図1:三田紀房『ドラゴン桜』6巻, 講談社, 2005年

テスト前にどう過ごすか……これはいかなる時代も受験生にとって悩みのタネであったに違いない。『ドラゴン桜』の桜木は試験をスポーツで喩え、スポーツ選手が最高のコンディションを発揮できるよう調整するように、受験生たちも試験前にある程度決まった調整手段を持っておくべきだと説く(図1)。

龍山高校の特任教師たちが話し合って決めた「試験前の過ごし方・校内テスト編」は、以下の5箇条からなる。

  1. 徹夜は絶対にしてはいけない
  2. 色々な勉強方法を使いながら、問題を解け!
  3. 寝る直前まで勉強をし続けろ!
    寝る直前は暗記物をつめこめ!
  4. 睡眠時間は1.5時間の倍数時間寝るようにしろ!寝つきがよくなるように興奮を抑える効果のあるホットミルクを飲んでから寝ろ!入浴は夜ではなくテスト当日の朝、集めのお湯で!
  5. 当日の朝は、教科書を読むな!

さて、皆さんは以上の方法をどう思うだろうか。

桜木パイセンにツッコミを入れる

まず「徹夜をしてはいけない」。これはさすがに常識だろう。というか試験前に徹夜をしないといけないようでは勉強不足過ぎ、対策以前の話である。徹夜というのは「赤点になるかならないか」というレベルの生徒がするものだ。また近年の心理学での厳密な比較実験でも、完全な徹夜をするより、わずかな時間であっても睡眠を取る方が試験成績が上がるという結果が出ている。とにかく徹夜というのは、興奮して眠れず「してしまう」ものではあっても「自分からする」ものでは断じてない。

2の「色々な勉強方法を使え」だが、これについて桜木は「ルーティンだと頭の働きが鈍る。色々な方法を試したほうが脳が活性化される」と述べている。確かにその通りで、私も全く同意なのだが、別にそれは試験前に限った話ではないのでは?この部分をよく読み直してみても、別にこれが「試験前日」特別に必要だという根拠は示されていない。というわけで、色々な勉強方法を使うことは、試験前日も試験100日前も同様に有効である。

3の「寝る直前まで勉強をし続けろ!」。うーん、これはさすがに人によるのでは?勉強していると興奮やストレスで眠りにくくなる人もいるだろうし、そういう人は適当に気分転換した方がいいと思う。「寝る直前は暗記物」も、前時代の脳科学っぽい説というか。「短期記憶が長期記憶になるのは寝ている間」というのがその根拠なのだが、私はそもそも「暗記」と「理解」を区別するのはナンセンスだと考える。何故なら暗記とは理解することであり、理解とは暗記(記憶)することだからだ。暗記を伴わない理解なんてあり得るのだろうか。だから好きな勉強をすればいいと思う。まあ暗記は悩まない分、寝る直前にこなすのには向いているかもしれない。

4の「睡眠時間は1.5の倍数時間~」も、よく聞く話(図2)。昔の塾講師も話していたのを覚えている。

図2:『ドラゴン桜』6巻

ただこれも最近の実験では大分個人差があることが明らかになっていて、人によって何時間周期でレム・ノンレム睡眠が訪れるかは変わってきてしまうという。だから結局、自分のリズムで目覚めることが重要なのであり、大切なのは自分を知っていることなのだと思う。寝る前の入浴については「必要以上にダラける」と否定されているが、副交感神経の働きを考えると、一般的な健康常識では、睡眠前の入浴は良質な睡眠導入のために効果的とされている。実は私は入浴しない人間なので何とも言えないのだが、これも自分の身体との相性で判断するといいのかもしれない。

5の「当日の朝は教科書を読むな」については、完全に同意である。試験当日に何よりも重要なのは精神状態の安定であり、今更教科書を読んでもラッキー以外で点数は伸びないし、奇跡的に伸びても高々数点くらいなのだから、とにかく精神を安定させることを考えて好きなことをしていた方がいいと感じる。教科書を読んでいても不安になるだけだと思う(図3)。

図3:『ドラゴン桜』6巻

ちなみに私はセンターも二次試験当日も、ずっとアメコミを読んだりiPadで映画を観ていたりしていた。おかげで非常にリラックスできて試験は過去最高の出来だった。試験なんてものは前日の日没までの取り組みで結果が決まるのだから、当日はもがくだけ無駄。であるなら、試験日は遊んでいればいいだけの話。

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投稿日時: 2019/07/02 ― 最終更新: 2019/09/02
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