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東大模試は予備校の看板の1つである。各校は常に「東大を何名輩出できたか」にしのぎを削り、東大対策の深さはそれぞれの予備校のブランド力を決定づける。東進など東大対策しかアピールしていない。

「東大らしい良問」「さすが東大の入試問題」「東大がこんな問題を出した!」などなど、東大が出す問題というのはいつの世も日本の受験界の中心にあり、予備校の作問者はそのエッセンスをいかに真似るかに腐心してきた。そのため、各予備校の名物講師が作問に携わり、そのクオリティは「所詮は模試」とは侮れないレベルに達することもある。また東大模試の全国1位こそが真の頂点というイメージもあり、受験生にとっても頂上決戦となる模試である。

ここでは、そんな各予備校(河合塾・駿台・東進・代ゼミ)の東大模試を2年間、受けられる限り受け続けた経験から各東大模試をレビューしていく。なお最後に受けたのは2015年度のものであり、近年では傾向が変化している可能性もあることはご了承いただきたい。

河合塾「東大入試オープン」

毎年夏と秋の2回実施。2日間に分けて試験を行う。2018年度秋の受験者数は10,244名。

問題の難易度は東大模試の中では全体的に高め。問題のクオリティでは随一であり、良問が多く、解いていて学びが多い。私が世界史や地理の演習用に河合塾模試の過去問を買ったのも、問題が一番良質と感じたからである。

解答用紙は本番とは別物。特に数学は1問につき1枚使って分けていて全然違うし、問題を往復しながら解く際は何度も用紙を入れ替えるのが面倒である。これは恐らく採点効率を上げるためと思われる。受験者数は非常に多く、データには信頼が置ける。A判定を取ると成績優秀者として冊子に名前が掲載される。

解答解説の冊子は恐ろしく分厚く、最も詳しい。東大模試の中では最強である。どれくらい厚いかと言うと「腹に巻いていれば、番長の渾身のボディーブローの威力も1/4に軽減できるくらい」と例えれば分かりやすいだろうか。駿台の冊子では絶対に突き破られる。この防御法でケンカに勝つと文武両道をアピールできて絶対にカッコイイので、果たし状を受け取ったら試してみてほしい。そんな機会ないけど。

これまでずっと「東大即応オープン」の名称だったが、2019年からZ会との共催がなくなって添削サービスが消えたっぽい(Z会共催のマークがパンフレットから削除)。

なおセンター後に「東大本番プレテスト」があるが、これは「東大入試オープン」に比べると質的に劣り、問題が過去の模試から使い回されることがある上に採点が非常に甘く、高得点を取りやすい。実際、私は模試の過去問を解いていたので、プレテストで全く同じ問題に出くわしたことがある。

駿台「東大入試実戦模試」

毎年夏と秋の2回実施。2日間に分けて試験を行う。 2018年度秋の受験者数は11,766名で、模試では最多。

問題の難易度は、模試としては普通~やや高い程度で、数学が難しめなイメージがある。解答用紙は河合塾よりは本物に近いが、やはり別物。これも受験者数が多く採点効率を上げるためと思われる。総じて、模試そのものの性格としてはスタンダードであまりクセがない。

やはり駿台と言えば受験者数の多さが特徴で、競争が激しく、その中で「東大入試実戦模試」の成績優秀者に名前が掲載されるのは、受験生にとって最大のステータスとも言える。そういう点で、成績自慢や模試ハンターには欠かせないバトルグラウンドと言える。

解答解説は薄い。予備校の中では最も薄い。これが非常に残念である。採点も一番辛く、少しでも不備があったり説明不足があれば点がどんどん引かれる。自分に厳しくなるという点では良いかもしれない。

同時に、何度も受けてきた経験から言うが、駿台の解説や講評は予備校の中で一番口が悪い。「厳しい」のではなく「口が悪い」。あるいは異常なほど上から目線である。

一番酷いと思ったのは、英語の講評で「こんな基礎も理解してないようでは、英作文のレベルの低さもうなずける」と書いてあったときである。これは「教育」ではなく「侮辱」である。こういう口の悪い講評を私は何度も目にした。駿台には教育の在り方を今一度問い直していただきたい。

代ゼミ「東大入試プレ」

毎年夏前と秋の2回実施。2日間に分けて試験を行う。受験者数は河合塾・代ゼミには大分劣り、地理や地学のようなマイナー科目ではデータ量が不十分になると思われる。

問題の難易度は、模試としてはやや易しく、本番に近い印象を受ける。これはむしろ利点と言えよう。また解答用紙はかなり本物に近く、数学でさえ両面印刷を実現しているため、他の模試より試験中の取り回しが圧倒的に楽。紙質も割と上等で本番のような雰囲気を味わえる。解答解説は駿台と河合塾の中間くらいの厚みである。

