「対戦マナー」と、バーチャで出会った恥ずかしい大人たち

2020/08/13 ・ eスポーツ ・ By 秋山俊

スト2の昔話なんかによくあるように、90年代のゲーセンでは格ゲーのローカルルールが乱立し、「待ち禁止」みたいな、今なら「どうやってプレイすればいいんだよ」と言うしかないメチャクチャな「対戦マナー」が存在するのは全然当たり前のことだった。

当時の研究や対戦思想がまだまだ未成熟だったことが大きいが、同時にゲームバランスが崩壊気味のゲームが多く、実際に壊れキャラで徹底したプレイをされると手も足も出ない、という状況が、そういった「ルール」「マナー」の存在を支えていたと思う。つまり不完全なゲームを、店や常連側の「大きな運営」によって制御しようという考えだったのである。

とは言え、私が本格的に対戦を始めたVF4の時代(2001年以降、つまり21世紀)においては、ゲーム自体が洗練されてきたこともあり、既にそのような「対戦マナー教」の勢力は非常に弱まっていた。「格ゲーはバーリ・トゥードである」「ハメられても、ハメられる状況にされるのが悪い」という、あくまで作られたゲームと客側にプレイスタイルを任せ、店側では関与しない「小さな運営」による格ゲー新自由主義が一般化していた。

「下がってんじゃねーぞっ!」

しかしそれでも、公共の場で大量にプレイを重ねていると、よく分からない輩には出くわすものだった。私はリオン使いだったのだが、リオンというのは相手の技をスカして当てるのが仕事である。

したがって私も、距離を調整して44Kで馬蹴りして飯を食っていたが、このスタイルでしこたまボコった相手が、突然対戦台の向こうで、ダーン!、とリアル鉄山靠を椅子にカマして、私にツカツカと詰め寄るや「下がってんじゃねーぞっ!」と捨て台詞を吐いてどっか逝ったこともある(確か秋葉SEGAでの出来事)。

しかしリオンというキャラはスカして技を当てるために生まれたキャラであり、そのリオンに「下がるな」と言うのは、ガイルに「しゃむな」と文句つけたり、りんごちゃんに「井上陽水の真似をするな」と言うのと同じくらい無茶なので、私はシカトしてそれ以降も相手の技をスカしまくることに邁進した。

結局「下がるな!」というのは「オレに勝たせろ!」という情けない要求のロンダリングなのである。

「段位に恥じぬ対戦を!」

またこういうこともあった。

当時高校生だった私は、基本的にゲーセンにいつも1人でやって来てプレイしていた。そしてそんな私に連コインして回しプレイしている大人の常連組を、ひたすらボコボコにしていたときである。

地元の小さなゲーセンだったので、彼らがたしかVF4 EVOの6-8段くらい、ボス格っぽい常連だけ10段、そして当時の私が強者か猛者くらいの段位だったのだが、それくらい実力差があるとあまり負けない。

ところでVF4 EVOには、勝負後の画面でレバーを入れると、あらかじめVF NETで設定していた文字メッセージを表示できる、という機能があった。そして私が連勝した後に相手側が出してきたメッセージが「段位に恥じぬ対戦を!」だったのである。

それを見て私は「えっ?」と思ったのである。その「えっ?」というのは、「えっ?なんでこの大人たちは、高校生に連敗した挙げ句に、こんな恥ずかしい捨て台詞残してるの?バカなの?死ぬの?」という「えっ?」だったのである。

バーチャというのは「じゃんけん」を高速で行うゲームであり、逆二択(暴れ)が当然の選択肢としてあるゲームだから、確かに勝っているプレイヤーが一見すると強くないようにも見えるゲームではある。「アイツ、暴れてるだけじゃねーか」みたいな話もよくある。

しかしそもそも、相手が「メチャクチャ」なプレイをしているように見える、という認識自体が「読み負けてる」「相手の方が深くプレイしている」という事実の証左なのである。それで1度や2度負けるだけならともかく、連敗している時点で、自分に都合のいい「読み合い」を相手に見透かされていることに気づかなければならない。

私は、あのゲーセンでやりあっていた常連を手強いと感じたことは一度もなかった。彼らのプレイが怖くなかったのは、結局急所においてはゲームを私がコントロールできており、彼らがその思惑から一歩も出られなかったからに過ぎない。

対戦でイチャモンをつける人間は強くなれない。なぜなら、敗北の理由を自分にではなく相手に求めているからである。

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投稿: 2020/08/13 ― 更新: 2020/08/18
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