これは土壇場で人生を変える一発が出せるかどうかの練習なんです。 『Big Hearts』2巻 地味なボクシング漫画である。しかし派手な画を求めてボクシング漫画を読むわけではないから、『Big Hearts』を優れた作品だ […]
動画へのコメントで『鬼滅の刃』のヒロイン禰󠄀豆子を『バスケットケース』(’82)の怪物ベリアルと結びつけるものがあり、その時初めてこの両者のアイディアが非常に似ていることを意識したのだが、実際に鬼滅の作者が影 […]
私の知り合いに30歳で死んだ男がいて、彼が自殺したのか、ただの交通事故だったのかが現在でも不明のままになっている。警察の発表では事故死ということなのだが、彼は生前から嘘とも本気ともつかぬ自殺宣言を繰り返していたし、死ぬ直 […]
『嘘喰い』のカラカルは非常に良く出来たキャラで、この人物と嘘喰いの直接対決は作中最高のカードになると思っていただけに、それが結局実現しなかったのは『嘘喰い』での大きな心残りになっている。 さて、カラカルと言えばギース・ハ […]
2019年に出た新刊としてはベストに数えられるべき作品。 話に筋らしい筋のない、男子高校生の日常を描いた1話完結型のシュールギャグなので、面白さを文字で伝えるのは少し難しい。最初に読みながら思ったのは「これは大事に読みた […]
単行本について書くのが遅れたし、本誌の方でも次回で最終回となりキリがよさそうなので、ここでは簡単に。 伊達との師弟対決は、これまでで、いや作品中最高の対局と呼んでいいだろう。この対局のなにがいいかというと、表情だけで濃密 […]
久々に恐ろしいマンガを読んでしまった…… 『定額制夫のこづかい万歳』では毎回、月の小遣いが20,000円前後の中年が登場しては、自らの節約術を、まるで宇宙の根源でも解き明かすかのように熱く語って去っていく。 彼らは「ポン […]
最近の話のクオリティのバラツキが激しくなっている感じはする。13巻くらいまではかなり安定している印象だったのだが、告白のあたりから路線がまた変わってきているし、ネタ的にも再生産的な話が目立ってきた。 個人的には17巻は前 […]
ネットや新聞を見ていると、毎日無数の物語が綴られている。匿名掲示板に投稿される自分語りの物語と、それに連なる大量のレスポンス。メディアで喧伝される「感動の実話」。デマとは、物語になり損ねた「物語の残骸」である。熱心な宗教 […]
個人的に待望だったのが、『ファイアパンチ』で異常なほど映画トークを作中に盛り込んだ作者による映画デート編。この話、ジャンプマンガのルーティンとしてよくある「大きな話の後の小休止的な脱線エピソード」でもあるのだが、作者の大 […]
主要キャラたちの孤立 『ブルーピリオド』を読んでいて、毎回「キャラ間の距離が遠いなぁ」とは思う。ドライというか。「まあ自分のことは自分でするよ」みたいな乾いた距離感がある。主要キャラクター同士がそこまで仲良くしない。立ち […]
はい、相変わらず世に数多いる漫画家が失神して覚醒後に夜逃げしそうなほどの超絶クオリティで作画もネームもこなす山口貴由先生による新巻『衛府の七忍』8巻でございます。 この巻のトピックはなんぞ?と言えば、桃太郎卿こと吉備津彦 […]
この5巻の「中心人物」は誰なのかと考えた時、それは主人公のかつての師である伊達啓示 七段なのだと思う(図1)。 考えてみれば『リボーンの棋士』という作品はずっとそうであって、序盤の土屋戦のときから、常に最大のスポットは対 […]
『天』という麻雀マンガは、福本マンガの中でも極めて特異なポジションを占める。 基本的に福本マンガは、というか、普通マンガというものは、作品の中での主役や方向性、描く内容というのがかなりの部分定まっているものである。例えば […]
私の経歴を知る人達から「『ドラゴン桜』とか参考にしました?」という質問を何度か受けた。 質問の答えは「イエス」である。ただし私は戦術・戦略面では、この作品をほとんど真に受けなかった。 『ドラゴン桜』とは何か そもそも『ド […]
