Mark Twain “The Adventures of Tom Sawyer”

私は、全ての科目の中では英語が一番得意になることができた。具体的には勉強開始直後の中学卒業レベルからはじめ、受験後半では東大模試でも最大偏差値70超えを達成し、常に合格を牽引する科目になった。私が大学に合格できたのは、英語で安定した点数を取れたからである。

また入学後に中国語とフランス語をゼロから勉強し、これらも日常会話や小説読解ができるレベルまで伸ばすことで「ゼロから語学を伸ばす方法」を確立することができたので、ここではそのエッセンスも混ぜて解説する(ちなみに大学ではフランス語学フランス文学を専攻している)。

英語力は長文読解で伸びる

私が一貫して行っている語学勉強法の特徴は

  • 長文読解中心主義
  • その他の参考書は「馴らし」にしか使わない

この2つである。この学習方法のメリットとして

  • 長文読解をひたすらこなしているだけでいいのでシンプル
  • 答えもすぐ確認して構わないので疲れない
  • 意味のある文章を読むので眠くならない

といったものが挙げられる。

一般的に受験の英語勉強法というと、英語解釈本や文法学習書などを読み込むことが推奨されているのだが、私は「単語」「文法」「解釈」などの訓練は、基本的に長文を大量に読み込む中で行われるべきだと考えている。何故ならその言語の、発音以外の全ての要素は長文読解の中に出現するからだ。

つまり長文を読むことで、英語の能力が総合的に養成される、という考えである。

そのため文法書や解釈書にかじりついて、それ自体を丸暗記するまでやり込むのではなく、できるだけ早く長文にあたるようにしてから、とにかく量をこなすことを重視した。

英語の勉強サイクルは単純

英語の勉強の基本的なサイクルは以下の通りとなる。

  1. 単語をインプットする
  2. 文法を理解する
  3. 長文を読んで学んだ単語・文法を身体に馴染ませる

これだけでいい。英語だけでなくどの言語でも、あくまでこのシンプルなサイクルが学習の骨格となる。単語や文法理解に不足があったり、追加が必要なら1-3のサイクルを繰り返し、受験に必要な分をインプットした後は基本的に3を続けるだけでいい。

このサイクルを正しく繰り返すと、次第に覚えた単語や文法を高速で、かつ小さな負荷で頭から引き出せるようになり、読解速度と理解力がどんどん向上し、余った時間で問題を解けるようになる。英語は脳を総合的に使った身体運動であり、あえて言えばスポーツに近い。

英語に関しては、巷には様々な勉強方法が氾濫しているが、ああいうのはダイエットや健康法と同じで、商売する側が売るために無数の手法を生み出しているに過ぎない。しかし惑わされてはいけない。いつの時代も、英語を伸ばす基本的な勉強方法は、上記の1-3の王道サイクルである。

独学で問題ないか?

発音と会話以外に関しては独学で全く問題ない。

私は受験時代は完全な独学だったが、英語力は普通に伸びた。むしろ、やる気がある人なら下手に教室に通うより、自分でひたすら長文読解や音読、リスニングを繰り返すほうが効率が良いだろう。

単語や文法を暗記してから、長文で脳に「浸透」させる

ここで重要な考え方は以下である。

  • 単語や文法は、参考書で「覚えた」だけだと実戦レベルにならない
  • 覚えた単語は文章の中で実際に使われる形で触れると、急激に定着する
  • 様々な長文を繰り返し読むことで、基本的な単語を当たり前のように理解できるようになると、英語が一気に読めるようになる

あなたが英語の長文を読むとき、覚えたばかりの単語というのは一々「つっかえて」思い出しながらでないと読むことができない。これだと速度が出ないし、つっかえている間に文全体の意味がボヤけてしまうので理解しにくくなる。すると試験では時間が足りず、解釈も間違えてゲームオーバー、ということになる。

そこで一度覚えた単語でも、何度も何度も長文の中で出くわしていると、次第に理解速度が日本語の「理解」とか「勉強」といった単語を解釈するスピードに近づいてくる。私はこのように、単語や文法が脳に染み込み馴染むことを「浸透」と呼んでいる。

最終的に文章中の95%を構成する「受験の基本単語」について「浸透」させておけば、スラスラ疲れずに読むことができ、センター英語も時間を余らせて9割超えできる(→「英語が上達する基本的な原理」)。

単語学習と長文読解を分けて考えている人がいる。しかし長文読解という行為は、暗記した単語や文法を実際に使えるか試す演習行為ではない。むしろ長文読解こそが学習の本番で、読解を通じて暗記した単語や文法を脳に「浸透」させるのである。

単語暗記は未完成のまま長文読解に移る

したがって、単語帳や文法書を何十回も徹底的に反復して「完成」させることを目指す学習を、私は推奨しない。何故なら、語学において「単語だけ」「文法だけ」を先に「完成」させることは不可能だからだ。

