ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「糸杉のある麦畑」

私は予備校に通わず独学した代わり、模試だけはアホみたいに受けた。最初の2年間は、年間スケジュールにある東大模試は全ての予備校のものを受験し、つまり駿台・河合塾・代ゼミ・東進の東大模試だけで年間9回も受けていた。

ついでに模試の過去問も解いていたし、受けるものがないときは全国模試や全統模試まで受け、首都圏のあらゆる会場へ遠征したものである。縁がなかったのは進研模試くらい。受験時代に受けた模試の合計回数は30を超えた。

本番形式の模試があれば積極的に受けよう

私は模試マニアみたいなものなので、ほとんどの受験生にとってここまで模試を受ける必要は全然ないが、それでも受験において模試を活用することは重要である。特に難関大学を受験する場合は、大学名を冠したいわゆる冠模試(京大本番レベル、早慶オープン、慶大プレなど)というやつが各予備校で実施されるので、志望校が定まっている人はこれらの模試を積極的に受けに行くと良い。

どれくらい受ければいいかというと

「体力やスケジュール的に可能であれば、志望校に近い形式・レベルの模試を、できるだけ受けた方がいい」

というのが私の意見である。 ただし志望校に似た形式・レベルの模試がない場合はあまり意味がないので、無理に受けなくてもいいだろう。

「模試は受け過ぎない方がいい」という意見については、私は「無理してまで受けるのは逆効果」だと捉えている。受けたくない状況で申し込むと、それだけで心理的にマイナスというのはある。逆にやる気のある人、模試を受けて実力を試したい、という人には様々なメリットがあるので、受けて基本的に損はないと思う。

模試は「試験形式の添削サービス」

まず模試の問題を解く、という行為は、普段の問題集を解く行為を代替する。この時点で既にソンはない。図書館で問題集を解く代わりに、会場で解いていると考えることもできる。

採点が自分本位ではなく、第三者により無慈悲に行われるのも良い反省材料になる。私が模試を積極的に受けた大きな理由は、独学のために普段は「書く練習」を極力省略し、インプット重視の勉強をしており、アウトプットの練習のほとんどを模試に割り振って「試験形式の添削サービス」として活用していたからである。

解答作成が不安な人は、添削のためだけでも模試を受ける意味は大いにある。特に独学の人は、模試を活用して定期的に添削を受けることを勧める。

それに加えて、やはり模試にはある程度の緊張感が伴うし、家で本番通りに解こうとしたときにありがちな「ちょ、ちょっとタンマ!なぜか突然コンビニで食い物買いたくなってきた!」というような誘惑がない。やはり家で本番通りに解くのは難しい。

本番形式の模試を受けまくると、本番のときにも過度の緊張感がなくなり、むしろ「模試と同じじゃないか」「あっ、解答用紙が代ゼミと東進のにクリソツだ」とか余裕が生まれる。本番を普段のルーティンのようにこなせれば勝ちである。冠模試を何度も受けていく人は、繰り返し同じ形式で試験慣れしながら、試験対策をバージョンアップさせていくといいだろう(→「冠模試には明確な戦略を持ち込んで実験しよう 」)。

模試はオトクである

以上のような模試の利点を考えると「問題セット + 会場使用料 + 採点料 + 緊張感 + 判定料」が4,000~6,000円で買えるのは、お買い得である。実際に私が初めて東大模試を受けたときには「随分安いな」と思った。最近話題になった英語の民間試験などは、料金20,000円なんてのもザラにあるからだ。

模試に比べると通信添削とかは、こういった緊張感などが伴わないのに料金が高めで、通信添削の類を受けるのは模試を受けきってからでもいいと思う。

模試に対する批判として「どうせ本番で同じ問題は出ないのだから意味がない」という意見をしばしば聞くが、これは「模試の意味」を勘違いしている。模試は的中を期待して受けるのではない(→「模試はどれくらい的中するのか」)。模試は「添削による解答力の向上」「定期的な学力検査」「本番形式の戦略確認」のために受けるのである。

予備校ごとの模試比較―― 河合塾・駿台・東進・代ゼミ

これについて「この予備校がいい」と一概に答えるのは難しい。というのも予備校の数も、実施されている模試の数も、相当な種類になるからだ。

しかしあくまで私の受けてきた範囲で見えた傾向から答えると、河合塾の作る問題が全体的に良質でおすすめである。

記述模試にせよマーク模試にせよ東大模試にせよ、問題のクオリティが常に高く良問揃いであり、解説も充実している。おまけにデータ量でもトップクラス。「模試で迷ったら河合塾」と言っておきたい。他では、他校と差別化したシステムを持つ東進が便利。代ゼミと駿台は次点という感じだった。

なお模試というのはどの予備校のものでも、本番レベルより高くなるのが当たり前だし、採点も厳しいので、点数が「本番で必要な点」に届かないからと言って落ち込む必要はないし、点数そのものを気にしてはいけない(→「模試の限界と欠点――難易度や採点が本番とどう違うか」)。

全国・全統・マーク模試の話

個別の模試についても軽く解説しよう。冠模試以外で難関校志望者に人気が高いのが「駿台全国模試」。これは難度が非常に高く、平均点が大きく落ち込む。受験生のメンタルクラッシャーとして有名で、「残酷模試」の異名も持ち、特定大学の対策には向かないが、力試しにはいい模試だろう。高難易度であるがゆえに、高得点者にはかなり高い偏差値が出やすいので「得意科目で最高の偏差値を記録しておきたい」という成績自慢にもオススメ。

もう少し広い受験生向けには、河合塾の「全統記述模試」もあり、実際に2度ほど受けたがバランスが良い模試という印象を受けた。河合塾は、最近では模試ナビなどのサービスの充実により利便性も上がっている。

センター試験の模試である「マーク模試」は頻繁に行われているが、おすすめは夏と冬に1度ずつ受けるというやり方である。夏に実力試しとマーク形式への慣れを兼ねて受け、直前期に確認のためもう1度受けるのである。ただしマークシート形式は自宅でも正確な採点が可能なため、スケジュールが合わなければ無理に受ける必要はない。1日でこなすので、科目数の多い国立志望者にはハードな時間割になるのも欠点。

マーク模試でもおすすめは河合塾。問題の質が良い。難易度は1回目から最終にかけて徐々に上がるので注意したい。1回目は本番と同じかやや易しめで、最後の方は本番より難しくなる傾向を持つ。なおマーク模試は平均点が高い分、高い偏差値は出にくく、満点付近でも偏差値70くらいが限界のこともある。

良質な模試とは何か

模試で重要な点は何か?というと、問題のクオリティがまず一番として、次に重要なのが解答解説がどれくらい詳しいかということである。解説冊子の詳しさには予備校により明確に差がある。

解説冊子程度なら基本的に「ボリューミーで読みきれない」ということはないはずなので、できるだけ厚い冊子を配ってくれると受験生にとってありがたく「解説を読んでも分からない」というケースが減る。

他に受験生にとって重要なのは母集団の大きさで、これが少なすぎるとデータの正確性が損なわれる。すると問題ごとの平均点や偏差値データなどがやや信頼できなくなってしまう。その点では河合塾と駿台が圧倒的に強い。代ゼミと東進の弱点は、このデータ量にこそある。

このような着眼点を持てば自分なりに模試の良し悪しを判断するのも難しくないので、模試では問題の面白さや再現性、解説冊子の詳しさ、母集団の大きさ、あとは解答用紙の再現性などに注目して質を判断してほしい。

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投稿日時: 2019/07/06 ― 最終更新: 2019/12/08
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