私は日本人の欧米コンプレックスを刺激して、無闇やたらと英会話を薦めたり、学生を留学に駆り立てたり、あるいはグローバルだのインターナショナルだのといったカタカナ言葉を節操なく振り回す風潮は好きではない。しかし語学の有用性がここ10年ほどで急激に高まっていることは事実だと考えている。

ただし「グローバル社会」などと連呼するような人たちが掲げる事情とは、全く別の事情によって、である。

私の「現代は大語学時代だ」という主張の要点は以下の通りである。

  • 外国語を学び易い状況が急速に整っている
  • かつ、外国語を活用して得をするケースが増えている
  • 仕事で外国語を使わない個人でも、英語などを一度身につけることで一生得をする社会になっている

言語学習が容易化した

簡単に言えば、インターネットの普及海外コンテンツの大量輸入によって「言語学習が以前より遥かに容易に、かつ低コスト化した」ことで、言語学習を誰でも効率良く進められる状況が整った。

例えば言語交換プラットフォームであるHiNativeやHelloTalkのようなSNSで、無料で簡単に世界中のネイティブと接続して楽しく簡単に言語を教え合うことができるし、言語学習のための本も書店にいけば、これ以上ないほど揃っている。むしろ学習手段が多すぎて迷うくらいだ。

さらにNetflixなどの配信サービスを活用すると、海外ドラマの全シーズンをいつでもいくらでも字幕を自由に切り替えて視聴することなどができ、楽しく低コストで学習できるようになった。

外国語の活用で利益を得られる機会が大幅に増えた

そして言語学習がしやすいこの社会で、ある程度外国語が使える人は、他国の製品を安く購入したり、より広く情報を集めたり、あるいはよりコンテンツを深く楽しめるようになった。それはひとえにインターネットのおかげである。

例を挙げると、外国語ができる人は

  • YouTubeで世界中の人気チャンネルを楽しめる
  • 世界中のニュースサイトなどから自分に合った情報源を探せる
  • 各国のAmazonから世界中の商品を購入できる
  • 日本で高く販売されている商品でも安く購入できる
  • 海外映画やドラマなどをより深く堪能できるようになる
  • もちろん仕事にも使える

世界中のYouTubeチャンネルを楽しめる

これは多くの人にとって、一番身近な外国語能力の活用機会かもしれない。特に英語圏は日本語とは比べ物にならないくらい熾烈な動画競争が行われており、その上位に位置する人気チャンネルには質の高いものが多い。特に、日本国内だとなかなか知ることのできないディープな視点で語る動画などが面白い。

なおYouTubeだけでなく、各国にはその国特有の有名動画サイトがあったりもする。日本で言えばニコニコ動画みたいなものである。例えば中国では哔哩哔哩(ビリビリ)動画というのが人気で、むしろ中国語コンテンツを探したいならこっちの方が豊富である(まあ、ニコニコの丸パクリなんだけど)。

「でもネット動画って素人配信がほとんどだから、すごくリスニングが難しんじゃないの?」と思うかもしれないが、少なくとも英語圏は全く逆で、海外ドラマや映画より聴き取りやすいチャンネルが多い。特に、登録者数が10万を超えているようなチャンネルはゆっくり丁寧に発音しているチャンネルが多いはずである。また現在では字幕機能が充実しているので、聴き取りが難しくても字幕をつければ大抵なんとかなる。

学習の一環として、積極的にコメントを残すと作文力も鍛えられるだろう。

海外製品を国内より安く買える

例えばAmazonのようなネットショッピングでは、現在では英語で住所を書いたアカウントを1つ作っておくだけで、世界中から日本で買い物をするのと同じ感覚でショッピングができるようになっている。送料がやや高いのと、マケプレ商品の購入に制限があるくらいだ。

そして日本という国に閉じ籠もっていると分からないが、海外で買い物をすると送料込みでも日本で買うより遥かに安い、というケースは非常に多い。電気製品やPCパーツなどはもちろん、CDやブルーレイなどは半額以下、場合によっては1/5くらいの値段で物凄く安いコレクションパックを買えたりする(ただし家電やブルーレイは、電圧の違いやリージョン制限には注意する必要がある。これらは変換器などで対処できるし、一度対処すれば以後同様にかわせる)。

これらは輸入代行業者から買うと割高になってしまうし、海外のように凄まじい割引率を誇るコレクションパックは日本には滅多にない。日本のコンテンツは全体的に高い。そこでChromeのKeepaのような各国の価格比較できるプラグインを使って最も安い国を選ぶと、お得に買物ができる。

ショッピング自体は英語が分からなくてもかろうじて可能だが、海外製品に対する情報を集めるにはやはりその国の言語が必要である。例えば英語が使えればAmazon.comにあるレビューでも、その他色々なサイトやSNSの口コミでも、英語で読んで情報収集できるし、解説書なども全て読み込むことができる。使用の際にもその言語が分からないと困ることがある。

私自身を例に挙げると、このサイトの映画評の記事などを見てもらえれば分かるが、私は映画鑑賞を趣味としておりホームシアターも構築している。そして鑑賞は大半が海外のAmazon(US, UK, FRなど世界各国)からかき集めたブルーレイによって行っている。

