数学の進度が「単純な因数分解はできるが、二次関数とかは忘れた」程度の中学生レベルから、独学で東大文系数学を4問中3問解けるようになった勉強方法を紹介する。

あくまで文系数学中心の見方になることをお断りしておくが、理系についても、少なくともIIBまでの範囲については同じと思う。私は直前期には理系東大数学の過去問も解ける範囲のものは解いていたが、同一範囲であれば理系と文系の数学に根本部分で違いがあるわけではない。

さて、実は数学は勉強の見取り図自体は極めてシンプルな科目

  1. 教科書の考え方や定理を理解する
  2. 基礎問題の解法を身につける
  3. 標準問題の解法を身につける
  4. 発展問題の解法を身につける

これだけで発展問題(大学への数学基準でC難度)まで対応できるが、合格点を取るために、基本的には「3」で十分と思われる。特に文系は最難関レベルであっても、3の「標準問題の解法を身につける」までで合格点は取れる。

難関大学で他の受験生に差をつけ、難しめの問題がきても得点源になる科目にしたい、という場合のみ「4」まで進むといい。私は東大で頻出の確率・整数の範囲のみ「4」に押し上げた。

数学の受験勉強では、現在の実力と志望校難度の把握が急所

この時重要になるのは

  • 自分が今、どのレベルの問題を解いているのか
  • 志望大学の数学で合格点を取るには、どこまで学習すればいいのか

これらを正確に把握することである。つまり大学受験数学という直線に近い進路の中で、ゴールがどこにあり、自分は今どこにいるのか、ということを間違えないことである。数学は「戦略」と「費やす時間」により、かなりの部分が決まる(→「数学が難しい理由は「質」よりも、学習量の「膨大さ」にある」)。

逆に私も受験時代、少しやってしまったのだが、ありがちな間違いは

  • 自分が身につけている問題レベルを勘違いする
  • 基礎問題だけ仕上げて標準問題に立ち向かう
  • 焦ってどんどん先の問題レベルに進もうとする
  • 発展問題の解法を身につけることが受験数学だと思いこむ

こういったものである(→「数学問題は基礎の組み合わせで解ける、に対する誤解」)。

数学ではステップアップを焦らないのが肝要

試験本番というのは緊張感が強く、時間制限も厳しいので思った以上に時間が足りなく感じられ、普段から解き慣れていないレベルの問題を解くのは困難である。そのため標準問題を解くことが求められる大学では、標準問題の典型解法を丁寧にマスターした上で、過去問を中心にそのレベルの問題を解くことにも慣れておかねばならない。

数学の勉強は覚える事柄が多く、時間がかかるので、時間の足りない現役生などはとにかく早く次のレベルに進みたいと考えるかもしれないが、十分に今のレベルの解法を理解していない状態でステップアップしても、その次のレベルというのは直前レベルまでのマスターを前提としているため、単に使いこなせない解法が溜まるだけだということを肝に銘じて欲しい。そのため問題集というのは

とにかく丁寧に、しつこくそれぞれのステップをこなす。自分が使っている問題集について「どの問題も見た瞬間に解法が浮かび、なぜその解法を用いるのか説明できる」というレベルまでやり込むべきである。

以上のことを理解した上で「自分はどのレベルまでやり込むか」を設定して欲しい。

1.教科書の考え方や定理を理解する

教科書に書いてあるような基本的な考え方や公式、定理などを素直に理解する段階。教科書レベルの例題も解き、覚えたことがちゃんと使えるかどうか確認する。

この段階は、以降のレベルに比べれば覚えること自体は少なく、それほど時間を取られないが、同時にこれから何度も帰ってくることになる段階でもある。

どういうことか。これ以降、基礎問題や標準問題の解法を身につける中で「なぜそうなるのか分からない」「どういう理屈か理解できない」という場面は山ほど出てくるはずである。そうなったときに、毎回教科書レベルまで立ち返って、基本的な原理について確認する必要があるのだ

