図1:三田紀房『ドラゴン桜』2巻, 講談社, 2003年

『ドラゴン桜』2巻で数学教師の柳は、水野が筆箱から取り出した蛍光ペンを問答無用で奪っていきなりゴミ箱に叩き込むという、「それは犯罪では?」案件を平然とやってのけ、読者を驚愕させた(図1)。廃校から蘇った名物スパルタ教師は、モンスターペアレントなど気にも留めない(私が水野なら、とりあえず蹴りをかます) 。

柳は言う。

蛍光ペンで要所を塗っても何も頭には入っとらん!そうすることでおまえらは勉強した気になっているだけだ!

『ドラゴン桜』2巻

教科書や参考書が線や書き込みで汚れると、そこは覚えた気になってしまう。一旦そう思うと、もう一度そこをやり直す気力が薄れてしまうのだ。これを防ぐために教科書は常に真っ白にきれいにしておけ。そうすれば自分はまだやっていない、やらなきゃならないことが沢山ある…と、ある程度の不安感を持って自分を追い立てながら勉強をした方がいいのだ。

『ドラゴン桜』2巻

マーカー塗って勉強した気になるな、について

これは真実だと思う。勉強空振りの最大パターンは「勉強のジェスチャーだけして学ばない」なのだから、肉体労働だけして達成感を得てしまうのは危険である。「マーカーを塗ることが勉強だ」と考えているなら、その行為は無駄としか言いようがない。

ところがこの直後の場面で、柳は「要点をノートに書き写せ」「書いて書いて書きまくれっ!」というアドバイスを送っている(図2)。が、ハッキリ言ってこのアドバイスは非常に誤解を招きやすく、受験生に対してキケンであると思う。

図2:『ドラゴン桜』2巻

「要点を自分で考える」という行為はいい。それは書かれている事実を自分で再構築し、より本質的な部分の抽出を試みる行為なので、それ自体が大きな学びとなるからだ。ところが「書き写す」という行為は、それ自体はただの肉体労働であり、直前で柳自身が否定していた「勉強した気になる行為」の最たるものである。私の場合、そもそもノート作り自体嫌いだったので、ノートは受験勉強中も東大入学後も一冊も作らなかった(スマホにメモするくらい)。

私が同じことを言うなら「要点を自分で考えて、それを他人に説明すべきだ」とアドバイスする。もし一人でやるなら、少ししてから要点を思い出す、寝る前にもう一度考える、独り言として言ってみる、などの方法もある。これなら疲労も少ないし、時間もかからないし、何より「見ずに要点を再現する」ので、「勉強したポーズだけで終わってしまう」という空振りに陥らない。

マーカー塗りすべきテキスト

私はあまりマーカーを使わなかったが、勉強初期の頃「その教科の入門的な講義型参考書」で勉強する際にはマーカーを使用した。講義型というのは、河合塾の「実況中継」みたいな参考書ね。地理のやつとか。

というのも、講義型はどうしても文章が長くなり、余計なたとえ話や余談が含まれやすい。だから一度目は「へぇー」と思いながら読めても、2度目以降は余分に感じることが多かった。要するにテキストに「無駄」が多かったので、後で読み返したい場所「付近」だけマーカーで塗ったのだ(読む箇所全部塗るのも面倒なので、チョコチョコと)。入門テキストは年単位で読み込むことがなかったので、マーカーもかなり雑に素早く塗った。定規も使ってない。とにかく無駄な作業時間は減らしたかったからだ。他には英語の洋書で「良いフレーズだな」と思った箇所を塗ったくらいである。

蛍光ペンの色の種類とか、太さとか、そういうのはどうでもいいと思う。自分が気に入った色、好きなデザインのメーカー品を使ってやる気が出るのが一番重要なのでは。あえてオススメを言えば、目立ちやすい赤か黄色。あと私は色の使い分けはしなかった。ペンの取り替えが面倒くさかったので。

書き込みのない教科書はやる気が出る、について

これはかなりケース・バイ・ケースだろう。私も教科書に書き込みをして勉強をした教科が存在するが、そこで分かったのは「字が汚い人ほど書き込みのマイナス面が目立つ」ということである。

そして残念ながら、私は字が汚い方であった。字が汚いと、柳の言うように「やり直す気力が薄れる」という現象が起こりやすい。単純に汚いものを見直すのが嫌なのだ。かと言って、時間をかけて丁寧に書いても「作業」にばかり時間を取られてしまう。教科書への書き込みに向くのは、素早く、かつそれなりの綺麗さで字が書ける人である。

とは言え、自分が気付いた重大事項や、暗記に有効な事実などは、ある程度テキストに書き込むことにより、学習効率は確実に上昇する。そこで提案したいのは「テキストを2冊用意する」というソリューションである。書き込み用のテキストと、真っ白に学べるテキストを分ければいいのだ。テキスト代なんてものは大したことがない。そんなことを気にするくらいなら、クソ高い授業料の予備校で寝ぼけている時間を1秒でも減らすべきである。フリクションをこすって消す労力と時間は、1,000円払って解決し、勉強に費やすべきだ。受験生にとって何より貴重なのは時間なのだから。

私の場合、世界史で特に書き込みを多用した。教科書よりWikipediaで学んだ量の方が多い人間なので、歴史の人物を覚えやすくする雑多な面白エピソードを大量に書き込み「チンコ切られてでも生き延びたあの人」のように、歴史を楽しく学べるようにしたのだ。このような有機的な関連性に基づき知識を仕入れた結果、今でも世界史に関してはかなり思い出せる。そして徹底的に「面白エピソード」を追加した教科書で学習した後、新しい教科書に切り替えて、自分が書いたエピソードを「思い出して」学習したのである。これは効果的であった。私は山川と東京書籍の2種類の世界史テキストを用いたので、結局世界史は4冊の教科書を買った。

まとめ

  • 作業ばかりで満足しないように細心の注意を払うべき
  • 無駄の多いテキストなら、マーカー塗るのは有効
  • 書き込みは字が汚いと萎える
  • 書き込みのデメリットを消すなら、同じテキストを2冊買う

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投稿日時: 2019/03/19 ― 最終更新: 2019/11/26
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