受験勉強開始直後は全科目苦手という状況だったが、中でも当然、数学に一番時間がかかった。数学自体が不得意という意識は持っていなかったのだが、とにかくこなさなければならない量が膨大で、「因数分解のやり方」から再出発した私が東大数学を解けるようになるまでは、かなりの長い道のりであった。

そんな私の数学が得意になっていくキッカケは、実は「数学は、もう少しでイケるではないか?!」という「勘違い」だったのである。

たまたま模試で問題が解けて……

あれは勉強を開始してから半年以上が過ぎてからのことだったが、東大模試の数学でいつものように難しすぎる、解けないという状態に陥る中、一問だけ「これは喰らいつけるかも」というのがあった。それは整数問題だったのだが、私は当時、受験数学では整数問題が一番難しくて「手も足も出せない」と思い込んでいた。

しかしその問題では、なぜか足のつま先くらいまでは出せたのである。といっても完答はできず「デタラメかもしれないが、何とか答案の半分以上は埋めた」という投げやりな状態だったが、帰ってきたその問題の点数は13/20であった。

東大模試で、20点中13点!それだけで私は有頂天になってしまった。この点数は受験者平均を大きく上回り、初めて数学でまともな偏差値が出た。

偶然から出た真

これだけで私は「整数問題は解ける!向いてる!」と思い込んでしまったのである。模試の成績表を何度も見直しては「自分でも東大数学が解けるんだ」とニマニマ。とうとう数学の勉強が成績に返ってきた。そう思った。

そして、整数問題をやり込みまくった。

もちろんあの東大模試で整数問題を半分解けたというのは、ただのマグレであって、当時の私が繰り返し模試を解いて平均偏差値を出せば、かなり低い値を出したであろう。しかしそんなことはどうでも良くて、ここで重要だったのは「20点中13点」という「ゲンブツ」を手にしたことであり、それによって私の「東大数学は解けない!整数問題は難問!」という思い込みが破られたことである。

そしてどうなったか?私は本当に整数問題が得意になってしまったのである。

そもそも苦手意識というものは、相性の悪い先生に当たったとか、テストの成績が悪かったとか、そういった「巡り合わせ」で生まれることが多く、基本的に「思い込み」であると私は考えている。であるから、それはそういう呪縛を解くキッカケがあれば、逆にあっさり解消されることがある(→「苦手科目が最大の武器になる」)。

「ゲンブツ」を手に入れたら最大限利用

そして人間、どんなに「それは思い込みだ」と思っていても、やはり「目に見えるモノ」があると嬉しいし、観念よりも印刷された数字に説得されてしまう、視覚的な動物である。この場合でも、たまたま整数問題を半ばまで解けたという「ゲンブツ」が強烈な牽引力となって私の苦手意識を突き破り、勢い余って得意だとすら思ってしまったのである。

しかし勘違いだろうとなんだろうと、嬉しさややる気は本物で、豚もおだてりゃ木に登るし、木登りし続ける豚はいつか本当に木登り上手になってしまう。「思い込みから真が出る」のもまた、真実なのである。

逆張り戦略の有効性

そしてご存知の方も多いと思うが、東大・京大・一橋などの数学では確率と整数が頻出で、しかも差のつく問題になりやすい。大学側としても、受験生が敬遠しがちな思考力を試せる問題を出したいと考えているのだろう。

そして「他の受験生が苦手で嫌がる」からこそ、ここを抑えておくと明確に有利で、他の受験生に差をつけることができる。私にはそういうしたたかな計算もいくらかあった。「他の受験生が苦手なら、オレは得意になるんだ」という逆張りの戦略である。

それに、これらは難しい問題だからこそ、解ける人は「数学ができる」というイメージもある。だからこれらの問題で差をつけられると「自分は数学が得意なんだ」というセルフイメージを抱きやすい(→「逆張り戦略とセルフイメージ」)。

もう1つ確率・整数分野が私に向いていた理由を挙げると、これらは他の単元からの独立性が高いので、一から勉強していても比較的早く「実戦で点を取りやすくなる」という利点があった。そこで、まずこの2つの頻出単元を得意になっておくことで「苦手意識があるから余計できなくなる」という負のループを脱したのである(→「数学苦手を克服するための第一歩」)。

数学だけでなく、私の苦手克服にはこのような「偶然」を利用したものが多い。シラフになったら負けである。勉強で突き抜けたかったら、酔って酔って酔いまくり、目の前にぶら下がった獲物を目指して全力疾走。人間、やはり目の前の「ゲンブツ」には弱い。そして嘘でも偶然でも、信じ続ければそれがいつか真になるのだ。

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投稿日時: 2019/08/05 ― 最終更新: 2019/11/09
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