こういう教科書レベルの部分を曖昧なままにし、解法の表面的な暗記だけで無理やり進めようとすると、後で必ず伸び悩むことになる。教科書に書かれていることは、教科書例題を解くだけなら簡単に見えても、その奥にあることはかなり深い。

例えば1999年の東大数学で、文理共通で三角関数の基礎を問う問題が出たが、あれすらも本番ではかなりの受験生が苦戦したという。それ以降、難関大学で基本的な定義を問うたり、公式の証明を要求する問題が結構流行ったが、これらの問題の正答率は決して高くないとのことだ。

例えば「微分というのは、xの上に乗っている数字を前に持ってきてかけ算することだ」というような「理解」。これが典型的な「表面的な理解」である。そうではなくて、微分とはなにか、なぜ微分と積分が表裏の関係になるか、といった、より根本に近いところまで理解しようと努めるが、数学の実力向上に必要な理解の深め方である。

これ以降の学習で理解不足に気付くたびに、必ず教科書レベルまで立ち返って理解を深め直し、先へ進まなければならない。まとめると

数学では常に、教科書まで立ち返ることを躊躇ってはいけない

ということである。

なお教科書はかなり薄く、独学ではより突っ込んだ部分までは見えにくいが、そういった部分を自分で学ぶには長岡亮介著『総合的研究』(旧『本質の研究』)シリーズのような詳しい本を参考書に用いるのがおすすめ。私はもっぱらこのシリーズを参照していた。独学の強い友である。

他には当たり前のように使っている公式の証明過程を改めて学び直すのも良い勉強になる。難関大であっても、いきなり公式の証明それ自体が問題として出るケースもある。

このパートの急所

  • 常に教科書に立ち返ること
  • 定義や定理の理解をごまかさない

2.数学の基礎問題の解法を身につける

基礎問題というのは、『4STEP』のような教科書傍用問題集や、『チェックアンドリピート』『入試数学の基礎徹底』のような易しめの問題集に載っている問題、あるいはチャート式の星1-2の簡単な部類に入る問題のことである。これらの問題は「教科書に書かれていることそのまま~それよりやや難しい」程度の、比較的短く単純な問題である。

この段階では、これらの問題が網羅された問題集を1種類だけ選び

問題を見た瞬間に解法がパッと浮かぶ

というレベルになるまで反復する必要がある。「1種類だけ」と「見た瞬間に」が、ここの急所。

ただし基礎問題とは言え、教科書を読んだだけのレベルでは初見では解くのが難しい問題も多く、ここでいきなり「数学は自分で考えて解かねばならない」と、ウンウン唸って長時間かけてしまう人も多いだろう。

しかし基礎問題というのは、あくまで教科書レベルの知識がどういう風に問題に適用されるかの実例であったり、計算の決まりごとでしかなかったりするので、この段階は実は暗記の比重が大きい。また数学における「考える」という行為は、基礎問題レベルを当然の道具として使えるようになった後、それらをどう適用するかを「考える」ものである。

そのためこの段階では

「解く」のではなく、問題と解答を「読んで」どんどん解き方を頭に入れる

というやり方の方が圧倒的に効率が良い。

実際、私はこの段階では「自力で解く」「書く」といったことを、そこまでしなかった。まずは世界史の一問一答と同じ感覚で、読書感覚で「フムフム」と問題と解答を交互に見て、「解法が瞬時に浮かばなかった」問題に印をつけながら、単元ごとに問題を瞬殺できるようになるまで何往復もした。

このように何度も間違えた問題はその度にチェックを増やし、間違えやすい問題をあぶり出すことが重要である。

問題の解法が出てくるかチェックするときは、思い込みや抜けを確認するために、「まず“点と直線の距離の公式”を使う。次に……」とか「反復試行の確率の問題。このときの注意点は……」といった風に、実際に解法や手順を言葉に出すのが理想だが、なかなか疲れるので、頭の中で独り言として述べても構わない。

