2021年8月2日 / ランボーの翻訳

2021/08/03 ・ 日記 ・ By 秋山俊

読んだ本
Une saison en enfer (『地獄での一季節』)アルチュール・ランボー
『地獄の季節』小林秀雄訳
『地獄の季節』粟津則雄訳

久々にランボーを読んでいたが、その卓越した詩情に感嘆しつつ、あらためて翻訳問題の複雑さ、もしくは「小林秀雄という最高にややこしい存在」へのアンビバレンスな気持ちを確認せずにはいられない。

翻訳ということを忘れて、単なる一つの日本語の文章としてだけ読むと、小林秀雄の文章は圧倒的に優れている。読むと、もう、これしかないのでは、と思えるほどだ。ただし翻訳としては「怪訳」に近い。他方、その30年後に出た粟津則雄訳は、翻訳と解釈の正確性という点で高い評価を受けてはいるものの、残念ながら日本語としては平凡で、詩になっていない。

小林秀雄訳の最大の美点は、なにより、文字に「音感」が完全に備わっている、という、リズムの卓越にある。リズムをつけるために大胆にランボーを脚色し、部分的にオリジナルを超えている――というか、超えてしまっている――とすら思える箇所もある。仏文の人間にとって、小林訳は、「軽々しく認めるわけにはいかないが、でも引き出しに隠しておいてこっそり読んでしまう」という、春本のような存在である。

これについて書くと少々長くなるので、記事をあらためて書こう。(→小林秀雄訳『地獄の季節』、あるいはランボー怒りの超訳

ところで1年ほど前に、中地義和『対訳 ランボー詩集――フランス詩人選1』という、かなり気合の入った、ランボー翻訳と注釈の集大成的な本が出たらしく、これから読むつもりである。

初版:2021/08/03 ―― 改訂: 2021/08/24

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