数学は「それなりの質」と「多大な量」の積み重ね

「大学受験レベルの数学が難しいと感じる理由」からの続き。

数学の苦手を克服したり、今全然点数を取れていない人が合格点をもぎ取れるか?というと、これは十分可能である。

実は数学においても、難関大の問題を解くために、ものすごく高度な思考やひねった考え方が要求されるわけではない(まれにマニアックな問題が存在するが、受験レベルでは奇問に近くほぼ誰も解けないので無視していい)。1つ1つの事柄を受験レベルで応用するのに必要な「理解力」の程度は、世界史において「なぜナポレオンは諸国で英雄として歓迎されたのか」を理解するために必要なそれと大差ない。

問題は、理解しなければならない考え方や解法の「量」にこそある。

試しに書店で、数学で最も有名な問題集『青チャート』の全範囲をパラパラとめくって見て欲しい。膨大な数の問題と、理解すべき考え方が掲載されているだろう。

明らかに、ここで必要とされる「理解すべき事柄」の量は、古文や地理など足元にも及ばないし、膨大な暗記量と言われる世界史・日本史すら大きく上回り、同じ「下積み科目」に分類される英語をも超えている。文系でもかなりの量だが、理系ならとんでもないボリュームだ。「理系なのに数学苦手」というより「理系だからこそ数学が苦手」になるケースも多いのではないか。

このように多岐にわたる「理解すべき事柄」を、もちろん100%の範囲で十分に理解できている学生は滅多にいないが(いれば、その人は数学でトップクラスである)、これらの事項をある程度以上に理解して、はじめて「入試の標準問題がまともに解ける」状態になるのである。

数学はあくまで「積み重ね」で解ける範囲が広がる

しかし、とは言え、このパンドラの箱の中には重大な希望が残っている。

それは「数学も結局は、小さな理解の積み重ねで解けるようになる」ということ、つまり問題の質から量への転換である。「私に数学を解く資質があるか?」という自問自答から「数学を解くにはどれだけこなす必要があるか」という見積もりへの変化である。

従って、数学の勉強をする上では「全ての範囲を一気に攻略しない」ことが重要になる。「苦手意識は「局所的集中勉強」で消すのがいい」で述べたように、 三角関数とか数列とか、1つ1つの範囲を「苦手」から「得意」に塗り替えていき、徐々に数学全体を「得意」に変えていくのである。

そうでないと、あまりに膨大な量の問題を前にして、中々成績も上がらずイヤになってしまう。量が多すぎて一周する頃には最初の方の部分が「なんだっけ?」になっていることもある。これでは効率が上がらない。

そもそも「点と直線の距離の公式」だとか「ベクトル」だとか「鳩ノ巣論法」だとか、こんなもの問題集の最初からめくって、順に全て覚えようとしたら頭がおかしくなる。しかし1つの単元に絞れば、覚えるべき典型問題はせいぜい30種類、公式や定理も数種類程度である。これなら何とか着手できると思えるのではないだろうか。

徐々に「数学の陣地」を拡大しよう

数学と言えど、特定の範囲に限れば覚える量はそれほど大したことがなく、集中的にこなすことによって「他の範囲は知らんが、漸化式だけは得意!」くらいには早く達することができる。

「数学」そのものを一気に攻略しようとするから、先が見えず、点数も上がらず、イヤになる。まず、目の前にある攻略したい範囲を一点だけ狙う。

一点突破。そして、少なくともその範囲に関しては問題を解ける!という「小さな勝利」を積み重ねる。「小さな勝利」の積み重ねの先に、数学に対する「大勝利」が待っている。数学が今は苦手なあなたも、勉強し続けて数学を得意にすることはできる。

思うに数学が得意な人というのは、学校や塾の進度に合わせて、目の前にある範囲をその都度、得意範囲に塗り替えていく「小さな勝利」を積み重ね続けた人ではないだろうか。

数学の勉強をする上では1つ注意しなければならないことがある。それは「数学は解法暗記だけで満点取れるんだ」のような、偏りすぎた一辺倒な勉強に終始しないことである。数学試験を解くのに解法暗記が重大な役割を果たすことは間違いなく、必要なことだが、ある程度以上の問題はそれだけで解ききるのは難しい。そういった致命的な偏りをして「積み上げてきたものが砂上の楼閣だった」ということのないようにしたい。

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投稿日時: 2019/09/04 ― 最終更新: 2019/11/11
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