こうして「見る」「解法をパッと述べる」「できなければ解説を読む」の手順をテキパキこなしていく。

最終的に一度は各問題をちゃんと解けるか、実際に解いてチェックするべきだと思う。また「なぜそうなるのか」といったことに関しては、この段階から十分に意識的でないといけない。そうでなければ結局、標準問題を解く際に意味が分からなかったり、式変形の過程が理解できなくなる。既に述べた通り、ここで曖昧な点が出てきたら、見栄をはらずに教科書へ何度でも立ち返るようにしたい。

標準問題と違い、このレベルの問題は数種類の問題集をこなす必要はない。何故なら基礎問題は、家や家具を組み立てるための工具のような「道具」だからである(とは言え、大学によってはこのレベルの問題も直接出題される)。

家や家具は無数のバリエーションがあるので、様々な形に対応するために複数の問題集をこなすことに意味があるが、基礎的な道具である基礎問題は単純なゆえにバリエーションが決まっていて、1種類を網羅的にこなすだけで十分である。その代わり、徹底的にこなす必要はある。目安は5周以上(ただし1周に時間をかけ過ぎないように)。

センターのみでしか数学を解かない場合、このレベルの解法理解であってもかなり解くことができるようになり、あとは速度と試験慣れが重要となるので、基礎レベルを終えてからセンター過去問にも当たるようにすると良い。

このパートの急所

  • 基礎問題集は網羅型を1冊だけ選ぶ
  • 基礎問題を見た瞬間に瞬殺できる状態にする
  • 問題は、解けないうちほどすぐ解答を読む

3.数学の標準問題の解法を身につける

受験数学において、最も差のつきやすいレベルである。

標準問題とは『青チャート』の星3以上の問題や、『一対一対応の演習』『フォーカスゴールド』『標準問題精講』などの問題集に掲載されている問題を指し、「標準」と呼ばれるものの、これを解ければ難関大学にも普通に受かるレベル。

基礎問題については問題自体がまだ複雑ではないので(とは言え、初学者には十分に難しい)、多少雑な理解や解法暗記でも「類題を瞬殺できる」という段階に達することができる。

しかし標準問題レベルとなると「教科書的な定義や原理を疎かにした理解」「解法の表面的な暗記」などでは応用が利かなくなる。

そのため「標準問題をこなしたのに問題を解けない人」とそうでない人というのが分かれる。これがあるために「数学は才能だ」と言われたりする。しかし「才能」という言葉に逃げてはいけない。このレベルの問題は、まだ十分に基礎的なことを理解することで、無理なく同レベルの問題に応用することが可能となる。

さて、ここからはよほど面倒くさいだけの計算を除き、基本的には問題を実際に解き、書くことを中心とすべきである。これにより論述の答案作成能力も鍛えられる。ただし、既に理解済みの解法を復習したり、解法が思い浮かぶかの量重視の演習をこなす場合は「書かずに解法だけ思い浮かべる」のが有効なので、並行して行うと良い。

またどの問題も、基礎レベルを終えただけの段階では自力では全然解けなくて当たり前なので

「例題は分からなそうなら無理せず解法を見て、演習題に自力で適用してみる」

という勉強方法がおすすめである。

そして重要なのは

解き方を「一般化」して考える

これが急所。例えば確率の問題であれば、わけのわからない問題が出てきて「これは実験をしてみると法則が見える」と解説されていて「そんなこと考えもしなかった」と思ったとしよう。

このとき、解法を一般化するとは「確率で全く知らない設定が出てきたら、まず実験して法則を探れ」という風にするのが「一般化」。つまりその問題だけの解法ではなく、広く一般の問題に適用できるように覚える、ということ。「逆像法(逆手流)で解け」という解説があったら「正面から求めるのが難しい問題は、答えの条件から逆算せよ」というように一般化する。

