オリバー・クロムウェル(1599-1658)、イングランドの護国卿
「より高みを目指すのをやめた者は、高みにいることはできない」

「論述は書く練習に時間を費やさず、書くための知識と問題パターンを蓄積すべきである」と別の記事で述べた(→「世界史の論述問題を独学で解けるようになる勉強法」)。

しかしそれでも、90字程度の論述ならともかく、300字を超えるような大論述問題では「何でも書けそうで途方も無い」「文字の配分がつかめない」という人もいるかもしれない。東大や京大では大論述が名物的になっており、避けて通れない。そこでここでは、私が東大世界史の大論述を書く過程で培ったテクニックを公開したい。

下書きしている時間はほとんどない

入試の時間設定や難易度にもよるかもしれないが、世界史論述というのは書くことそのものに大部分の時間が費やされるので、下書きしている余裕はあまりないはずである。特に大論述ともなれば膨大な量を書くから、下書きを転写するというのは無茶である。

文字数に不安を覚えたら、書かずに数える、実際の解答欄のマスにペンを当てながら「ロ・ー・マ・の・平・和・が・実・現・し・た……ちょっとオーバーするか」のように確かめる、という程度でいい。

簡単なチャートを作って書く内容・順番などを設定

大論述においては、必ず書くことのアウトラインを設定してから書き始めるべきで、計画性もなくいきなり用紙に書き始めるべきではない。ただし「時間が全くなくなってしまった」という場合だけは別だが、大論述は配点も高いので、そのようなミスが絶対起きないよう、直前期に綿密に時間配分をチェックするべきである。

チャートの作り方は人それぞれだと思うが、ここでもチャート作成に時間をかけすぎると書く時間がなくなり、焦って本末転倒となるので、「必要最小限」を意識したい。

「キーワード・トピック」式チャート作成法

以下は私が模試や本番で用いたやり方なので参考にして欲しい。

私の場合は書くべき範囲を大体設定した上で「これは絶対に入れる」という重要キーワード(必ずしも問題に指定されていない)を列挙し、連続する1つの話題のキーワード群を「トピック」として丸で大きく囲った。

仮に大論述のテーマが4つのトピックを横断する場合、問題用紙の余白欄に4つの丸を書いて、それぞれの枠内に盛り込むべきキーワードを列挙するのである。キーワードを書く理由は、書こうとする内容を「文章」にしてチャートにすると時間がかかり、スペースも圧迫するからである。

そしてそれぞれの大枠間やキーワード間に矢印を引っ張ったりして「このトピックからこのトピックへと話題が移動する」「このキーワードとこのキーワードの関係性を指摘する」といったことが分かるようメモしておいた。ちょうど、マンガやドラマの「人物相関図」の簡略版のような感じである。

これに加えて、実際に論述で使う予定のキーワードについて書いたら、チャート側のキーワードに打ち消し線を入れるチェック方法を用いると(「不輸不入権」みたいに)、書き終わってから「全てのキーワードを使えたな」と容易に確認できる。

チャートを作る上で最も重要なのは、それを見ながら大論述を書くことで、キーワードの歯抜けや順番が前後してしまうことを防ぐこと、つまりミスを防げるように作ることである。その目的が達成されていれば、チャート作りは大体成功しているはず。

書く量を大雑把に設定し、臨機応変に文字数配分していく

これも私の我流だが、模試でも本番でも安定した。

例えば東大世界史の場合、キーワードが8つくらい与えられて、それらを軸に論述するが、ここでキーワード群が大きく3つに分けられたとする。これを3つのトピックとする。

すると3つのトピックの話題を繋げて書くことになるので、「大体、2:3:5の配分」というように仮設定する。ここで文字数制限が600文字だったとすると「120:180:300」の配分となる。

そして各々を「120文字の論述」「180文字の論述」のように、中論述として分割し、それぞれの文字数制限の中で上手く収まるように書きながら調整していく(とは言え、それぞれのパートに大論述のテーマに沿うようつながりを持たせることは意識する)。前半でオーバー気味なら後半でつじつまを合わせていく。

このやり方は若干大雑把なまとめ方ではあるが、時間制限のある中で破綻しない論述をコンスタントに書くには悪くないやり方だと思う。

事実の列挙だけに終始しない

これは中論述でも同じだが「Aだから、Bになった。次にCになった」といった史実の列挙に終止しているだけでは高得点は見込めない(事実列挙だけを求める問題は除く)。題意を汲み取り、書いていることがどう問題設定に関連するのかを明記しなければならない。大論述では書くことに忙しくて、つい疎かになりがちなので要注意である。

例えば教皇権の拡大と縮小についての大論述なら「「教皇のバビロン捕囚」により、教皇権の動揺が表面化し……」といった感じで、事件がどう題意に結びついているのか、軽くでもいいから説明を加えながら書くべきである。

これは出題者の意図を考え、相手の立場に立てば分かる。せっかく問題を設定して、世界史のマクロな視点を試すために大論述を設けたのに、ひたすら事実を列挙しているだけの解答には「だから、それがどうこの問題に関係あるのか書いてくれよ!」と言いたくなるだろう。

キーワード仮説 vs. 内容仮説

少し現代文の話題に似ているのだが、世界史大論述においても「採点は特定のキーワードについて書かれていると点が追加されていく加点方式なのか、全体の良し悪しを見て点をつけるのか」といった議論がある。

模試の場合は基本的にキーワード加点が採用されている。個々の望まれるキーワードについて十分に説明できていれば1点ずつ入り、内容や出来事のつながりについての説明があれば、それらも別個加点対象になる、という方式だ。

そのため私は、模試における大論述を「キーワードを入れるほど点が入るボーナス・ステージ」とイメージしていた。ビデオゲームなんかでも、制限時間内にどれだけ敵を倒せるか、というボーナス・ステージがあるが、あんなイメージだ。

一方で「本番の模試ではより高度な採点がなされている」という噂もつきない。実際の点数を見ても、なんとも判断がつかないのだが、少なくとも東大のケースについて言えることは「キーワードを絡めながら出来事を説明することを主体に、論述テーマに沿って出来事の連関にもチョコチョコ言及するような書き方で、十分な点が来る」ということである。私がそう書いたのだが。

つまり模試を解く時の書き方と大体同じでいいと思うし、模試で世界史偏差値が高い人は本番でも大体高い点を取っているから、模試の採点方法がそんなに外れているとは思えない。ただ模試の高得点狙いのときほど、あざとくキーワードを詰め込まなくてもいいかな、と思う。

そもそも大論述のような巨大な答案を「大体どれくらい書けているか」で大雑把に採点していたら、採点が主観的になってしまうのではないだろうか。採点に厳密生や客観性が求められるからこそ、模試のようにシステマチックな採点方式が必要なはずである。

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投稿日時: 2019/07/05 ― 最終更新: 2019/12/01
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