獣道4のこたか商店の美しさ

2022/01/07 ・ eスポーツ ・ By 秋山俊

12月30日に開催されたeスポーツ大会「獣道4」のこたか商店ほど美しいプレイヤーを発見することは、あらゆる競技において困難であろう。

当日の結末に勝負人生のすべてを賭け、ケダモノのように対戦相手を挑発し、スポーツマンシップ的欺瞞の一切合切を西日暮里の地下水路に打ち捨て、餓狼のように孤独な道を歩み、物語よりも気高く、「あの舞台に立つだけで誇りなんだよ」などという甘言には耳もかさず勝負の場に立ったこたか商店は、なによりも美しかった。こたか商店のあの当日の「美」と比べてしまえば、大都会に蠢く醜悪な美しさなど、小僧の小便みたいなもので、見れたものではない。

あの場を目撃した人間の中には、あるいは、彼の勝負後の発言「スト2の未来がかかってた」が、自意識過剰な独り相撲のように感じた人もあるかもしれない。しかし実際に、いまスト2で注目されうる大会はただ「獣道」のみで、そこは全てを得るか失うかの舞台であり、彼が敗れれば続投可能な新世代がいなくなる。そのことを誰よりも早く察知していたからこそ、こたか商店は驚異的な快進撃を続けてきたのだ。

思うに最初の獣道における兄ケン惨敗はまさに、獣道という果し合いの本質(敗ければ最期)を読み違えていたゆえの無残であって、練習の様子を伝え聞くに、おそらく対戦相手がどれほど死物狂いで自分の首をとりに来ているかを正しく認識していなかったのではないか。それは宮本武蔵の数々の対戦相手が、死合と試合の区別が不十分であったゆえに、不意打ちであっさり沈んでしまったのと同じことだと考える。

対戦格闘ゲームの草分けであるスト2シリーズ。いわゆるレジェンドクラスのプレイヤーは40代が中心でありその牙城は高かった。それを追い付け追い越せと研鑽を積んできたのが、こたか商店をはじめとする新世代のプレイヤー達だ。もしもここで自分が兄ケンに負けることになればその積み重ねが「戻っちゃう」とこたか商店は思い詰めていた。

獣道4 Behind the Story 「こたか商店」(以下同様)

「強いのは分かってるんですけど、これでまたあの兄弟が優勝すると、なんつうんだろうな、やっぱスト2止まっちゃうっていうか。」

「勝ち負けしかないじゃないですか。悔しいだけで済んだら全然いいっすよ、はっきり言って。もう自分だけの話じゃないと思ったんで正直。何が何でもこれは絶っ対っ勝たないといけないと思ってました。以降の『獣道』も全部負けらんなかったけど、多分一番負けらんなかったかもしんないですね。キャラ差とかそんなんもう関係ないっすよ、はっきり言って」

今回の試合の劇的な顛末は、おそらく『スト2』というタイトルにおいて絶後であろう。

敗けた人間はされこうべでしかない。そしてこたか商店は破裂し、されこうべになった。だからこそ、獲物に飛びかかった姿勢そのままに散華した獣のように、美しかった。

(ヘッダー画像:獣道4 「こたか商店 vs. ゆうベガ」の試合より)

初版:2022/01/07 ―― 改訂: 2022/01/08

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