これをもっと砕けた表現に直すと

解法は必ず「格言化」してエッセンスを抜き出せ

ということである。格言は自分なりに考えていいし、自分の数学格言集を集めたノートを作ってもいいだろう。

この「一般化」「格言化」こそが、標準問題レベルを解ける人と解けない人を決定的に分ける。解法をほとんどそのまま覚えれば良かった基礎問題の延長で学習しても、標準問題は解けるようにならないのである。私が『一対一対応の演習』や『ハッと目覚める確率』を推奨しているのも、解法をしっかり格言にして説明しているからである。

私もこの段階では最も苦労したし、長い時間がかかった。基礎問題を終えただけだったので、一周目はほとんどの例題を自力で解くことができず、また解答解説の理解それ自体にも時間がかかった。「数学読解力」が低かったためである。

しかしこのレベルの問題集をきちんとマスターできれば、国公立大の標準的な問題に解法を適用して解けるようになる。この状態で演習を積むと、どんどん「自力で解ける標準レベルの過去問」が増えていくだろう。

逆にもし『青チャート』『一対一対応の演習』『フォーカスゴールド』『標準問題精講』などを1種類こなしたのに、標準問題レベルの大学の過去問などが思うように解けない場合、理解が不十分であることを疑うべきである。

私は演習として同レベルの『新数学スタンダード演習』を解くときに、まだ理解が不十分であることに気付いたので、一度終えたと思っていた『一対一対応の演習』を再び引っ張り出して、全範囲全問題を徹底的に復習し直した。

それこそ「もう分かっているだろ」と思うような問題でも改めて理解を問い直すことで、この範囲に一切の憂いを残さないようにした。こうした後、過去問に普通に立ち向かえるようになったし、東大模試でも他の受験生に差をつけられるようになった。

既に述べたように、ほとんどの受験生にとってはこのレベルの解法を十分に身につけることが数学勉強の1つの完成となり、後は過去問を徹底演習・研究しながら志望校対策に特化した対策を行いつつ、時間の許す限り『新数学スタンダード演習』『文系(理系)数学の良問プラチカ』などで演習も行うとよい。

このパートの急所

  • 標準問題は解法を「一般化」しなければ身につかない
  • 「一般化」した解法を演習によって使えるようにする

4.数学の発展問題の解法を身につける

この分類は標準レベルほどしっかり確立されているわけではないので、どこからが発展問題なのか、というのは人によって判断が分かれる。『大学への数学』基準で言うとC難度の問題がそれである。

私はこのレベルに関しては不完全にしかこなしてないので、あまり多くを語れないが、基本的には『新数学演習』のような発展レベルのものを集めた難系問題集にひたすら当たりながら、標準問題レベルの知識をさらに応用できるようにしていくことになるだろう。

私自身の勉強について話すと、東大数学では確率と数学が頻出の上に難度が高くなりやすく、差のつけどころとなっていたので、これらの単元のみ、発展問題に手を出した。

具体的には『新数学演習』の確率・整数部分のみこなしたり、東大理系過去問を解いたり、『マスター・オブ・整数』『解法の探求・確率』『ハッと目覚める確率』など、各単元専用の突っ込んだ問題集でさらに理解や網羅性を高めたのである。これらの甲斐あって、本番では確率と整数の問題を難なく確実に抑えることができ、報われたと感じている(それでも『マスター・オブ・整数』はちょっとやり過ぎだった。まあ趣味みたいなものなので)。

このレベルの問題に日常的に触れるようにしていると、標準問題レベルへの理解もさらに深まり、本番でも余裕を持って素早く解くことが可能となるので、時間的余裕がある人は是非挑戦してみると良い。

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勉強の面白さを力説し、学びの意義を考え続ける受験コラム

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投稿日時: 2019/08/11 ― 最終更新: 2019/12/08
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