単語帳だけで覚えた単語というのは融通が利かず、文章の中で色々な意味に使われる単語の七変化に追従することが難しく、またいざ実際に文章で出てくると、ちょっと驚いて「あっ、この単語はあそこで覚えた……」となり、速度が不足する。

単語帳をボロボロになるまで繰り返し使い続ける人は多い。私も昔、そのようにして単語を記憶したことがあったが、単語帳は繰り返しすぎても「単語よりも単語帳そのものを覚えている」ような状態になり、実は単語そのものの理解や記憶は大して深まってなかった……ということになりがちである。

そこで私おすすめの学習方法は「単語帳そのものを仕上げることに価値を置かない」である。単語帳は完璧にしようとせず(そもそも無理だから)、日を空けながら何周かして「大体覚えた」程度の状態にする。目安としては「見てもまだ思い出すのに時間がかかる」くらいで、50-70%の暗記度。文法はすぐ出てこなくても「理解」できていればOK。

そして

覚えた単語や文法を完全に忘れないうちに、すぐ自分が覚えたような単語が出てくる長文読解に移る。そして読解の中で単語や文法を仕上げる

のである。

以上のような学習方法では、長文で単語/熟語を学習できるようデザインされた『速読英単語/熟語』のような参考書は理想のテキストとなる。

単語を軽く覚える際の注意点

英単語の暗記は、今書いたように単語帳だけで完璧にしなくていいのだが、その際にも「なんの工夫もない丸暗記」は避けるべきである。接頭辞や語源に注意して学習すると、暗記効率が大きく向上するからだ(→「英単語の効率的な覚え方」)。

ハッキリ言ってこれを実行するだけで、単語の暗記・維持にかかる労力は半分くらいになる。その上でさらに「単語帳だけで完璧にしない」ことで学習を省略すると、単語のガチ暗記に比べて単語帳とニラめっこする時間を大幅に短縮できる。

長文読解は、慣れないうちは和訳から先に読む

単語と文法をほどほどの完成度でさらったら、すぐに長文読解を始める。

このときも、英語を読むのがまだまだ大変な場合、先に長文の和訳を読んでから英文を読み、読解中に解釈に困っても、すぐまた和訳を見てしまって構わない。

なぜなら、繰り返すが、長文を読むのは「実力試し」でも「演習」でもなく、「長文読解を通じて単語や文法を浸透させるため」だからである。「実際の文章の形式で覚えたことに触れるため」だからである。従って設問がある場合も無視して構わない。

英語が苦手な人は、長文読解はクタクタに疲れるから嫌だと考えているだろう。しかし私は英語がまだまだ不得意な時期、いきなり英文解釈をするということは一切しなかった。とにかくいきなり和訳を見て、内容を頭に入れてから英語を読んだ。結局、最終的にその文章中の単語や構造を全て覚えてしまえばいいのだから、最初に答えを見ても同じである。

なお当然のことながら、長文読解を通じて文法や解釈の訓練を行うため、和訳を読みつつも、なぜそうなるのかはちゃんと理解しよう。そして英文を読み返すたびに「ここはこの構文で、こういう構造になっているんだな」と、頭の中で意識し、反復することで今後、同じ構文などが出たときに素早く解釈できるようにするのである。

英語上達に必要なのは質か量か?

最終的に英語が得意になるには「質」と「量」の両方が必要になる。具体的な勉強法で言うと、「精読」と「多読」の両方をこなす必要がある。

なぜなら「精読」をこなさなければ、いつまでも曖昧なフィーリング読解になるため、誤った解釈を続けてしまい、しかし一方で「多読」をしなければ、文章を素早く正確に読みこなし、かつ広い範囲の単語について十分に浸透した状態にはなれないからだ。

しかしどちらが先に必要かと言えば、それは「精読」の方である。

言うまでもなく、精読訓練なしに多読を重ねても誤った曖昧な解釈を続けるだけであり、下手なクセがつく原因ともなりかねない。よって日本の英語教育でも、授業などではひたすら「精読」の訓練を行ってきた。

ところが受験英語では、最終的に「とにかく速く読め!」ということを要求してくる。そのため学校の定期試験などとは比較にならないほどの量の長文が出てくる。速く、そして正確に読むことを求められるのが受験英語である。

よってここではあえて「本番前に、どこかで多読訓練する時期を挟むべし」ということを強調しておきたい。

多読学習のやり方

ここでいう「多読訓練」とは「自分の読解レベルより少し低いレベルの文章」を「辞書を引かず、繰り返しもせずにどんどん読む」ことである。多読は、受験英語で最も重要である「浸透」に特化した訓練であり、最終的に他の受験生と差がつくのは、多読でどれだけ文章を読んだかである。

多読テキストの目安は「辞書を引かなくても文章をスラスラ読める」こと。「こんなの楽勝過ぎる」くらいのテキストがちょうどいい。知らない単語は意味を推測するか、無視する。全然分からない文は読み飛ばす。和訳があっても、ちゃんと読めたのなら細かく確認しなくていい。

