太宰治「美少女」 / キャー!太宰さんのエッジの効いた肉体描写~!

太宰のスケベオヤジっぽい道化がハマり過ぎている、私のお気に入りの短編。この小説の力点は、間違いなく風呂場で裸の少女が立ち上がった際の肉体描写にあるだろう。

すらと立ち上がったとき、私は思わず眼を見張った。(中略)コーヒー茶碗一ぱいになるくらいのゆたかな乳房、なめらかなおなか、ぴちっと固くしまった四肢、ちっとも恥じずに両手をぶらぶらさせて私の眼の前を通る。

太宰治「美少女」

この描写の緻密さについては、小説におけるヌード表現の追求という見方もある。周囲が老人ばかりなのは、少女の肉体の若さや強さと対比的に描くためと思われる。

私は、すぐ後に発表された「皮膚と心」と併せて「女性と肉体」というテーマが通底していると思っていて、つまり、女性は男性以上に肉体的な存在である。男性は物事を頭で考え、理想やプライドといった精神的なものに依って生きていくが、女性はその美貌や若さそのものが生きがいとなり、自らの肉体で子孫を育み、肉体に依って幸福に生きていくことができる。この作品には、そういう女性の肉体の放つ生命力の文学的な追求があると思う(逆にだからこそ「皮膚と心」の語り手は、肉体の汚染が精神的な損傷にまで直接波及する)。

最後の「それだけの悪徳物語である」という、助平が得意げに吹聴している武勇伝といった感じのオチが最高。さすが太宰である。

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投稿日時: 2019/06/28 ― 最終更新: 2019/09/14
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