代ゼミの模試となると一気に受験者数が減ってしまい、あまり良い話を聞かないのだが、私としては総合的に見て、決して他の予備校に劣らない良質のものであると感じている。東大志望者は、最大手ではないからといって代ゼミを変に敬遠する必要はない。駿台・河合塾に先駆けて7月から模試が始まるのも1つの特徴である。

この模試の欠点は、合格判定の基準が少々厳しすぎることか。特にA判定ラインのボーダーはとんでもなく高い。代ゼミは叩いて伸ばすタイプ。

なお模試作問者は超能力でも持っているらしく、秋の東大プレで直後の入試問題を完全的中させてしまったという事件も過去に起こしている(→「模試はどれくらい的中するのか」)。代ゼミはなにか“もっている”。

東進「東大本番レベル模試」

以前は年3回開催だったが、近年ではなんと年4回実施するようになった。日程は6月/8月/10月/1月のほぼ2ヶ月刻み。

特にセンター試験終了直後に「本格的な」東大模試を受けられるのは、東進のものだけである(他校の直前テストは急ごしらえという感じが強い)。これはセンターボケ解消にも最適なので、東大受験生は絶対に受けよう。

受験者数は少ない。東大特進コースの人間が必ず受ける試験なので、母体がほぼ特進コース生と合致するらしい。

問題の難度は、東大模試としては標準レベルである。驚異的なのは解答用紙で、ソックリに作っているというより、もはや東大の解答用紙を偽造していると表現した方がふさわしいくらいである。仮に本番でこれを配られても気付かないかもしれない。それくらいクリソツである。なお東進のサイトからpdfファイルをダウンロードできる。

解答解説も河合塾に次いで厚く、必要十分なボリュームを誇る。

東進模試の最大の特徴は、受験者数の少なさを逆手に取った速攻返却である。2週間程度(直前のは中9日)で返却される。そのため模試の興奮冷めやらぬ時期から自分の採点結果を知ることができ、ネット上で講評も確認できる。その代わり他の予備校のような大規模なデータ処理を放棄しているので、詳しいデータはつかない。

欠点としては、意図的にやっているのだと思うが、開催月によって採点の甘さや問題難度にバラツキがあり、それは他の東進生の模試データを見ても明らかと思われる。私が受けていた年3回開催の頃で言えば、1回目は非常に厳しく、2回目で易化する、というパターンが見られた。

それと最終模試以外は1日開催となっているのが、慣れない人間には体力的に結構ツライ。中々の強行軍である。例えばセンター模試も同じくらい長いとは言え、センターなら科目によっては結構時間が余るし、1科目1時間程度しかかからない。一方、東大は1科目最大2時間半にも及ぶ上に全力を尽くす必要がある。東進の東大模試を受けてもへっちゃらになったら模試ハンター認定である。

高い質の割に受験者数が少なすぎるので、おすすめの模試である。残念なのは、他の予備校と違い過去問の販売がないこと。Amazon、ヤフオク、メルカリなどで「ホンモノ」の模試過去問を購入するしかない。

東大模試の評価まとめ

●河合塾
難易度がやや高めだが、問題の質は安定して高くデータ量も豊富。解説が一番充実している。

●駿台
難易度は普通かやや高い程度で、受験者数は最多となることが多くデータの信頼性は高い。採点が厳しい。解説はやや薄い。

●代ゼミ
難易度はやや低めで本番に近く、解答用紙も本番そっくり。解答解説は必要十分程度あるが、受験者数が二大東大模試には劣る。

●東進
年4回開催、スピード返却といった独自のシステムが受験生にはありがたい。問題の質も十分であり、解説も詳しい。難易度は並。ただし受験者数は少なく、また利点の裏返しとしてデータ分析もあまり行われない。

一番おすすめの東大模試は……

では東大模試はどれを受ければいいのか?

私の評価としては、模試そのものの評価としては河合塾がベスト。問題はかなり良質で、他の予備校と違い「こんな問題解いてもしょうがないな」と思うようなことがほとんどない。しかも、解答解説が非常に充実している。

一方、甲乙付けがたいのが東進模試であり、上述したように東進独自のシステムで他の大手予備校と明確に差別化された長所を持つのがポイント。とりわけ年4回開催、スピード返却というシステムは受験生にとって嬉しい。

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投稿日時: 2019/07/06 ― 最終更新: 2019/12/01
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