出てくるので、基本的にやらなくていい)。

センター国語はマーク式であるために、完全な形の解答が示されるのも大きい。実はセンターの問題は記述式の練習に使うこともでき、特に東大と問題傾向が似ているので、東大受験生には「センターを記述で解く」は有名な勉強方法である。

このように「模範的な現代文問題」を提供するセンター国語は、制限時間がたまに異常に厳しいことを除けば完璧な問題なので、センター過去問は最高の問題集となる。現代文の演習を行いたい人は、センターの問題をなるべく多く解くと良い。なお難易度は、2009年以前のものは最近より低めであり、古いものほど簡単な傾向がある。

次に志望校の過去問だが、これは言うまでもなく、自分が最終的に馴染むべき現代文の難易度や分量を完全に体現した「ホンモノ」なので、入試本番までにできるだけ多く解くことが推奨される。そして問題を解くだけでなく、問い方の傾向なども徹底的に分析し、対策を立てるべきである(→「志望校の過去問は『問題集』として早めに解く」)。過去問は現在売られている赤本だけでなく、Amazonの中古本なども利用して、できる限り集めよう。

志望校過去問の欠点は、解答を公表していない大学が多い点である。そのため赤本などの解答を頼りにすることになるが、解答自体は各予備校が毎年速報を出しているので、東進や河合塾などの過去問データベースを利用して複数の解答を手に入れることができるので、比較して信頼できるものを参照すると良い。

他におすすめの問題は、手前味噌(?)ながら東大の過去問。先述したように、東大の問題はセンター国語に性質が似通っており、講師たちの評価も高い。基本的に「少し難易度の高い本文を使った記述式のセンター国語問題」のようなものなので、センターの延長で解くことができる。また東大だけに、赤本だけでなく様々な場所で過去問が解説されているのも利点の1つ。

問いの意味と解答の方向性を徹底的に研究する

これは上記の「センター・志望校の過去問をこなす」中で同時に行っていくべきことだが、大学によって問いの出し方に特徴があるので「志望校ではどういう形で問題が問われ、それに対してどういうアプローチで解答をするのか」を、入試前に徹底的に研究することが重要である。

具体的に書こう。例えば私の受けた東京大学では、現代文の問題は傍線部について基本的に「どういうことか」「なぜか」の2種類しか問われない。若干のバリエーションはあるが、概ねこの2パターンであり、それに対する対策は以下のようになる。

  • 「どういうことか」を問われたら、傍線部を含む一文全体の主語や、指示後の対象を全て洗い出し、傍線部を分かりやすい本文中の他の表現で置き換え、最後に「~ということ」で締める
  • 「なぜか」を問われたら、上記と同じ手順を踏みつつ、筆者の「なぜなら」などの論理記号に注目しつつ、理由となる箇所を抜粋して説明し「~だから」で締める

細かいことを述べるともっと沢山あるのだが、大体こんなところである。

「問いの意味と解答の方向性の研究」とは、このように

問題のパターンを分析した上で、それぞれのパターンに対して解答作成までの手順をあらかじめ決めておく

ことを意味する。ここでは「パターンを分析し」「手順をあらかじめ決めておく」が急所。こうすることで、入試本番でも過去問演習の手順を再現しながら、自信を持って解答を書くことができる。

問いの意味を理解する、というのは、このサイトで繰り返し述べている「出題者の意図を読み取る」ことと同じ(→「作問意図を考えることこそ入試の極意」)。出題者はなぜ「どういうことか」と聞いているのか。「どういうことか」とはどういうことか。「なぜか」はなぜか。こういったことを漠然と受け止めず、細部まで突き詰めると「書くべきことを書かなくて失点」という事態が減るだろう。

評論用語や漢字などの知識面の穴をつぶす

現代文の勉強として、最も確実な部分である。これらは世界史や英単語と同じように、知識を増やすだけで現代文の得点向上につながるので、現代文の点数を上げたい学生は、闇雲な演習よりむしろ知識面を補充した方が良い。

特に漢字は無駄にならない。面倒と感じる人もいるかもしれないが、漢字での失点をなくすだけで現代文の平均点は確実に向上するし、記述式の解答が必要なあらゆる試験へもプラスの効果をもたらす(「漢字知らないから書けない」はバカにできない。平仮名で書くこともできるが……)。

漢字については本当に何でもいいので、志望校のレベルにあった漢字の問題集を一冊仕上げればいい。私は『銀の漢字 必須編』だけこなした(『金の漢字』は難しい漢字を問わない大学には不要)。ついでに四字熟語なども対策できるだろう。

他にも有名どころだと『入試漢字マスター1800+』『大学入試受かる漢字・用語パピルス1467』などがあるが、結局漢字はどれも同じなので、時間がかかり過ぎない適度なものを選べば最終的に差は出ない。

それと評論用語についてもサボらずやっておきたい。大学入試の現代文は、センターレベルであっても高校生が読むには難しい言葉が頻繁に出てくるので、かなりの読書家でなければ用語対策が不要ということはないと思う。特に「自律」や「両義的」など、なんとなくの理解だと誤解しそうな用語は多いので、これも一冊の単語集をしっかりこなすことが重要である。

一番のおすすめは河合塾から出ている『ことばはちからダ!』である。

この参考書は本当にいい。重要キーワードに絞ってイラストも交え、とにかくわかりやすく、詳しく解説しているので、解説している用語への理解が非常に深まる。この用語をこなせば「意味がよく分からない単語が出てきて読解に失敗した」ということはなくなるはずだ。ここで書かれているより難しい単語には、普通注釈が付くからである。

『ことばはちからダ!』のレベルを超えてさらに用語を網羅したい人には『頻出現代文重要語700』はなかなか便利でオススメだが、これを覚えて入試で役に立ったかは、あまり覚えていない。まあ日本語の語彙力は一生役に立つので勉強して損はないが。

現代文の学習は「やらなすぎず、やり過ぎない」

以上、長々と述べてきたが、現代文の勉強で重要なのは

「やらなすぎず、やり過ぎない」

ことである。これは全ての科目の中で、現代文で最も際立つ。英語や数学をやり過ぎる危険性はあまりないが、現代文はやり過ぎると受験においてトータルでマイナスに働く危険性が高い。何故なら高得点の獲得が結局困難だからである(センター以外)。有名講師の林修など、現代文講師だというのに「現代文に時間をかけるな」と言っているほどである。

現代文学習は、基本的には上記のような学習手順を辿ればいいと思うが、これを全てにおいて残さずこなすのは現役生には大変だろう。そこで理想の勉強法から、残り時間に応じて勉強量を削る、という消極的な学習計画を練らざるを得ない。つまり用語や漢字の学習量を減らす、センターを直前期に10年分だけ解く、などである。

ただこれまで述べてきたことは、全てこなしたとしても、それでも他科目に比べれば勉強時間は多く取られないだろう。現代文は受験において「低得点を取らないこと」を目指す科目なので、致命的な低得点を取らないようなラインまでは学力を向上させておくべきである。

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勉強の面白さを力説し、学びの意義を考え続ける受験コラム

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投稿日時: 2019/04/25 ― 最終更新: 2019/12/06
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