『オーメン』(’76)はミュージック・ビデオである

2021/06/07 ・ 映画 ・ By 秋山俊

ホラー映画で“オペラ”を演じてしまった作品であり、「悪魔の子・ダミアンを排除しようとした人間は、隕石が頭に当たって死ぬ」程度の現象でしかない“不審死”の場面を、音楽の力によって「悪魔の力によって呪い死ぬ」場面へと“改ざん”することに成功した。

ストーリーよりも映像よりも“音楽”が主役になっていて、それを骨格に場面全体、もっと言えば映画全体が構成されているという点で斬新であり、その功績は、単なる西部劇と黒澤の“パチモノ”に過ぎなかった『荒野の用心棒』(’64)を、モリコーネの鮮やかな劇伴を中心に据えることによって大ヒット作に仕立て上げたのに似る。

悪魔の子・ダミアン(『オーメン』)

もっぱら『エクソシスト』(’73)と並べて語られる、70年代オカルトブームを担った片翼だが、映画の内容は全く違う。『エクソシスト』はモンスター型の怪奇映画に属する、言わば怪獣映画みたいなものだが、『オーメン』はそもそもホラー映画かどうかも疑わしい。

劇伴と、黒犬とか炎といった“不吉”のイメージを額縁とした、サタニックでマニエリスティックな“不慮の事故”の悪魔的なイメージを期待して観る映画である。そのため、話の筋を知っていてもつい見入ってしまうタイプの映画といえる。というか、筋書きそのものは「ダミアンの周囲にいる大人が、みんなバナナの皮で滑って死ぬ」程度のもので本当に何もない。何もないというのは本質的にミュージック・ビデオである本作の必然であって、それは別に間違ってはいない。

ダミアンに関わった人間はみな死んでいく(『オーメン』)

一言で言えば、『オーメン』とは、悪魔の肖像を鑑賞する映像作品なのである。

満足度:8/10

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投稿: 2021/06/07 ― 更新: 2021/06/08
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