平野耕太という作家は言うまでもなく、漫画家の中でも極めてオタク的な漫画家であって、言動から作風まで全身総オタクとでも呼ぶべきアルティメット・ナードである。ここで言う「オタク」は「サブカル教養の塊」という意味。彼の作品を読 […]
松井優征の作品に共通するテーマは父性である。『ネウロ』も『暗殺教室』も、既に肉体的にも精神的にも「完成された存在」である主人公が地上に出現して、彼らのような超人が「私は完成されている。さあ何をしよう」と思った時にどうなる […]
岩明均のマンガをどう楽しめばいいのか分からない、という感想がある。この作者の作品には、エンタメとしての分かりやすい「面白味」や「上手いと思わせる要素」であるところの巧妙な伏線とか、どんでん返しとか、突飛な台詞回しとか、そ […]
『天』より『アカギ』の中での赤木しげるが好きである。『アカギ』の青年赤木には『天』の赤木にはない、ヒリヒリした心理学とクソ度胸のキレがある。 特に好きなのが、彼が頻繁に用いる「プレッシャーのなすりつけ」メソッドである。こ […]
当初、飯テロスピンオフとして『中間管理録トネガワ』に続き、鳴り物入りでスタートした『1日外出録ハンチョウ』だが、最近はすっかりグルメマンガから脱却(脱落?)し、飯以外のエピソードばかりになってきた。 そんな『ハンチョウ』 […]
『賭博破戒録カイジ』と言えば、序盤のハンチョウこと大槻が名言の宝庫とされ、後半の「沼」勝負は「ところがどっこい!夢じゃありません!」以外はそれほど引用されない(気がする)。 しかしそんな中で、私が密かに破戒録名言の上位に […]
『蛮勇引力』ほど「これは山口という作家にしか描けまい」と思わせるワンアンドオンリーな作品はない。元々非常に個性の強い作家ではあるが、これはその中でも随一である。 古くは『サイバー桃太郎』から『覚悟のススメ』まで突き詰めら […]
伝記としては大変良く出来ている。 ただこれが「マンガとして特別な何かがあるか」というと、それは別の話。少し大きな主題を掲げると、マンガという形態に固有のもの、ヤマザキマリという作家ならではの表現が欠落していると思うのであ […]
『悪鬼御用ガラン』がどんなマンガかというと、世の中の様々な悪党の詭弁や、民衆のお花畑的な楽観論に対して「そんなわけねーだろっ!」と山口貴由がひたすら喝を飛ばす天誅マンガである。「天誅マンガ」と表現したが、実際に主人公のガ […]
スティーブ・ジョブズが死去した後の「ジョブズ・フィーバー」の中で、2本の伝記的なマンガが立ち上がり話題を読んだ。一方が有名なヤマザキマリによる“公式”伝記マンガ『スティーブ・ジョブズ』であり、もう片方が「うめ」チームによ […]
柴田ヨクサルの『エアマスター』という作品は、極めて思想寄りの格闘マンガだと思う。本作がどんなマンガかということに関しては、取りあえず「空中戦が得意な女性格闘家の主人公・マキが、個性的過ぎる格闘家たちと、ひたすらストリート […]
こんな蛇足を付け加える必要があったんだろうか。 これまでのカイジシリーズの面白さの一つは、エスポワールや地下労働施設などが1つのミニマルな社会を形成していて、その中での人間模様が実社会を反映していたことにあった。読者はそ […]
野球を「戦争」に変えてしまったのが『ワンナウツ』なら、麻雀を「戦争」化したのが本作『バード ~砂漠の勝負師~』である。青山広美がまだ読者に媚びず、作家性が強かった頃の作品であり(最近は……)、全2巻と小品風ながらイカサマ […]
『ワンナウツ』とは何か?『ワンナウツ』とは「野球とは戦争である」と宣言したアンチ・野球マンガである。 話の筋そのものは実にシンプル。野球もどきの賭博で常勝を誇っていた勝負師・渡久地東亜(とくちとうあ)が、プロ野球の世界に […]
安直な二番煎じかと思いきや、これが良く出来ている。少なくとも『破戒録』までは。 『賭博黙示録カイジ』(’96-00)と言えば、限定ジャンケンの舞台となるギャンブル船「エスポワール」が社会の縮図となっている点が […]
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