英語で理解できるおかげで、日本公開前の作品でも自宅のホームシアターで楽しめるし、昔の作品も格安(日本の1/2~1/3)で手に入る。そして何より、台詞を全てそのままの形で理解できるのが大変嬉しい。

そのため、日本盤を買ってもわざわざ英語字幕を選択しているし、英語字幕が未収録の場合は日本盤が安くとも、あえて海外盤を取り寄せることすらある(なお映画評の記事では、ブルーレイ評価欄に英語難度の独自判定も載せているので、学習者は参考にして欲しい)。

外国語のまま理解できることで、コンテンツの質が上がる

字幕というのは文字数制限が厳しく、比べながら観ていれば分かるが、実は日本語字幕頼りだと、本来喋っている内容の7割くらいしか理解できていないことになる。これは大変もったいないし、その言語特有のジョークやダジャレなどは翻訳がほとんど不可能である。

少しくらい理解できない部分があっても、生の英語で理解できた方がより正確に、忠実に作品内容を把握できるのである。これは映画でもTVドラマでも洋楽でも同じ。他人の翻訳に頼らず、外国語を外国語のまま自ら理解することで、大好きな作品への理解と感動が一層深まり、好きなものをますます楽しめるようになる。

つまり外国語(大半の人にとっては英語)を身につけると、その後は一生、世界中のモノやコンテンツを安く、自在に手に入れられ、なおかつ内容をより深く理解できるようになるのである。外国語能力は一生の資産になる。

世界中から情報源を選べる

他にも、例えば日本のメディアというのはメーカーとの癒着が非常に強く、製品のレビューや作品評などは提灯記事ばかりだが、英語圏は比較的正直に書く批評性の高いメディアが多い。

こういう時に日本語しかできないと「それでもイヤイヤ日本の記事を読まねばならない」という状況に封鎖されるが、外国語ができれば自分でもっと多くのメディアの中から読む記事を選ぶことができる。

それと英語圏ではニュースメディアなどでも、自社のニュース記事のコメント欄などをオープンにしていることが多く、日々ユーザーによって活発な議論が行われている(こういうのは日本だと閉鎖されている)。私は海外ニュースで気になったことがある場合には、その国の情報源にあたるようにしている。

言語学習は「正の流れ」に乗ることが肝要

外国語学習では「その言語で何とかコンテンツを楽しんだり情報を得られる段階」が1つのゴールで、そこまで到達すると「その言語を利用してコンテンツを楽しむ」->「それによってその言語が上達する」->「ますます多くのコンテンツを楽しめるようになる」という正のループに突入することができる。

だからとにかく手段を選ばずに、何とかこの段階まで到達することが重要で、到達できたらすぐにその言語でコンテンツを楽しむようにすると、あとは時間が経つほど上達する流れに乗ることができる。

私は大学受験をキッカケに英語を本格的に学ぶようになり、大学に入ってからは中国語を学び、次いでフランス語を学んだ。そして学習時は毎回この「流れ」に乗ることを最優先にし、上手くいっている。

特に中国語を学ぶと一気に情報源が増え、非常に便利で楽しい上に、日本人は世界中で一番中国語学習にアドバンテージを持っている。中国語では、かなり早い時期から映画の字幕に挑戦できた。英語の次の言語として中国語はオススメである。

1年本気で学んで、一生外国語を使い倒す

多くの人は「学校で6年間やったのに英語がロクに使えない」から「英語をモノにするには何十年も学習する必要がある」か、あるいは「語学を活用できるのは一部の天才」だと思いこんでいるが、それは全然違っていて、そもそも学校の勉強というのは言語学習としては非効率なのである。まして英会話ができないのは当然である(参考:「学校で英語を「学んだのに喋れない」のは当たり前 」)。

私は「学校の英語教育」というやつに対して批判的ではないが、それでも1日おきに1コマの勉強をいれて、ダラダラとテキストを読んでいるだけでは、英語をモノにできないのは当たり前だと思う。語学は短期集中で一気にやることで、効率が飛躍的に向上する。単位取得の既成事実を作るためのダラダラした1時間と「英語を身に着けたい!」と意気込んで自主的にやる集中した1時間では、学習密度が5倍は違う。

「これを学びたい!」という、自らの内から湧き上がる本気のクソ意欲。それこそが学習で最も重要なもので、それを秘めている人は誰しもその分野を天才的に学習できる。

だから苦手な人でも1年間、ある程度できる人なら半年、空き時間でも通勤時間でもいいから本気で学習して、何とか「その言語で買い物したり字幕を読めるレベル」まで食らいつくことが重要。字幕で映画やドラマを観られるようになれば、リスニング能力などは観まくるだけで伸びるので、まずは読解能力を優先すると効率が良い。

その後は海から陸地に上がったかのように、時間をかけて歩くだけでどんどん先に進めるようになる。それが今後何十年も、あなたの生活を豊かにし、しかもどんどん豊かになっていく。目指しましょう!

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勉強の面白さを力説し、学びの意義を考え続ける受験コラム

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投稿日時: 2019/08/10 ― 最終更新: 2019/11/05
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