寺山修司の詩「肖像画に まちがって髭を描いてしまったので……」

2021/08/21 ・ 日本文学 ・ By 秋山俊

肖像画に
まちがって髭を描いてしまったので
仕方なく髭を生やすことにした

門番を雇ってしまったので
門を作ることにした

一生はすべてあべこべで
わたしのための墓穴を掘り終わったら
すこし位早くても
死ぬつもりである

寺山修司「わたしのイソップ」

なんだろう。人間は誰しも、多かれ少なかれ、自分の行為のアリバイを作るために自分を変えていくんじゃないだろうか。それは別に、歪んだ行為ではなくて、人間の自己形成というのはそういうものじゃないだろうか。特に現代という、生きづらい時代に、人は自分を守るために「キャラ」を打ち立てて、でもいつの間にか、自分の正体がその「キャラ」に近づいていく。

この詩は、寺山一流の逆説と諧謔に満ちているように見える。でもこれ以上ないくらい、寺山自身の人生を物語っているように感じる。寺山修司は、まさしく、「寺山修司」という肖像画に描かれた自分に合わせるべく、自己を変えていった人だろう。この辺は『虚人 寺山修司伝』『虚構地獄』などに詳しい。

いじめられっ子だった。ボクシングなんかできなかった。大うそつきだった。

でも「寺山修司」になるために……

バカだなぁ、あなたも

(ヘッダー画像:『寺山修司 著作集1』「わたしのイソップ」)

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初版:2021/08/21 ―― 改訂: 2021/08/24

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