アンリ・ルソー”The Virgin Forest”

「模試はしょせん模試」「模試は本番とは違う」といった批判をよく耳にする。実際、私は「本番に形式・レベルが似ている模試は、受けられる範囲で受けた方がいい」と主張しているものの、模試を解く度にどこかで「あぁ、こういう偏った問題は本番じゃ出ないよなぁ」と冷めている瞬間がある。

模試は便利なサービスではあるが、やはり限界が多く、様々な欠点を持つ。ここでは模試の限界について語りたい。

模試は本番より難しく、点数が下がる

模試の完成度というのは、有名大学の冠模試であっても、せいぜい80%くらいに達していれば上出来である。

模試は年に何度も開催されるため、問題を何度も新しく作る必要があり、まずこの時点で1年間かけて、複数の作問者間で協議しながらじっくり作っていくセンター試験本番や大学の二次試験と条件が大きく異なる。

また模試は、あくまで予備校の「商売」の一環であるため、必ずしも「本番に酷似」させることが予備校側の最適戦略とはならない。むしろ、予備校側にしてみれば「本番と同等の難易度に作ってはいけない」とすら言える。

難易度は本番よりも上昇させた方が「本番の緊張を加味した難易度」ということにもなるし「まだまだ点数が足りないから、特別講習を取りなさい」という誘導にもなる。模試の全体傾向として「本番より難しい」というのは確実にある。難しめとされる模試は本番よりワンランク上の問題セットとなる。本番レベルの問題は、むしろ模試としては「易しい」と言える。

ちなみに時期によって難易度や範囲を変える模試もある。例えば河合塾のマーク(センター)模試は1回目から4回目にかけて難易度が上昇しているのが非常に分かりやすい。駿台や代ゼミでも似た傾向がある。また高3生・浪人生向けの模試は夏でも「全範囲から出題」を謳っているものがあるが、やはり夏だと社会の現代史などは出題されにくいと感じた。

他に有名な例だと、冠模試は本番より高難易度だが、本番直前のプレテストでは難易度が落ちて採点も甘くなされるというパターンもある。この辺は予備校側の狙いが見え透いている感じだが、直前に低い点が来るより良いかもしれない。

模試の採点は厳しく、点が来にくい

模試の採点は、基本的には本番より厳しくなるが、これには理由がある。

採点を担当しているのは大学生などのアルバイトが多く、彼らの採点技術はピンキリである。そこで例えば数学では「ここまで書けていたら5点」「この値が出ていたら3点」という風に、システマチックな採点方式が採られている。これは模試の採点講評に載っている(実際の採点ルールは講評より細かいことがある)。

国語や数学、英語の和訳問題などは、こうした基準に沿って一定の採点レベルが保たれている。明確な基準が存在するから、誰が採点しても同じくらいの点数になるのである。

しかしシステマチックに作られているがゆえに、逆にあまり融通は利かず、例えば模試の数学試験は論述であっても、とにかく数値が一致していないと点が全然こない。そのため本番に比べるとオール・オア・ナッシングになりやすい。だから模試では、本番で有効とされる「こういう風に解く」「これはこの方法で証明できる」といったアウトラインを示しても梨のつぶてである。

なお予備校の中でも、駿台の採点は全体的に厳しい。減点ラインや非加点の基準などが定められており、駿台全国模試や東大入試実戦模試で問題の割に、妙に国語などの点数が低かったと感じる原因もここにある。東大A判定常連の人が「駿台の東大古文で、まあまあ解けたと思ってたのに0点だった」という報告をしていたのも目にした。それくらいシビアなのである。

本番は模試より採点が甘いか?

この点、例えば東大試験について述べると、私自身の経験からも、そして様々な合格者の体験談と実際の開示点を見比べても、本番では適切な言葉で「解答方針が間違っていない」ことを示せれば、かなりの部分点が来ているようである。

これは特に平均点が低い数学の難問で顕著で、例えば過去20年でも最高レベルの難易度となった2013年度の東大文系数学の点数開示付きの合格体験記(東進や研伸館のもの)を100件以上読んでみたが、多くの合格者が「途中までしか解けなかった」「答えが1つもあってなかった」と述べている中、実際には80点中30-40点程度を獲得している。

これは、難化した年では甘めに採点しないと、受験生の誰もが10点とか20点くらいになってしまい差がつかないためと考えられる。逆に本番であっても単純な計算問題に近い問題や易問では、数値が合っていない限り点が来にくい傾向がある。

このため、「本番は採点が甘い」とは限らないが、受験生の努力や実力を汲み取ってもらえる可能性は模試より高いと言える。

模試ならではの裏技

模試に慣れると段々「模試で点を取りやすい解き方・書き方」というものも見えてくるので「本番ではこうは書かないけど、模試だからこう書くか」という「テクニック」を使う受験生もいるかもしれない。 これは私も受験終盤で、ハイスコアを狙うゲーム感覚で模試を次々に受けるようになってから、ちょこちょこやった。

例えば現代文であれば各予備校の「宗派」に合わせて、その予備校好みの答案を作成した方が点がきやすい(→「現代文の解法は宗教的になる」および「現代文の模試は役に立たない」)。また世界史大論述においては、模試ではキーワードを効率良く取り込むことを重視して、マクロ的な視点にはあまり囚われない方が点がきやすい。こういうのは採点基準から逆算すればすぐ分かる。

ただあまりこれをやり過ぎると感覚が狂うし、実際以上に高い判定が出る可能性もあるので、余裕のある人が遊び程度にやるに留めたほうがいい。そもそも、こんなテクニックに受験の実際における価値はないのだ。

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投稿日時: 2019/08/09 ― 最終更新: 2019/12/02
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