またマジメな学生ほど「読んだ文章は繰り返さなくっちゃ」と思うかもしれないが、それだと「多読」できない。多読の目的が、あくまで新しい文章の数をこなすことであるのを忘れてはならない。繰り返すと半分しか「多読」できないので、ここはグッと衝動を抑えて読み捨てるべきである。どうしても気持ち悪いなら、音読一回。これくらいで我慢しよう。

基本的に、復習するだけの時間と根性は精読用のテキストに回すべきだ。多読テキストは、あくまで多読用であり、一夜の友であり、「残念だけど、あなたとは一度限りなのよね」という関係でなければならない。

私は最終的に他の受験生を突き放すカギは多読だと思っている。

精読によって正確な知識を蓄えるのは「受験の当然」であって、不可欠なものであり、その後に多読によってどれだけ加速したかで差がつくのである。

英語が抜群に得意という人間は、必ずかなりの量の読書をこなしているし、ネイティブのずば抜けた英語力も結局、子供のときから大量の文字を読んでいるからである。

最終的に理想の多読教材は児童向けの洋書となるだろうが、児童向けであっても受験生レベルでは上級者向けとなることに注意したい(→「受験英語での洋書の読み込みは有効か?」)。

英語学習のエッセンス

以上の学習サイクルを再度まとめると以下の通り。

  1. 単語や文法を50-70%くらいの完成度でインプットする
  2. 長文精読を繰り返すことで、学んだ事柄を「正確に」浸透させる
  3. 多読を行うことで浸透速度を「加速」させる

これを行いながら、さらなる単語や文法のインプットが必要なら「1」に戻り、そうでなければ「2」と「3」を繰り返す。学びの進行に応じて、はじめは「2」重視から、次第に「3」へと重心を移す。

誤解のないように書いておくと、文法学習を軽視しているわけではない。文法は語学の骨格である。そのため学習中に理解不足の箇所を発見したら、その度にその文法事項はテキストに戻ってしっかり理解しなければならない。そして長文読解を繰り返して浸透させるのである。

これは英語だけでなく、古文・漢文も含めたあらゆる言語学習に応用可能な学習サイクルである。

精読訓練に最も適したテキストとは

全ての英語テキストの中で、一番重点的に繰り返し精読したいテキスト。それは志望校の過去問以外には存在しない。

なぜなら志望校の過去問は語彙・文法レベル、語数、難易度ともに、もっともあなたの志望校対策に適したものだからだ(志望校の過去問は完全に「志望校レベル」なのだから当然である)。

間に『やっておきたい英語長文』などを挟むのもいいが、試験日までに必ず過去問も繰り返し読んで仕上げられるよう、時間を調整しよう。演習用の過去問というのは古いものか模試過去問を数年分だけ残しておいて、残りの過去問は最高の「教材」として繰り返し読み込み、徹底的に使い倒すべきである(→「志望校の過去問は「問題集」として早めに解く」)。

単語帳や文法書は「導入」「辞書」「確認」の3段活用がおすすめ

私は中級レベル以上を目指す学習において、単語帳や文法解説書を中心に置く学習は推奨しないが、かといって最初の学習が終わったらこれらの参考書を捨てろというわけではない。

これらの参考書は、時期に応じて「導入」「辞書」「確認」の3段活用がおすすめである。

導入

最初の50-70%程度までの学習を行う段階。普通に使う。

辞書

長文読解による浸透を行っているときに覚えたはずの事項に出会い「忘れてしまっていた」「内容があやふやだった」というとき、辞書として単語帳や文法書を「引く」。こうして「あの時覚えたやつだったのか」と思い出し、確認することで記憶を強化する。導入に用いた参考書とは別の辞書型参考書(『Evergreen』や『Forest』)を用いてもいいが、一度使ったやつを復習すると記憶効率が良い。

確認

一度覚えたことを定期的に確認するために活用する。長文の中で浸透させると言っても、長文で完全に網羅できるとは限らないので、中には文章の中で出会えずあやふやになってしまう単語も出てくるし、記憶の強さにもムラが出るだろう。

そこで試験直前などに、全範囲を網羅し直す時間を設けると良い。例えば夏に単語帳を一度「導入」として使ったなら、秋にもう1度、入試前にもう1度全範囲を確認する、といった使い方である。あるいはこれは、電車の中などで常にパラパラ確認することで補ってもいい。

レベル別の勉強方法については「英語勉強法ガイド2【レベル別の参考書や学習方法】」に記した。

本日の「達人の言葉」

外国語の文章を読むときも、ただなんとなく読んではだめで、ほんとうに集中して読む。(中略)集中して読むと、いままでの自分の言い方や書き方とちがうな、もしかするといままでまちがって覚えていたのかなとか、文法のこの部分をずっと誤解していたのかな、と気づく。それを通してあやまりを直したり、出てきた新しい表現を覚えたりすることが大切です。

12ヶ国語を操る数学者、ピーター・フランクル著『ピーター流外国語習得術』p.92より

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勉強の面白さを力説し、学びの意義を考え続ける受験コラム

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投稿日時: 2019/06/21 ― 最終更新: 2019/12/08
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