最近「脳科学的に正しい勉強法」とか「超効率的な勉強法」といった本が書店に常に並んでいるが、ああいうのはある種の「極論」なのである。あるいは「仮説」とか、場合によっては「俗説」と呼んでもいい。

まずそもそも脳や人体自体が大して解明されておらず、根拠に乏しい仮説や、互いに対立する実験結果ばかりが並んでいる現状の科学レベルで「脳科学的に正しい」と主張することに、いかほどの価値や信憑性があるのかが疑問であり、眉唾モノである。

脳科学とか心理学とか健康科学は、商売も絡んで怪しい情報がゴロゴロしており「衝撃!今まで正しいとされた勉強法は逆効果だった!」「いや、実はそれこそが間違いだった!」「実はどっちも間違い!新常識はコレ!」といった驚愕商法、不安商法が蔓延しており、こんなもの一々信じていたら日常生活すらまともに送れまい。

また仮にそれらの仮説により「脳科学的に正しい」方法の有効性が実証されたとしても、その方法論が実際にそれを実践する人にとって「正しく」て「効果的」である保証はない。

朝日が嫌いな人間に「朝活」は非効率

例えば活動時間。

当然「脳科学的に正しい」人間活動とは、朝6時に起床し、朝日を見ながら腰に手を当てて搾りたての野菜ジュースを飲み、納豆と魚を食べてから勉強を開始し、夜10時には就寝することを指すのである。なんと、模範的な人間活動!なお主張者によってはここに「バナナを食え」とか「ジョギングしろ」とか「朝日を全身に浴びてビタミンDを生成しろ」とか色々とくっつく。

「脳科学的」に言えば、このような人間は頭がぐんぐん巡り、集中力が増し、記憶力が増大するのである。人類の上位2%を争うような難関大学に合格する人物は、そのような規則正しい生活を送った人間であるはずだ。逆に夜に起きて活動するなんていう「非脳科学的」な活動を行う野蛮人は、体調不良になり、脳が回らず、難関大学にも不合格となる道理である。

が、私は元来「朝日が大嫌い。日差しに当たると気が滅入る。あと活動音全般が不快」というヴァンパイア型人間で、365日遮光カーテンを引きっぱなしという生活なので、夜の方が昼よりずっと集中して勉強できた。生活が不規則なので朝型でいる時期も割とあったが、全体としては夜型生活であった。

こういう人間なので「受験生たるもの、規則正しく生活せよ!」「夜型は勉強効率が落ちて失敗する!」といった小うるさい俗説は無視し続け、脳科学に逆らい続けた末、見事大学に合格したのである。

夜型ながら私はこれまでずっと健康で、病気は滅多になく、静寂の世界では雑念なく勉強に没頭でき、実に学習がはかどった。あと私は朝型に戻したいときは、24時間以上起きていることでいつでもサイクルを調整できたので、試験前日もぐっすり眠って臨めた。

人間は独自のクセと思い込みのカタマリ

そもそも人間なんて生き物は、18歳になる頃には様々な個人的な思い込み、思想、習慣、後天的に形成された癖といったものによって「固有化」した存在になっているので、こういう「脳科学的に正しいはずの一般論」というのがどこまで適用できるか疑問である(だって各個体がユニークなんだから)。

まあそれでも「記憶は時間を空けながら復習することで定着する」といった説は、ほとんど万人に適用できるかもしれない。睡眠不足だと記憶力が低下するなど、万人の経験からほぼ真理だと言える脳科学も存在するだろう。

が、そんな中でも「いや、オレは時間を空けて勉強するのは、どーーしても苦手だ!復習がイヤになり、勉強自体やめてしまう。でもその場で16時間勉強することならできるし、これなら結構覚えられる!」というような「クセ」を形成した人もいるかもしれない。

そういう人は、普通の人間が4時間ずつの勉強時間に分割して4日間かけて記憶するのに対し、その場で16時間かけて記憶しても全然構わないと思う。最終的に「その人に合っているか。長期的に見て、勉強がはかどるか」が重要である。

「勉強方法は人それぞれであり「xxしなければ絶対ダメ」はない」でも書いたが、人間というのはそれぞれに適正や向き不向きがあるので、他人の考えた一般論に振り回されることはない。

実際、私は偉人伝の類が結構好きだが、とんでもない実績を遺している人間ほど、その方式が「科学」とか「効率」といったものを超越した固有のものになっていることが多く「そんな方法で上手くいったの?」と思えることが多い。

結局、人間なんてものは本当にやる気になれば何だってできるのだがから、やる気を起こすことが最も優先されるのである。そのために「科学的に誤った」勉強方法を取っていても、そんなことで生じるマイナスは十分打ち消せるのである。

勉強方法で重要なのは「自分はこのやり方でいいんだ!」と確信できることだ。

最低限の勉強の質を確保できており、正しい方向性で勉強自体を行っていれば、最終的にはどのような大学にもたどり着けるだろう。

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勉強の面白さを力説し、学びの意義を考え続ける受験コラム

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投稿日時: 2019/07/18 ― 最終更新: 2019/11/26
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