「受験勉強の急所」で述べたように、受験勉強には「基礎」という「急所」が存在する。この「急所」というものが何かを言語化すると「それを学ぶことで様々なことに普遍的に応用できる、学習の肝心要」ということになる。

「急所」を1学ぶと、10の問題にその考え方を適用できる。
「急所」を100時間学ぶと、その科目の様々な試験において平均点が10点伸びる。

こういったその科目の中枢こそが「急所」であり、逆に「急所」から外れた細かい知識というものは、その知識が直接問われたときにしか使えないようなものなので、実に応用の利かない知識となっている。

こういう急所外の知識というものは、いくら学んでもキリがない。急所外の知識は1,000時間かけても網羅できず、こういう知識をどれだけ詰め込むかが受験勉強と勘違いしてしまった人が「勉強時間と知識量はずば抜けているが、入試では点が取れない人」となってしまう。奇問は解けるが標準問題は満足に解けなくなってしまう。

急所外の些末な知識への執着は、典型的な受験勉強失敗ルートである。

では実際にはどのような部分が急所となるのか。

英語の急所「基本的な多義語」

例えば英語では、意味が複数ある基本単語というのが急所の1つ。

“have”とか”take”とか、こういった単語は1つの長文の中に必ず何度も出てくる。同時に多義的な語であり、辞書を引くとかなりの数の意味が出てきてウンザリするが、意味のリストに惑わされず中心的なイメージを思い浮かべると、実は細かい意味を一々覚えなくとも良いことが分かる。

例えば”have”の中心イメージの一つは「手近に備わっている」というようなものである。

だから自分に対して使えば「持っている/(頭痛が)する(=あるもの/状態が私に備わっている)」という意味になるし、他人に対して使えば「何かをさせる(=対象をある状態に備える)」という使役の意味に変わり、また過去分詞と組み合わせることで「(動詞の内容が)今ちょうど起きた、していた、したことがある(=その状態がそこに備わっていた)」という日本語訳になる。

このhaveの意味を律儀に辞書から全覚えしようとすると、50以上の事柄や例外を記憶しなければならないが、中心的イメージを軸にして訳のパターンを覚えれば、受験的には4つくらいの記憶要素で超頻出単語haveを制覇できる。

さらに言えばtakeやgiveの中心的意味は、このhaveとちょうど対になっていたり補完する関係であるため、haveのイメージを軸にするとgiveやtakeも“ついでに”制覇できる。

このように「急所のそのまた急所」へと核心を深めていくと、実はかなり少ない記憶要素で受験の50や100の事柄に対応できることが分かる。

一方、例えばjurisdictionのような上級単語を頑張って記憶しても、その単語が出てくるのは難関大学の長文を10回読んで、1回出てくればマシ、というレベルである。こういったものを頑張って記憶してもキリがない。

haveやtakeといった急所単語の意味を的確に捉える者は、10や20の記憶要素で100の事柄に対応し、毎回の試験でその知識を役立てられるが、急所外の知識を溜め込んでも100覚えてようやく100の事柄に対応でき、しかもそれが次の試験で役立つとは限らないのだ。

このような学習を膨大な量、積み重ねた果てでは、彼と私の間には、いかんともし難い絶対的な差が広がっているだろう。

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投稿日時: 2019/06/18 ― 最終更新: 2019/11/28
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